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AUKUSの連携強化をホームズ教授はこう見る。オーストラリアの原潜調達以上に三か国混成乗員による潜水艦運用を。オーストラリアに米原潜を配置し、同国の地政学的利点を活用すべきだ。

 


ーストラリア、英国、米国が新たな同盟関係AUKUSを構築したとのニュースが飛び込んできた。その一環で王立オーストラリア海軍(RAN)が原子力推進攻撃型潜水艦(SSNs) 少なくとも8隻を2030年代末までに建造する。発表で名指しこそなかったが、中国を意識しているのは間違いない。

原子力潜水艦はオーストラリアに最適な装備品となる。同国は南シナ海の外に戦略的な位置を占めている。南シナ海への展開では距離が障害となる。RANの現行コリンズ級ディーゼル電気推進潜水艦部隊(SSKs)は南シナ海へ出動できるが、長期間展開は不可能だ。

これに対しSSNでは現場展開の制約となるのは糧食等乗員向けニーズへの対応のみだ。戦略予算評価センターが数年前に行った研究ではオーストラリアを拠点とするSSNは南シナ海で77日間の哨戒が可能だが、SSKは11日しかないとの結論が出ている。RANのコリンズ級は6隻のみなのでRANは各艦のローテーション運用で常時一隻を配備するのに困難を感じるはずだ。

原子力潜水艦がこの構図を変える。77日とは米海軍の原子力弾道ミサイル潜水艦の哨戒期間に近く、相当の長さだ。原子力潜水艦の導入で同盟側は広大な海域で兵力を展開し、武力衝突を阻止する、あるいは開戦となっても勝算が出てくる。いいかえればAUKUSは太平洋での戦略競合で有利となる。

ただし原子力潜水艦取得の騒ぎの陰にもっと意味のある進展がある。オーストラリアンフィナンシャルレビュー記事では米海軍がHMASスターリング基地(パース)からヴァージニア級SSNsを運用するとある。RANのSSNsが海上運用を開始する前に同盟側の南シナ海外縁部での作戦能力を向上させる効果が生まれる。

実現は早いほど良い効果が生まれる。中国が台湾侵攻に数年で踏み切るとの予想もある。台湾以外に南シナ海や東シナ海にも注目地点がある。

オーストラリアに米軍部隊を常駐させる構想は前からあり、トシ・ヨシハラも筆者とともにここ十年にわたり提唱していた。利点を考えてみよう。まず、地理条件だ。米軍は第一列島線で沖縄以南に点在している。フィリピンとの関係がドゥテルテ大統領の下で弱体化している。米軍の寄港やフィリピン国内への米軍部隊展開は拒否していないものの、往時のような重要な軍事拠点になれるか微妙だ。

近隣に基地を持たないと南シナ海、台湾海峡の対応が困難となる。

フィリピンの代替をオーストラリアが部分的ながら果たせる。フィリピンを上回る機能も実現可能だ。同国は太平洋とインド洋のつなぎ目に位置する。同国に海軍部隊を配置すれば、双方を活動範囲に収められる。パースはオーストラリアのインド洋側に位置し、重要海峡への展開は容易だ。マラッカ、ロンボク、スンダで、各海峡は南シナ海にも通じる。

HMASスターリング基地の位置から、グアムさらに日本の作戦効率が上がる効果も生まれよう。

AUKUSによりインド太平洋に新しい構図が生まれることが要注意だ。現在の米軍基地はインド太平洋の外縁部に展開しており、東は日本、グアムから西はバーレインまでひろがる。言い換えれば水平方向の東西に相当の距離がある。オーストラリアがヴァージニア級潜水艦母港化を受け入れれば、今度は垂直方向でつながりが生まれ第一列島線に沿った防衛線が生まれる。

次は作戦面だ。西太平洋に基地を展開する米海軍には「分散海洋作戦」構想があり、米海兵隊には「沿海域作戦展開を激戦地で展開する」構想がある。海軍部隊の司令官レベルには大型艦のかわりに安価かつ小型の艦艇航空機材を大量調達し、地理条件を考慮した対抗措置を提案する向きがある。

海軍基地の数が増えれば、分散部隊の支援が可能となり、望ましい結果を生む。

潜水艦部隊を分散配備することで直ちに生まれる効果もある。RAN所属潜水艦部隊が姿を現し始める時点で、米海軍のSSNsがパース基地から運行を開始し、AUKUSの海軍部隊は多国籍部隊として効果を最大にできる。オーストラリア側も英米部隊から原子力推進の運用方法を習熟すべく支援を受けられる。

さらに一歩進めAUKUS混合乗員構成の実現も検討すべきだろう。これが実現すれば、同盟国側が真剣で共通の大義の下でまとまっていること、つまり航行の自由の維持とともに超大国の横暴は許さないという姿勢が中国にわかるはずだ。例として米海兵隊がF-35をHMSクイーンエリザベスで運用しており、同空母は西太平洋に展開している。中国が英部隊を攻撃対象にすれば米国も相手にすることになる。

真剣度を示す構想には水面下にも及ぶ。各国乗員をまとめた潜水艦が運用中となれば、三か国の同盟関係に一寸の分断の余地がないと示せる。

RANがSSN建造に乗り出したことは称賛すべきことだが、ただちに三か国のチーム運用を開始すべきだ。時間の余裕はない。■

Why Nuclear Submarines For Australia Make Perfect Sense

By James Holmes

September 17, 2021



Now a 1945 Contributing Editor, James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, U.S. Marine Corps University. The views voiced here are his alone.



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