2016年7月30日土曜日

戦略能力整備室は何を目指す部署なのか 前編


オバマ政権で唯一評価できるのがカーター長官率いる国防総省の技術政策で、その中でもスカンクワークスのようにこれまでの官僚制度、慣例から自由に動いている観のあるのがSCO戦略能力整備室です。Breaking Defenseが室長のローパー氏に貴重な取材を行い概要を限定的ですが明らかにしています。これは前編です。

Strategic Capabilities Office Is ‘Buying Time’ For Offset: William Roper

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 18, 2016 at 4:00 AM
WASHINGTON: ウィリアム・ローパー率いる戦略能力整備室 Strategic Capabilities Officeは米軍向けに最先端イノヴェーションを模索しているポケモンGOの軍事版で陸軍兵士が脅威の所在を探る姿が想像できるだろうかあるいはロボット頭脳の箱を海軍水兵が哨戒艇に取り付け無人航行させる様子を想像してほしい海兵隊がマーケティング用ソフトウェアの「ビッグデータ」から反米感情の傾向を探り危険な段階に発展する可能性を予測する姿を想像してもらいたい
「ビッグデータ用のツールはベータテスト中ですが1年以内に実用化するでしょう」とローパーは記者に珍しい単独インタビューで語ってくれた。戦闘用の拡張現実augmented reality(ポケモンGO)はもっと早く出現する。
ただしローパーは自分自身を革命家とは見ていない。むしろ冒険野郎マクガイバーのようにそばにあるものからガジェットを作り、悪者の動きを止めようとしている。アメリカの敵が急速に実力をつけており米軍の優位性が消えつつある中で、広く利用可能な技術でローパーは時間を稼いでいるとも言える。
Sydney J. Freedberg Jr.Defense Secretary Ash Carter talks to Strategic Capabilities Office director William Roper at Submarine Base New London.
相殺戦略に時間を稼ぐ
DARPAや国防総省の実験部門は第三相殺戦略の一環でブレイクスルー技術を開発中だ。中心テーマは自律人工知能で、現実世界のロボットから仮想空間まで広く応用され、極超音速ミサイルや3-Dプリント技術など有望分野もある。問題が一つある。時間だ。
「各チームが取り組んでいる技術は感動的といえるほどですが、実用化が早くなるのも事実です」とローバーは記者に語ってくれた。敵に回る可能性のある側もすぐ追いついてくるだろう、とし、「SCOは省の前面で時間を稼いでいるのです」
米軍の優位性の源泉は1970年代技術であるステルス、スマート爆弾、ワイヤレスデジタルネットワークにあり、次世代の革命的技術の開発に取り組むべき時はとっくに終わっているというのが第三相殺戦略の考え方だ。戦略能力整備室は現時点の技術に多大の改善余地があることと認識する。
「一兆ドルを超える隠れたコストが運用中の各システムに潜んでおり、改良の余地は大きいのです」とローパーは説明した。「まだ出現していない未来技術ではなく、今使っているシステムを遡って検討しているところです」
「この2つはピッタリと合うのです」とローパーは続けた。「国防総省が10年から15年の期間で調達するとしましょう。現有装備はその後も十分な効果があり将来の戦争でも勝利につながる想定外の性能があるとします。でも15年間にわたる技術調達の間に敵も急いで開発して第一線に投入してくるでしょうから、それまでにこちらの発想は追いつかれてしまいますね、そこでまた新しい発想が必要になります」
ローパーは第二次大戦の例が好きなようだ。当時の主力装備は航空機、戦車、潜水艦、無線とそれぞれ20年前から登場している。ドイツがヨーロッパを席巻したのは各技術が優秀だったというよりも技術組み合わせに成功したためだ。ロシアもドイツのやり方を真似て逆に電撃戦を仕掛けドイツを撤退させている。
主要国で基礎技術には大差なかったとローバーは主張し、米国が原子爆弾を開発するまで基本的に動きはなかったとする。それでも1939年から1945年にかけて戦闘力が飛躍的に進歩したのは苦労して手にした実経験や技術面の試行錯誤から同じ基本技術で効果的な使用方法がわかったためだとする。
「第二次大戦でほぼすべての発想が試され優位を確保しようとしていました」とローパーは述べる。ただし1945年以降の米軍事技術はそこまでの試練を経験していません。そこで成功の副産物が問題で、ソ連と戦うのではなくソ連を抑止してきましたが、ソ連が消えてから米国の存続を危うくする敵がまだあらわれておりませんがそれでも問題であることにかわりありません。
「第二次大戦では技術淘汰が自然に行われましたが、今は機能していません」とし、SCOの役目は各軍に「現有装備の細部までメスを入れ有効活用をすすめる一方で新技術の必要性を訴えること」なのだという。
SCOはどう機能するのか
スピードが優先項目になれば既存技術の新用途への応用が可能だ。急速に進歩している民生技術を動きが遅い軍事技術に投入することができる。
SCOが手掛けるプロジェクトは23あり、多くが極秘だが、ローパーは多くが着手から完成まで三年だという。これはペンタゴンがこれまで手がけてきた主要開発事業から見れば光速といってよい。
「当室で扱う内容はほとんどが一年から4年で完成しています。5年でもとんでもなく長い感じはしません」とローパーは記者に語る。「素晴らしい発想があり六年かかったとしましょう」、国防総省では誰も手がけていない内容だとして「実施にとりかかってもいいが、実証は大変でしょう」
SCOには対象プロジェクトの厳格な定義を決めた取り決めはないとローパーは強調する。またペンタゴンでは権威あるとされる正式な仕様要求文書も発行しない。
「一年目は500回も同じ質問に答えていますよ。『要求仕様は何ですか』というものです」とローバーは戦略国際研究所(CSIS)で述べている。「この部署を一番効率的に運営するために要求内容は作成されていないのです」
要求内容が重要となるあまり拘束条件となり、知的な、知的な条件検討を妨げることになる。
「失敗で多いのは願望で数字を書くことですが、『要求』ならその通りに実現しないといけません」とローパーはCSISで語っている。現行制度ではスペックを初期段階で下方固定する傾向がある。航続距離、速度、精度などだが、実は何かを犠牲にすれば実現できるのだ。
ローパーには予算枠もない。SCOは年間16百万ドルを一括受け取り、解析とテスト統括を行うが、個別プロジェクトは都度ペンタゴン予算から獲得しているとCSISで語っている。「新しいコンセプトが入っていないと、結果として実施できずそのまま消えてしまいます」
ではローパーはどんな新コンセプトを希求しているのだろうか。ロボットボート、ビッグデータ、拡張現実を次回お伝えしたい。■


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