米空軍がEF-111以降の電子支援機を調達する予定がないまま、海軍機に依存する状態が続いており、海軍海兵隊のEA-18Gの存在は大きくなっていますが、敵レーダーを妨害するジャマーは旧態依然のままでした。そこで新型ジャマーの開発が進んでいましたが、どうやら実用化にめどがついたようです。オープンアーキテクチャーはLRSBでも謳っていますがどうやら今後の装備では合言葉になりそうですね。それだけ装備類の開発ペースが早くなっていることの裏返しでしょう。
Navy's Next-Generation Jammer Will Attack Multiple Enemy Air Defenses at Once
KRIS OSBORN
05/03/2016
米海軍の次世代ジャマーの実戦化が2021年までに実現すると、多数のレーダーを同時に妨害し将来登場する高性能防空体制にも対応できる。
- 米海軍は電子戦ジャミング技術をさらに進め、探知されずに敵目標の破壊が可能な強力ハイテク装備の実現を目指している。
- 「敵の防空システムにこちらの攻撃部隊を発見できなくするのが狙いです。防御対象は機種を問いません。敵防空網を制圧しミッションを続けさせるのが目的です。この装備で機体が生き残ることは絶対確実になりませんが、兵装を投下して帰還することはできます」とアーネスト・ウィンストン中佐(電子攻撃装備整備担当)がScout Warrior取材に答えた。
- 次世代ジャマーNGJは全長15フィートのポッドでEA-18Gグラウラーに搭載しレーダーを妨害する電子信号を発信する。レーダーは電磁信号を前面に送り反射から標的の位置、大きさ、形状、速度他を解析する技術だ。ただし電磁信号が干渉を受けたり、妨害つまり「ジャム」されると探知ができなくなる。新型ジャマーは敵戦闘機がミサイルを標的に「ロック」するのを妨害する機能がある。
- 「周波数多数を同時にジャムするのも可能で、迅速かつ効率よく行えます」(ウィンストン中佐)
- 新技術に高出力レーダー技術があり、アクティブ電子スキャンアレイAESAと呼ばれる。「実用化すればAESA技術応用の空母電子攻撃ジャミングポッドでDoD装備で唯一の存在になります。海軍はジャミング能力の向上、柔軟運用、戦力増が一度に手に入ります」
- 実戦投入は2021年までに実現する見込みで既存のALQ 99電子戦ジャマーを置き換える。
- ALQ 99の欠点は設計が40年前で脅威対象の進歩特にデジタル化に対応できなくなっていることだ
。 フェイズドアレイレーダーの出現や出力増、 処理能力が高くなり、 使用波形も高度化し脅威が変化中とウィンストン中佐は説明する。 - そこで次世代ジャマーは「オープンアーキテクチャー」設計思想を採用し、ソフトウェア、ハードウェア双方で新技術を随時採用して脅威の進化に対応する。
- 例えば脅威の形式をライブラリー化あるいはデータベース化し、レーダー警戒受信機に取り入れればパイロットは敵の脅威の存在がわかる。新型機が敵に出現すればシステムをアップグレードして情報を追加できる。
- 「脅威ライブラリーを受信機とジャマーにも取り入れれば新型レーダーにも対処できます。新規脅威が出現すればジャミング方法も追加します。EA-18グラウラーのミッションプランシステムでプログラムできます」(ウィンストン中佐)
- レーダー警戒受信機は純然たる防御技術だが、NGJはジャミング能力を攻撃用途に切り替えF/A-18スーパーホーネットやF-35共用打撃戦闘機など各種攻撃機を支援できる。「地対空ミサイルの迎撃飛翔航路を変える事が可能です。敵のレーダー信号を妨害するのです」とウィンストンは説明してくれた。
- 特にB-2ステルス機や戦闘機の防御にNGJが大きな威力を発揮する。将来は開発中の長距離打撃爆撃機やF-35多用途ステルス戦闘機が加わる。敵レーダーを遮断、妨害、あるいは「盲目に」して友軍攻撃機が目標空域に侵入し攻撃を加え無事に帰還するのを助ける。
- レーダー探知を逃れる触れ込みのステルス機も無敵ではなくなりつつありNGJの意義は重要だ。
- ロシアのS-300ならびにS-400地対空ミサイルのような最新式装備はステルス機を長距離で探知でき、使用周波数帯も広がっている。将来は処理能力が高い装備が出現し、デジタル化とネットワーク化が進むとみられる。
- 「多機能レーダー対応は単機能レーダーより難易度が高いが、次世代ジャマーの出力は大幅に上がり、対応できるはず」とウィンストン中佐は述べた。「防御側と攻撃機はずっとイタチごっこでこちらがステルス機を開発すれば、相手は対抗技術を導入します。そこでジャミング性能を引き上げる必要があります」
- NGJでは監視レーダー、交戦レーダー双方に対応する。後者は高周波で標的を捕捉追尾し、防空網に破壊させるのが目的で前者は敵機侵入を知らせるのが目的だ。
- 「標的交戦用のレーダーあるいは指揮統制レーダーの照準範囲は極めて狭く、そこちらは敵にいわばストローで空を覗く状況にし探査範囲を更に狭くさせている間に攻撃機を送りこみます」
- ただし中佐はNGJで敵の無線交信、アンテナあるいは別の電子信号を攻撃する能力があるのか明言を避けた。「無線周波を出すものでNGJの対応周波数帯内は全部ジャムできます」とだけ説明している。
- 米海軍は10億ドルでNGJの技術生産開発(EMD)のインクリメント1をレイセオンへ単独契約で交付している。
- 米海軍はNGJを135セットを調達しグラウラーに搭載する。ウィンストン中佐は別機種へも搭載する可能性を示した。
- 「電子戦では大きな一歩になります」とレイセオン・スペースアンドエアボーン・システムズの社長リック・ユースが語る。「NGJはスマートポッドで現時点で最高性能の電子攻撃技術を応用し敵脅威の進化に簡単に対応できます。高度技術で戦場での技術優位性を確立し、ミッションを成功させ無事帰還させるはずです」■
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