2016年7月25日月曜日

★イスラエル空軍の成功の鍵は柔軟な思考形式だ



国家存続を賭けて懸命に国防力整備を図っているイスラエルには日本も大いに参考になる要素が多いです。国際共同開発に道が開けたことでイスラエルとの可能性も増えましたね。やや違和感を覚える同国の行動は目的から考える思考が背景にあるのでしょう。ただその結果として日本もF-22導入をイスラエルとともに断念せざるを得なくなったのは皮肉ですが。

War Is Boring We go to war so you don’t have to

An IAF technician with her F-15 at Hatzerim Air Force Base. IDF photo

How Israel’s Air Force Dominates the Sky

The secret is flexibility

by ROBERT FARLEY
イスラエル国防軍(IDF)の航空部門(IAF)は1960年代から一貫して国防の中心だ。戦場を制圧し一般市民を空爆から守ることで戦力を発揮しイスラエル国防軍に優位性を大きく与えている。同時にIAFは遠距離攻撃能力を遠隔地に実施する能力を実証している。
  1. IAFの今日の姿は効果的な訓練、敵側の弱点、戦力整備と導入の柔軟な対応で実現した。長年に渡りイスラエルは空軍主力機の調達に各種の選択肢を使い、フランス、米国からの調達に加え国産化も希求してきた。結局、米国製機材と国産開発の2つに落ち着いており、これが功を奏している。
Israeli F-16I fighters fly in formation on May 10, 2011. IAF photo
  1. 建国間もないイスラエルは入手可能な武器は手当たり次第に確保していた。このためIDFは古色蒼然たる各種装備を取り混ぜて運用しており、大部分はヨーロッパ製だった。
  2. 1950年代末になるとイスラエルは武器調達の関係を英仏両国とka確立する。フランスとは関係を深め、ミラージュ戦闘機はじめ高性能装備の導入に成功し、核開発でもフランスの技術支援は大きかった。
  3. ミラージュはIAFの主力戦闘機として1967年の6日間戦争の開戦直後の数時間で隣国の空軍部隊を壊滅させている。
  4. ところがフランスが武器禁輸措置を1967年に適用しイスラエルは苦境に立たされた。IDFは戦闘機をもっと必要とし、ミラージュで限界を感じていたのは中距離対地攻撃能力だった。このため、イスラエルは古来からの戦法、必要な物は盗め、を実施しスパイ活動でミラージュの技術を入手する。おそらくフランス当局もある程度これを認めていたのだろう。
  5. ここから戦闘機二種類が生まれた。イスラエル航空宇宙工業(IAI)のネシェルNesher とクフィルKfir だ。後者は強力なアメリカ製エンジンを搭載し、IAFの主力戦闘機になった。
  6. 両機種とも輸出に成功し、ネシェルはアルゼンチンが、クフィルはコロンビア、エクアドル、スリランカが運用した。
A Nesher fighter, an Israeli-made version of the Mirage 5, in Argentina in 2010. Jorge Alberto Leonardi photo via Wikimedia
  1. 両機が国内航空宇宙産業の発展につながり、イスラエル経済全体に波及効果を産んだ。国家財政で軍事技術を開発しても民生技術にイノヴェーション効果が出るとは限らない。
  2. ただしイスラエルの場合は政府投資が民生技術の初期開発段階で大きな後押し効果を産んだ。クフィルの成功によりイスラエルも国内で航空宇宙技術を確立できるとわかり、海外依存を減らせた。
  3. それでもイスラエルは海外調達も大規模に続けた。IDFはF-4ファントムを1960年代末に導入し、1970年代中葉にはF-15イーグルを調達した。後者では最初の機材が安息日に到着したことで政治危機も生んだがその結果、イトザク・ラビン首相が誕生し、国産戦闘機開発に舵を切ったのだ。
  4. 米国やソ連の空軍部隊と同様にIAFもハイ・ローミックスの戦闘機整備を目指した。これがラヴィ Lavi軽量多用途戦闘機の開発につながり、F-15イーグルを補完する存在とされた。
A Lavi B-2 prototype Muzeyon Heyl ha-Avir, Israel. Photo via Wikimedia
  1. ラヴィはF-16ヴァイパーが独占することになる隙間需要に応える存在で、一部は米ライセンスを受け、外観はF-16に酷似しながら主翼構造が異なっている。
  2. だが軍事技術を取り巻く環境は変化して、ラヴィの開発には巨額の国家投資が必要でありながら、F-16をそのまま買ってきたのと比べて得られる優位性は僅かだと判明する。
  3. さらに米国の輸出規制体制はフランスより厳格であり、違反した場合は危険な結果につながるとわかった。
  4. ラヴィも輸出すれば成功するはずと楽観視されていたが、米国技術を多用した戦闘機を堂々と輸出するのを米国が黙認しないのは明らかだった。このためラヴィ商談を進めれば問題はこじれるのは必至だった。
  5. 1987年8月にイスラエル政府がラヴィ事業を終了させると、IAIや関連部門から抗議の嵐が生まれた。同機を復活させる政治工作も失敗し、F-16の大量導入に踏み切る。
  6. その後、ラヴィはF-22ラプター輸出の途も閉ざす結果を産んだ。イスラエルがラヴィ(F-16も含む)の技術を中国に提供したことでJ-10が生まれたので、米議会はF-22輸出を全面的に禁じた。イスラエルも他の数か国同様にラプター取得の可能性がなくなり、同機生産が短命になる結果を産んだ。
Israeli F-16Is in flight. U.S. Air Force photo

  1. 純国産戦闘機開発の代わりにイスラエルは米国機材の大幅改造が好みのようだ。F-15I「雷鳴」とF-15I「暴風」は大幅改修を受けイスラエル用に特化した機材になっている。
  2. 両機種とも航続距離が伸び、エイビオニクス性能が引き上げられ、IDFは本国から遠く離れた地点でも十分に戦果をあげられる。
  3. このうちF-15IはF-15Eストライクイーグルの派生型で、IAFの長距離攻撃機の中心だ。F-35も同様にイスラエル仕様に改造しており、ソフトウェアの高性能化がそのひとつだ。
  4. IAIは多大な成功をとげてきたが、戦闘機事業は例外だ。IAIの成功は国内外向けに航空機部品を開発し販売することで達成しており、弾薬類、エイビオニクスが代表例だ。
  5. IAIはUAV市場にも参入しており、国内外で大きな業績をあげている。ラヴィで失敗したがイスラエルのハイテク国防産業分野は概ね良好な業績で、民生分野へも波及効果がある。
  6. イスラエルの国家産業政策の目標はハイテク・イノヴェーションに資金投入し国防と経済成長を同時に進めることだ。
  7. 現在のイスラエル航空宇宙戦略では米国との良好な関係の維持が欠かせない。これは機材の面でも技術共同開発にもあてはまる。
  8. イスラエルに幸運なことに米イスラエル同盟関係が当面は安泰だ。F-22は機密情報保全の懸念で導入できなくなったが、それで両国関係全体が危機になったわけではない。
  9. 今後想定外の事態が発生して、あるいはイスラエルが米国以外の相手先を探す必要が生まれても、イスラエル産業の実力は相当のもので部品やシステム開発能力があり相手先が見つからない事態は想像しにくい。■


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