スキップしてメイン コンテンツに移動

★イスラエル空軍の成功の鍵は柔軟な思考形式だ



国家存続を賭けて懸命に国防力整備を図っているイスラエルには日本も大いに参考になる要素が多いです。国際共同開発に道が開けたことでイスラエルとの可能性も増えましたね。やや違和感を覚える同国の行動は目的から考える思考が背景にあるのでしょう。ただその結果として日本もF-22導入をイスラエルとともに断念せざるを得なくなったのは皮肉ですが。

War Is Boring We go to war so you don’t have to

An IAF technician with her F-15 at Hatzerim Air Force Base. IDF photo

How Israel’s Air Force Dominates the Sky

The secret is flexibility

by ROBERT FARLEY
イスラエル国防軍(IDF)の航空部門(IAF)は1960年代から一貫して国防の中心だ。戦場を制圧し一般市民を空爆から守ることで戦力を発揮しイスラエル国防軍に優位性を大きく与えている。同時にIAFは遠距離攻撃能力を遠隔地に実施する能力を実証している。
  1. IAFの今日の姿は効果的な訓練、敵側の弱点、戦力整備と導入の柔軟な対応で実現した。長年に渡りイスラエルは空軍主力機の調達に各種の選択肢を使い、フランス、米国からの調達に加え国産化も希求してきた。結局、米国製機材と国産開発の2つに落ち着いており、これが功を奏している。
Israeli F-16I fighters fly in formation on May 10, 2011. IAF photo
  1. 建国間もないイスラエルは入手可能な武器は手当たり次第に確保していた。このためIDFは古色蒼然たる各種装備を取り混ぜて運用しており、大部分はヨーロッパ製だった。
  2. 1950年代末になるとイスラエルは武器調達の関係を英仏両国とka確立する。フランスとは関係を深め、ミラージュ戦闘機はじめ高性能装備の導入に成功し、核開発でもフランスの技術支援は大きかった。
  3. ミラージュはIAFの主力戦闘機として1967年の6日間戦争の開戦直後の数時間で隣国の空軍部隊を壊滅させている。
  4. ところがフランスが武器禁輸措置を1967年に適用しイスラエルは苦境に立たされた。IDFは戦闘機をもっと必要とし、ミラージュで限界を感じていたのは中距離対地攻撃能力だった。このため、イスラエルは古来からの戦法、必要な物は盗め、を実施しスパイ活動でミラージュの技術を入手する。おそらくフランス当局もある程度これを認めていたのだろう。
  5. ここから戦闘機二種類が生まれた。イスラエル航空宇宙工業(IAI)のネシェルNesher とクフィルKfir だ。後者は強力なアメリカ製エンジンを搭載し、IAFの主力戦闘機になった。
  6. 両機種とも輸出に成功し、ネシェルはアルゼンチンが、クフィルはコロンビア、エクアドル、スリランカが運用した。
A Nesher fighter, an Israeli-made version of the Mirage 5, in Argentina in 2010. Jorge Alberto Leonardi photo via Wikimedia
  1. 両機が国内航空宇宙産業の発展につながり、イスラエル経済全体に波及効果を産んだ。国家財政で軍事技術を開発しても民生技術にイノヴェーション効果が出るとは限らない。
  2. ただしイスラエルの場合は政府投資が民生技術の初期開発段階で大きな後押し効果を産んだ。クフィルの成功によりイスラエルも国内で航空宇宙技術を確立できるとわかり、海外依存を減らせた。
  3. それでもイスラエルは海外調達も大規模に続けた。IDFはF-4ファントムを1960年代末に導入し、1970年代中葉にはF-15イーグルを調達した。後者では最初の機材が安息日に到着したことで政治危機も生んだがその結果、イトザク・ラビン首相が誕生し、国産戦闘機開発に舵を切ったのだ。
  4. 米国やソ連の空軍部隊と同様にIAFもハイ・ローミックスの戦闘機整備を目指した。これがラヴィ Lavi軽量多用途戦闘機の開発につながり、F-15イーグルを補完する存在とされた。
A Lavi B-2 prototype Muzeyon Heyl ha-Avir, Israel. Photo via Wikimedia
  1. ラヴィはF-16ヴァイパーが独占することになる隙間需要に応える存在で、一部は米ライセンスを受け、外観はF-16に酷似しながら主翼構造が異なっている。
  2. だが軍事技術を取り巻く環境は変化して、ラヴィの開発には巨額の国家投資が必要でありながら、F-16をそのまま買ってきたのと比べて得られる優位性は僅かだと判明する。
  3. さらに米国の輸出規制体制はフランスより厳格であり、違反した場合は危険な結果につながるとわかった。
  4. ラヴィも輸出すれば成功するはずと楽観視されていたが、米国技術を多用した戦闘機を堂々と輸出するのを米国が黙認しないのは明らかだった。このためラヴィ商談を進めれば問題はこじれるのは必至だった。
  5. 1987年8月にイスラエル政府がラヴィ事業を終了させると、IAIや関連部門から抗議の嵐が生まれた。同機を復活させる政治工作も失敗し、F-16の大量導入に踏み切る。
  6. その後、ラヴィはF-22ラプター輸出の途も閉ざす結果を産んだ。イスラエルがラヴィ(F-16も含む)の技術を中国に提供したことでJ-10が生まれたので、米議会はF-22輸出を全面的に禁じた。イスラエルも他の数か国同様にラプター取得の可能性がなくなり、同機生産が短命になる結果を産んだ。
Israeli F-16Is in flight. U.S. Air Force photo

  1. 純国産戦闘機開発の代わりにイスラエルは米国機材の大幅改造が好みのようだ。F-15I「雷鳴」とF-15I「暴風」は大幅改修を受けイスラエル用に特化した機材になっている。
  2. 両機種とも航続距離が伸び、エイビオニクス性能が引き上げられ、IDFは本国から遠く離れた地点でも十分に戦果をあげられる。
  3. このうちF-15IはF-15Eストライクイーグルの派生型で、IAFの長距離攻撃機の中心だ。F-35も同様にイスラエル仕様に改造しており、ソフトウェアの高性能化がそのひとつだ。
  4. IAIは多大な成功をとげてきたが、戦闘機事業は例外だ。IAIの成功は国内外向けに航空機部品を開発し販売することで達成しており、弾薬類、エイビオニクスが代表例だ。
  5. IAIはUAV市場にも参入しており、国内外で大きな業績をあげている。ラヴィで失敗したがイスラエルのハイテク国防産業分野は概ね良好な業績で、民生分野へも波及効果がある。
  6. イスラエルの国家産業政策の目標はハイテク・イノヴェーションに資金投入し国防と経済成長を同時に進めることだ。
  7. 現在のイスラエル航空宇宙戦略では米国との良好な関係の維持が欠かせない。これは機材の面でも技術共同開発にもあてはまる。
  8. イスラエルに幸運なことに米イスラエル同盟関係が当面は安泰だ。F-22は機密情報保全の懸念で導入できなくなったが、それで両国関係全体が危機になったわけではない。
  9. 今後想定外の事態が発生して、あるいはイスラエルが米国以外の相手先を探す必要が生まれても、イスラエル産業の実力は相当のもので部品やシステム開発能力があり相手先が見つからない事態は想像しにくい。■


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ