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★★★F-35の米空軍広報内容を検証---何ができて何ができないのか



そうだったのです。米空軍が公表したデータは都合の良い部分だけのつまみ食いの可能性があり、F-35は今の段階ではあまり期待できない機体なのでしょう。すでに米海軍はF-35Cにはセンサー機材としてしか期待していないような素振りですが、これだけの時間と予算をかけて実現した機体がこんな水準なのかと思うと唖然としませんか。更に同機に西側防衛が依存する事態が今後続くと思うと怖くなります。とは言えすべてを否定するのではなく、問題多い同機をこれからどうやって実戦化させるのか、第四世代戦闘機や無人機との共同運用をどうするのか、建設的に考えていきましょう。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to

Untangling the Claims Behind the Air Force’s F-35 Media Blitz

Here’s what we know and what we still don’t

by JOSEPH TREVITHICK
マウンテンホーム基地上空を飛行する空軍のF-35A 2016年6月 Air Force photo
  1. 歴史がF-35ライトニングIIに下す評価はわからないが、同機を巡る論争が史上最高にまで熱く展開しているのは事実だ。
  2. 米空軍は「第五世代」戦闘機として2016年末の作戦能力獲得宣言を狙い、広報を拡大し、批判派に対し同機は謳い文句通りの機体だと伝えている
  3. 6月にはF-35Aを7機、180名の人員とともにヒル空軍基地(ユタ)からマウンテンホーム空軍基地(アイダホ)へ移動させ、実際の戦闘作戦想定で演習を実施した。
  4. 「どの点から見ても優秀な実績を示しました」と演習後に述べるのはヒル基地の第388戦闘飛行隊を率いるデイヴィッド・リヨンズ大佐だ。
  5. 「機体を昨年秋に受領して数々の通過点があり、大きな進歩を遂げてきました」と第34戦闘飛行隊隊長ジョージ・ワトキンス中佐も語る。
  6. その裏付けで空軍は視覚に訴える広報資料を発表し詳細な点まで自画自賛している。
  7. マウンテンホーム基地ではF-35はミッションを予定通りすべてこなし、模擬空戦では一回も負けず、標的の90%にレーザー誘導爆弾を命中させた。
Air Force illustration
  1. この成果はペンタゴンが四ヶ月前に発表した報告書と大きく対照的だ。ペンタゴンの兵器試験部は同機の深刻な問題をソフトウェアから機体設計まで広く指摘した。
  2. まず旧型機体が相手でも空戦に勝てないとの数字が示されている。2015年6月に本誌War Is BoringはF-35が複座型F-16D練習機より機動性が劣るとの報告内容をリークしている。
  3. そのため空軍広報資料には首をかしげざるを得ないが、空軍は本誌を招き、マウンテンホーム演習の内容についての疑問を受け付けてくれた。
これが空軍から本誌に送られてきた実物である。 U.S. Air Force illustration
  1. そこで本誌はそれに応じた。さらに広報資料に関連した記録5ページを情報公開法で取得した。その一部を上に示した。
  2. それではわかったこと、わからないことを以下整理してみよう。

検証その1 「任務実施率88/88」

  1. F-35の最大の問題点は革命的なコンピューターの「頭脳」で飛行中の脅威の所在から故障の近づく消耗部品まですべてを扱うことだ。
  2. ソフトウェアコードは数百万行におよびバグがあれば搭乗員が身動きできなくなる。実際にパイロットがレーダーを飛行中に再立ち上げする事態が発生している。
  3. 空軍によれば予定ミッションをすべてこなした事自体がコンピューター作動が安定している証拠だという。演習では敵機を想定した航空戦、並びに地上攻撃があった。
  4. 「ソフトウェア問題により実施できなくなった事例はこれまで発生していない」と空軍航空戦闘軍団の広報官ベンジャミン・ニューウェルはWar Is Boringに電子メールで伝えてきた。「任務中止は一回も発生していない」
  5. テストフライト中に新規のソフトウェア問題が発生したのかは知る由もない。仮に発生してもフライト遅延他の影響はなかった。「一行で間違いがあったとしても軽微のソフトウェア欠陥として演習中に手直しは可能だったはず」とニューウェルも認めている。
Air Force photo
  1. だがパイロットが「機械」トラブルで機体を変更する事例が二件発生している。バッテリー不良と航法システムの故障だ。ニューウェルはそれぞれ「無害な種類」で「第四世代機によくある問題」と述べている。
  2. F-35が信頼できる機体で将来さらに信頼度があがるとしても故障は発生するものであり、どの機体にも避けられない。
  3. 今回のマウンテンホーム展開では整備員は常時四機だけ稼働可能にしておけばよかったと6月17日にリヨンズが航空戦闘軍団司令官ハーバート・カーライル大将宛の電子メールで伝えている。
  4. 平均すると第34戦闘機隊は毎日一機で一ミッションを飛ばしていた。
  5. さらにロッキード・マーティン社関係者が現地で待機し、ソフトウェアなど問題発生時にはすぐ手を貸す体制だった。リヨンズ大佐も「必要なときはスペアパーツをタイミングよく提供してくれた」と語っている。
  6. テストが成功したにもかかわらず、リヨンズ大佐はF-35が落雷に弱い問題はそのままだと述べている。もっと心配になるのは燃料タンク内で危険ガスの発生を防ぐ「機体不活性化」手順が空軍にまだないことで、機体爆発のリスクがある。
  7. 空軍はF-35が飛行から戻ると燃料タンクを冷却している。「この手順は面倒だ」とリヨンズ大佐は書いている。「空軍がこの問題を短期間で解決できると期待している」

検証その2「ドッグファイトで損失ゼロ」

  1. シンクタンクRANDのアナリスト二人、ジョン・スティリオンとハロルド・スコット・パーデューがコンピューターシミュレーションでF-35を中国戦闘機と対戦させた。2008年のことだ。報告書の「旋回できない、上昇できない、逃げ出せない」というくだりは有名だ。
  2. 2015年1月のテスト飛行がこの裏付けになった。名前不詳のパイロットの発言でF-35は使用後数年経ったF-16Dとの模擬空戦で「エネルギー面の顕著な不利」を示したという。
  3. 空軍、ロッキード・マーティン、海外導入国はすべてこの主張を否定している。同時に空軍はドッグファイトは過去の遺物に急速になりつつあると強調していた。
  4. 「映画トップガンのような近接航空戦は今日の戦闘シナリオでは非現実的だ」とニューウェルも書いてきた。「F-35およびF-22は『最初に発見、最初に撃墜』ができる第一線機だ」
An F-35A flies with an F-22. Air Force photo

  1. マウンテンホームの演習ではF-35はこの傾向を示していたようで第366戦闘機隊のF-15Eストライクイーグルを圧倒したようだ。
  2. 「大規模演習」が六回あり、毎回四機のF-35が僚機として飛んだとニューウェルは述べている。これだと辻褄があうのはライトニングIIの有利な能力の一つは情報の迅速な共有にあるからだ。
  3. 理論上はパイロットの一人が敵を発見すれば四人は同時に敵の存在を認識できる。
  4. ただちょっと複雑な事情がある。F-15Eは空の一騎打ちより対地攻撃を狙った機体だ。366隊の機体が追加タンクあるいは兵装を機外搭載して機動性を犠牲にしていたのか確認できなかった。
  5. 2015年1月の実験では試作型F-35は追加タンク2つを抱えたF-16でも追随するのに苦労している。「燃料タンク装着でも青軍赤軍ともに性能上は問題ないはずだった」とニューウェルは認めている。
  6. また模擬空戦の相手のF-15Eが何機だったのかも不明だ。実戦の撃墜「キル」に相当する演習の「スプラッシュコーン」の詳細は極秘扱いだ。
  7. また366隊は敵役専門に訓練した部隊ではなく、通常の戦闘飛行隊だ。もちろんパイロットには空対空の実戦経験はあっただろう。
  8. F-35相手の空戦を都合良くでっち上げるのはほぼ不可能だと空軍が主張し「シナリオはしっかりしたものでした」とリヨンズはカーライル大将に伝えている。だが経験豊かなF-16操縦経験者は言っている。「ヴァイパーでは生き残れなかっただろう」

検証その3「爆弾投下の94%が命中」

  1. 米空軍はF-16とA-10ウォートホグ対地攻撃機を全部F-35Aに交代させたいとするがF-35に近接航空支援任務で敵目標を撃破する能力があるのかという疑問が解消していない。これに対し空軍は同機が優れた戦闘爆撃機と証明するのに必死だ。
An F-35A drops a training version of a GBU-12 during a test. Air Force photo
  1. マウンテンホーム演習ではGBU-12ペイブウェイIIレーザー誘導爆弾合計16発が投下され、一発除き全弾命中させている。
  2. 2016年時点で空軍のF-35Aは500ポンドの同爆弾を機内に二発搭載できる。外部にもっと多く搭載できるがステルス性能が犠牲になる。
  3. 「今回のスタンドオフ想定では外部ペイロードの出番はなかった」とニューウェルは説明している。機体内部に爆弾搭載した場合、34隊は目標撃破に最低でも延べ8機が必要となる。
  4. 対照的にイラクでのイスラム国空爆の写真からウォートホグがパイロンひとつでGBU-123発を搭載しているのがわかる。F-16は左右の主翼で2発ずつ搭載が普通だ。
  5. またどれだけ目標に近く投下して命中判定となったかも不明だ。またF-35の高性能カメラやレーダーが目標捕捉に役立ったのかも不明だ。なお、レイセオンはGBU-12爆弾は地上部隊のレーザー照射対象から4フィート以内に命中すると説明している。
  6. 入手資料から空軍はF-35を実戦環境に投入する準備を進めているとわかる。だが同機の「初期」性能が実際に役立つ内容なのか疑問は残ったままだ。
  7. カーライル大将は2010年代の残りで同機をどうか強するのかでやや矛盾する見解を示している。空軍はライトニングIIをイスラム国戦に投入するのはペンタゴンから要請があった場合に限るというのだ。
  8. 「小官が初期作戦能力を宣言した瞬間、現地戦闘司令官がF-35を必要とすれば現地派遣する」とカーライルは今年のロイヤルインターナショナル・エイビエーションタトゥー会場で報道陣に語っている。「現時点の性能で説明し,要請あれば派遣する」
  9. 一方でカーライル大将は「今年F-35が戦闘対応可能となってもイラク、シリア派遣は2017年か2018年だろう」とも取れる発言を会場でしているとDefense Oneのマーカス・ワイスガーバーは伝えている。
  10. ただし空軍がF-35を戦闘投入可能と判断するには空軍自らが妥当と考える要求が満たされればよいのである。2012年にカーライルの前任者マイク・ホステッジは気づかれないうちに基準を切り下げ日程通りに事業がすすむようにした。
  11. 「ウェポンシステムで初期作戦能力宣言の基準は国防総省内に存在しない」とペンタゴン広報官のロバート・キャビネス陸軍少佐はWar is Boringにメールで伝えてきた。
  12. ただし国防総省の作戦能力試験評価部長によればF-35Aの最新版ソフトウェアでは「限定戦闘能力」しか提供できない。
  13. これに対して米海軍はF-35Cの戦闘能力獲得は独自の作戦テスト評価が完了してからという姿勢だ。海兵隊はF-35Bは2015年7月に初期作戦能力を獲得済みと説明している。
  14. 「完成に近づくといえどもF-35はまだ開発段階で、技術課題は残る」とペンタゴンの調達部門トップのフランク・ケンドール副長官はF-35開発室長クリストファー・ボグデン空軍中将と連名で声明文を上院に4月26日に送った。「ただし、両名は政府民間合同チームに問題解決の能力は十分あり、将来の課題にも答えられると信じる」
  15. 直近の懸念は射出座席の安全性だ。体重103ポンドから136ポンド(47キロから62キロ)のパイロットだと射出脱出で確率20%で死亡するとテストで判明した。ボグデン中将の部署は解決可能と説明しているが、すでに空軍は代替装備を探し始めたとDefense Newsが伝えている。
  16. 悩ましい同機で空軍が本当に進展を示したのか別の課題が露呈しただけなのかじっくりと見守らせてもらおう。■


コメント

  1. F-16の時はF-35の肝であるEODASも使えぬ試作機(AF-02)でのDACT。F-15Eとの模擬戦とはまるで条件が違います。
    そもそも現代空戦はBVRが主体、F-15Eの擁するAPG-82を潜り抜け任務を好条件で達成した意義は大きいです。
    そちらこそ都合の良い情報をつまみ食いしてますよね?(笑)
    ファイターマフィアかぶれはこれだから

    返信削除
  2. 航空自衛隊もアラート任務中BVRで対象機を撃墜できると良いのですけどね。
    現実では目視距離まで接近してから相手の出方を見るわけですから中国機に「攻撃動作」でカモられてしまうかもしれませんね。
    J-11に遅れを取ったときは返金してもらえる契約だとよいのですが。

    返信削除
  3. 平時のアラート任務だけが空自の仕事じゃないでしょうに。
    アラートなんてそれこそF-4ですらこなせてたし。

    返信削除

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