中国の兵器体系がどの位正確に機能を発揮するかよりもその配備を進める背景に運用をためらわない意思があること、旧式装備でも数にものを言わせる飽和攻撃をする姿勢、さらに潤沢な資金で着実に新型装備が増えていることに注意が必要です。
5 Chinese Weapons the US Should Fear
KYLE MIZOKAMI
Yesterday at 12:44 AM
- この二十年で中国は世界規模の軍事大国として台頭してきた。三十年前の人民解放軍は時代遅れの装備で人力を豊富に投入する「人民闘争」を主眼としていた。その間に海軍は沿岸部隊から大洋部隊に変身し、空軍は第五世代戦闘機を開発するに至った。陸軍も大幅に近代化している
- 多数の新型兵器が中国で開発中で、一部装備は要注意だ。
- 周辺国や米国は中国の武力増強に懸念を覚えている。中国は軍事力投射で東シナ海、南シナ海の紛糾を解決しようとする姿勢が顕著だ。装備整備で自信をつけた中国が自国主張を通すため躊躇せず兵力を動員すれば事態は域内危機にエスカレートし、あるいは深刻に拡大し米政府の介入を招きかねない。
- 中国も対米戦の可能性を意識して、米軍を照準に入れた兵器体系開発に注力しているが、戦闘は中国本土近辺にとどめたいとの意向がある。この発想が「接近阻止領域拒否(A2/AD)の整備につながり、中国が想定する一番本国寄りの防衛線いわゆる第一列島線の内側に米軍を侵入させまいとする。千島列島から日本、台湾、フィリピン、ボルネオを結ぶ線だ。
- 米中戦争の可能性は少なく、双方が戦闘を望んでいないのも確かだが、国益が衝突すれば戦闘になる可能性もある。この事を念頭に米国が最も警戒すべき中国の軍事装備トップ5は以下の通りだ。
DF-21D 対艦弾道ミサイル
- アジア太平洋に展開する米軍部隊にとって一番危険なのは東風-21D対艦弾道ミサイル(ASBM)である。DF-21Dは米空母攻撃用に設計され極超音速で米海軍の防衛網を突破する想定だ。
- DF-21Dは地上発射式で推定有効射程は1,500 km以上。本体から切り離される再突入体はマッハ10から12で飛翔する。その速度と運動エネルギー、さらに再突入体の弾頭部分が加わり、米海軍最大の空母でも相当の被害は免れない。確実ではないがDF-21Dの直撃を受ければ空母は戦闘能力を喪失するか沈没するといわれる。
- 車両式発射台に乗るDF-21Dは道路移動するので発射前の位置探知は極度に困難だ。再突入体の極超音速飛翔速度は迎撃が困難だが不可能ではない。
- DF-21Dのアキレスけんはいわゆる「キラーチェーン」のセンサー、中継局、指揮命令所で空母を探知、識別の上追跡するため必要な一連の装備だ。DF-21Dの打ち上げを成功させるためには多くのリンクが必要で、そのうち一つを切れば全体が機能しなくなる。
- 空母を沈めようとすれば中国は偵察機材多数を投入する必要があり、海上偵察は中国の得意分野ではない。陸上配備の水平線越えレーダーでは精度が落ち、海上監視機、UAV、潜水艦は空母航空隊の格好の餌食だ。唯一衛星群が空母追跡データを得られるが、妨害やその他機能を停止させる手段はある。
- DF-21Dの試射は013年早々に行われたようでゴビ砂漠に描いた空母形状の輪郭内にクレーター二個が見つかっている
。 - DF-21Dは実戦化されているようだが、キルチェーンの完成はまだで、システム全体が機能し始めるにはまだ数年かかりそうだ。それでも5,600名の命、艦載機70機を一度に抹消し、米兵力投射の主柱を奪いかねない最悪の事態をあらかじめ熟考しておく必要がある。
成都J-20戦闘機
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- 中国初の第五世代戦闘機J-20は大型双発機でまだ開発段階だ。その任務は不明だが設計上の特徴から各種任務が可能なようだ。長距離高速移動し低視認性の特徴を生かすのだろう。試作用3機が生産されており、2020年ごろの就役と見られる。
- デルタ型主翼に前方カナードが加わり双尾翼のJ-20は中国でもっとも野心的な設計だ。AESAフェイズドアレイレーダーや電子光学式目標捕捉システムを搭載すると思われる。機内大型兵装庫は二つあり、空対空、地上攻撃用、対艦の各ミサイルを格納できる。.
- J-20で想定する任務の中では航空優勢戦闘機としての役目が一番だ。長距離飛行性能が意味するのは中国沿岸部からさらに遠方に展開して米戦闘爆撃機やB-1、B-2といった爆撃機の迎撃だ。また長距離性能を生かして防空識別圏を設定した地域のパトロールも可能だ。
- また米支援機材を狙うことが可能だ。E-3セントリーやE-2CホークアイAWACSやKC-135、KC-130給油機は米軍の長距離作戦実施に不可欠な機材だ。長距離空対空ミサイルを搭載したJ-20は支援機を撃墜し、米軍同盟国軍の作戦能力を低下させるだろう。
- もう一つの可能性が米艦船や基地の攻撃だ。レーダー探知を逃れるJ-20に対地攻撃ミサイルを発射させ通常型弾頭付き弾道ミサイル攻撃に先立ち米側の地対空ミサイル陣地を破壊する他、レーダー施設、指揮命令所を攻撃する。この攻撃で米側防衛体制を制圧し続く弾道ミサイル攻撃の道を開くのだ。
- 時が来ればJ-20がどの方向に投入されるかわかるはずだ。J-20の使用用途が不明のままというのは戦闘機で20年のリードがあるとはいえこちら側世界では不安を招くため好ましからぬ事態だ。
衛星攻撃手段
- 長年にわたり米軍に大きな優位性を与えているのが宇宙配備軍用衛星群だ。アジア太平洋では米大陸部から距離が相当あることからその価値は大きい。
- 中国には少なくとも一種類の実用衛星攻撃兵器SC-19がある。DF-21の派生型でKT-2(運動破壊手段)を弾頭に装着して発射し、KT-2は赤外線誘導される。KT-2弾薬を積まず敵衛星に衝突させて破壊する。
- 2007年に軌道上の中国旧式衛星に衝突破壊したのがKT-2で、2013年には中国が「観測ロケット」と称し高高度実験装置を搭載したロケットを打ち上げているが、これが実はSC-19/KT-2運用テストだったと米情報機関筋は見ており、SC-19は中地球軌道まで到達可能と見られる。この高度の軌道に米GPS航法衛星群があり危険が生まれる。
- 中国のASAT兵器体系は米衛星のうち情報集衛星、通信衛星、航法衛星を狙う。こうした衛星が使用できなくなると中国を上空から監視偵察するのが困難となり、各種航法の精度が落ち、通信効率が低下するほか、GPS誘導兵器が作動しなくなる。
- 中国はSC-19を自走車両に搭載し、移動発射させるようだ。中国の舗装道路延長は1.86百万キロで、移動式ASATの捕捉撃破は極めて難しいだろう。
- ASATを紛争に投入すれば国際非難が中国へ向くのは避けられないが、米軍が衛星に依存しているため第一撃を宇宙に向ける誘惑は抑えられないはずだ。
071型揚陸艦
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- 兵力投射の重要性は中国で増大している。とくに東シナ海、南シナ海で部隊揚陸能力が整備され、尖閣諸島、パラセル、スプラトリーで中国指導部が実施の意を強くしている。
- 071型揚陸強襲艦は三隻、長白山、崑崙山、井岡山が就航中だ。各艦は西側が中国版の「ゲイター部隊」として海兵隊を輸送揚陸させ敵前上陸が狙いだとする。さらに三隻の建造が見込まれ、米ワスプ級に匹敵する全通型飛行甲板を有する揚陸艦6隻が続く。
- 建造元は上海の滬東中華造船で071型は排水量2万トン、全長700フィートの艦容を誇る。海兵一個大隊400名から800名と装甲車両18台を搭載する。
- 飛行甲板でW-9兵員輸送ヘリを二機同時運用し、格納庫にさらに4機を収納できる。ドック型格納庫に揚陸艇とともにLCACと同等の兵員輸送ホーバークラフト4隻も搭載できる。
- 071型揚陸輸送艦は南海艦隊に配備され台湾侵攻も狙うが中国海軍は即座に用途を転用することが得意だ。各艦は指揮統制用、災害救難人道援助用にも使える。四隻のうち長白山は現在インド洋に展開中でマレーシア航空370便の機体回収任務についている。
- 長白山一隻なら脅威にならないが、遠征展開能力が中国に整備されてきたことから島しょを巡る対立が深刻事態に発展する可能性が出てきた。
サイバー攻撃作戦
- 人民解放軍は「電子優位性」を開戦直後に確立すれば勝利につながると考えている。今回取り上げた五つの兵器体系のうち、サイバー作戦が最も謎に包まれた攻撃能力だ。
- サイバー攻撃の手段は多様で、心理作戦から敵装備・インフラの攻撃まである。中国の電子部隊は優位性を確保すべく通信を支配したり、有害ソフトウェアを送り、あるいはオンラインで偽情報を発信してくるだろう。サイバー攻撃は典型的な軍事作戦と一緒に実施すると効果が最大化でき戦線の追加につながる。サイバー作戦で敵のコンピュータネットワークを使用不能にしたり、通信妨害が先行すれば次に航空機やミサイル攻撃が続くと考えてよい。
- 通常の軍事作戦では有効範囲が制約条件となるがサイバー攻撃では地理と関係なく敵攻撃が軍民間問わず可能だ。また今回取り上げた兵器体系で唯一米本土の攻撃が可能なのがサイバー攻撃だ。
- 中国でサイバー部隊の中心は参謀本部第三部のようで米国家安全保障局に匹敵する。第三部の人員は130千名規模と見られ、各軍、各作戦局、研究機関に分散配置されている。また米国内の作戦を担当する31398部隊の存在が判明している。
- Project 2049によれば参謀本部第四部門が通常の電子戦情報収集にあたる一方でサイバー攻撃にも関与しているようだ
。 人民解放軍の「統合電子戦ネットワーク」の概念では敵コンピュータの妨害と戦場電子装備のジャミングを想定しているのが明らかだ 。 中国ではサイバーを通常の電子戦と一体で考えるが、 米国にはこの発想はない。 - これだけの人員を投入しながら、中国のサイバー能力はまだ低いようだ。例えばスタックスネットのようなサイバー攻撃手の運用能力があるとの証拠はない。中国指導部もこれを意識し「先制攻撃戦略」で洗練されないものの効果的に敵を開戦直後に攻撃する発想と見る専門家もいる。
- インターネットやネットワーク技術で米国は最先端だが、開発の速度が速く状況は変化していく。サイバーと電子戦は米軍と米国内に入り込み、将来の戦闘では敵はサイバーを活用するだろう。
結語
- 米中開戦の可能性は当時の米ソ開戦よりも低いといってよい。冷戦時よりも超大国間の戦争は発生しないはずで特に米中両国は相互経済依存を高めている。その中国が今回取り上げた兵器体系を開発しているのは偶然ではない。中国の観点では米国戦に今から備えておくのは論理的な選択肢だ。
- 今回取り合げた兵器体系五つは戦争の可能性を引き上げる。一方で中国に周辺各国および米国との協調を進めさせるる自信の裏付けとなる。各国は中国が主張を取り下げるよう期待するが、反対に新たな火種が生まれるかもしれない。今やボールは中国側に握られているのだ。■
カイル・ミゾカミはサンフランシスコを本拠に活動する記者でDiplomat,、 Foreign Policy、 War is Boring 、 The Daily Beastに寄稿している。2009年に自身でJapan Security Watchブログを立ち上げた。 今回はNational Interestで初寄稿となった。
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