英本土とフォークランドの距離と尖閣諸島=日本本土の距離は比較にならないくらい異なりますので、直接参考にならないかもしれませんが、1982年の事例と同様に追加機材を輸送する手段が必要となるかもしれません。長距離フェリーでは平時から一部に防衛省との契約がある船舶があるようですが、機材を搭載できそうなコンテナ船ではどうでしょうか。温故知新ではないですが、いろいろ考えさせられる事例であります。
アルゼンチンにフォークランド諸島を占拠された英海軍が奪回作戦を1982年開始した
だが空母が不足し、英海軍の航空作戦実施に支障をきたした
そこで英国は臨時母艦でヘリコプターやジャンプジェット運用をねらった
1982年の英海軍は同年3月にアルゼンチン軍が占拠したフォークランド諸島の奪回作戦にあたり、懸念事項があった。占領部隊への空爆が必要だし、アルゼンチン潜水艦や地上部隊を警戒しヘリコプターの運用も必要で、アルゼンチン本土から英機動部隊に向け飛来する機体へ迎撃機の出撃も必要だった。
だが英海軍の空母インヴィンシブルはシーハリアー8機、シーキングヘリコプター12機しか搭載しておらず、そもそも同艦はオーストラリア向け売却が決まっていた。もう一隻の空母ハーミーズはシーハリアー12機、シーキング20機を搭載していた。
4月下旬に交戦が始まると、ハリアーは早速その真価を発揮し、アルゼンチン機を20機撃墜したが、地上砲火と事故で喪失も発生した。
だが英海軍は15千トンのG2級ロールオンロールオフコンテナ貨物船アトランティック・コンヴェイヤーを民間借り上げ船舶(STUFT)として4月14日に徴用していた。
あたかも第二次大戦中の英米の護衛空母のように民間船舶を即席空母に改装し、ヘリコプターやハリアーの運用に使おうとした。
シーハリアーが改装なったシーコンヴェイヤーの運用テストで接近した。Royal Navy/Imperial War Museums via Getty Images
同船は最小限の改修を受け、機体運搬を主に行う想定となった。これも第二次大戦中の空母と同じで、陸上運用戦闘機を遠距離運搬することになり、コンヴェイヤーは英空軍の地上運用ハリアーをハーミーズ、インヴィンシブルの両空母に届けることになた。
改修は工期わずか9日で行い、イアン・ノース大佐の指揮のもとで4月25日に海上運用可能となり、アセンション島で英海軍809飛行隊のシーハリアー8機、英空軍のハリアーGR.3を6機搭載した。
合わせてウェセックスヘリコプター6機、英空軍チヌークへリコプター4機も運んだ。チヌークは米国から輸入したばかりだった。船内にはミサイル、クラスター爆弾、迫撃砲弾、航空燃料、大切な発電機や航空機燃料共有装備を搭載していた。
機材多数はプラスチック「バナナ包装」されていたものの、ハリアー1機だけは離着可能な状態とされ、警戒に当たった。
姉妹船アトランティック・コーズウェイも5月5日に徴用され、航空燃料の取扱い用に大幅な改修を受けた。
ともに間に合わせの改装だったが、重要な機能が一つ欠落していた。全方位捜索レーダーと短長距離での防空装備だ。もともと商船であり、こうした装備は見送られたのだが、搭載していれば工期はさらに伸びていただろう。
アトランティック・コンヴェイヤーはフォークランド海域に5月19日到着し、積み荷のハリアー14機をハーミーズ、インヴィンシブルの二隻に届けた。
搭載ヘリコプターは5月26日に地上部隊合流の予定だった。特にチヌーク各機は英特殊作戦部隊での投入が期待されていた。ローターの組立が船上で進み、稼働が近づいていた。
だが5月25日にアルゼンチンのシュペールエタンダール2機編隊が低空ぎりぎりの飛行で英機動部隊へ北西から接近してきた。
23マイルまで近づくと、機体を上昇させAgave標的レーダーを稼働し英艦隊を捕捉した。急ぎエグゾセ対艦ミサイルを発射し、帰投した。HMSアンバスケイドがミサイル発射を探知し、チャフ放出でミサイルを妨害した。エグゾセは標的を逃した際は付近で最大の標的を狙うようプログラムされており、コンヴェイヤーを狙った。
コンヴェイヤー船長は比較的耐じん性が高い船尾を向けようとしたものの、そもそもレーダー警戒装備や近接防御装備がない。ミサイル一発が左舷Cデッキに命中した。
爆発が弾薬燃料の発火につながり、制御不能な火災が発生、少なくとも乗組員三名が死亡した。アンドリュー王子がその時点で空母ハーミーズからシーキングヘリコプターを操縦しており、大きな水柱が立っていたと当時を回想している。
商船構造のコンヴェイヤーにはダメージコントロールの構造になっておらず、攻撃を耐えられなかった。直撃30後にノース艦長は30分で総員退去を命じた。
その後三時間にわたり、ヘリコプターも動員して救助活動が続き、駆逐艦HMSアラクリティが軍民137名を救助した。アンドリュー王子のシーキングもここに加わった。ノース艦長他8名は救助を待つことなく海上で死亡した。
全焼となったコンヴェイヤーはまだ浮いており、曳航しようとしたが、5月28日に沈没した。
コンヴェイヤー搭載のヘリコプターのうち、残存したんはウェセックス、チヌーク各一機で攻撃時点で滞空したため難を逃れた。ヘリコプターによる地上部隊移動は実施できなくなり、部隊は徒歩で移動した。
ただチヌークのブラボーノーヴェンバーは延べ2,100名の地上部隊、捕虜を搬送し、105mm榴弾砲3基を運んだ。
コンヴェイヤーは戦没したが、姉妹船アトランティック・コーズウェイは5月27日に運用を開始した。
同船もヘリコプターを届けたが、アルゼンチンの攻撃を受けた輸送艦の負傷者をヘリコプターで収容した。本来コーズウェイはヘリコプターを送り届ける任務だったが、結果として4千回もの着艦を見ることになった。
コーズウェイは6月17日まで戦闘水域に残り、その後商業運用に復帰し、四年後に廃船となった。■
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British Navy Used Impromptu Aircraft Carriers to Recapture Falklands
Sebastian Roblin , 19fortyfive Sep 2, 2021, 11:16 PM
Sébastien Roblin holds a master's degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
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