ここしばらくは南シナ海だけでなく中国周辺の事態に目が離せないことになりそうですね。中国が世界からの孤立化を防ぐために行動を改めるか(可能性は低い) 新たなレトリックを駆使するのか(すでにその傾向あり)わかりませんが、やんちゃな子どものような態度だけは自制してもらいたいものです。なんといっても核戦力まである国ですから。しかしメンツを潰された時の中国人は逆上するはずですから安心して眠られなくなりそうですね。
The Hague Has Ruled against China. Time to Enforce It.
The amphibious assault ship USS Peleliu transits the South China Sea. Flickr/U.S. Pacific Fleet
July 12, 2016
UNCLOS仲裁法廷でフィリピン-中国間の領有権をめぐる意見の相違で司法判断が出たことで中国には2つの選択肢が生まれた。一方でアジア太平洋地域に広い可能性が出てきた。中国が今回の法廷の決定に示す反応でアジア安全保障の方向が決まるだけでなく第二次大戦後の国際秩序でも今後の姿が変わる。
大戦後の世界で米国は世界各地の協力国と紛争の平和的解決を原則とする国際的な仕組みづくりを模索し、国際法と規範の順守にこだわり、武力による国家目的の実現を排除してきた。この秩序は二度の世界大戦の灰燼から構築され、これまでの中国やアジア太平洋各国の繁栄を支え、過去70年間に大国間で戦闘は発生していない。
中国は繰り返し「責任ある大国」になりたいと表明してきたが、最近の行動が国際秩序に対する最大の脅威となっている。中国の経済力、拡大する軍事力ならびに他国の邪悪な意図の犠牲になってきたと主張しているため国際間の仕組みは困難な事態に直面させられている。
特に中国周辺国にとって難題は待った無しで、東シナ海から南シナ海、インドとの国境線で紛糾する中で中国は組織的に動いて事実の書き換えを目指している。その背後に武力行使をちらつかせている。南シナ海で人工構築物を建造し領有権主張の裏付けにする、東シナ海で防空識別圏を設定する、インド領アルナチャルプラデシュ近くで挑発的軍事行動を繰り返す、これらで中国は一貫して「力が正義だ」と国際政治で主張している。
そこで今回の決定だが、中国政府に真っ向から反駁する内容になっており、今回の係争事案だけでなく結論の形成過程が重要だ。フィリピンがUNCLOS法廷に提訴した事自体が米国及び協力国が戦後の世界で守ってきた価値観、原則に歩調を合わせている。フィリピンのような小国、開発途上国でも国際法規範に訴え中国のような大国を相手に成功をおさめられること自体が中国外相発言への反駁である。外相は「中国は大国であり他国は小国だ。これが現実だ」と中国の好戦的態度を正当化しようとした。
中国が今回の裁定内容を無視すれば、国際社会で建設的な態度を取る一員になるとの同国の公約が一気に虚しくなる。同時に国際秩序にへの深刻な脅威にもなる。世界第二位の経済大国が世界最大の軍事力で公然と自由を尊重する国際秩序を否定し、紛争の平和解決も認めないというのだ。その結果として国際安全保障への影響は深刻で北京の動きの一挙一動をモスクワ、テヘラン、平壌が注視しているはずだ。
米国は今こそ中国が司法判断を拒絶する事態に備えて態度を硬化させるべきで、場合によっては軍事手段でマニラとの紛糾の解決を模索すべきだ。米政府が空母打撃群二個を派遣する決定をしたのは妥当な対応だ。中国が決定内容に性急な反応を示した場合は、米政府は条約上の同盟国、協力国の側に立ち侵略を食い止め、我々の価値観や利益を守る姿勢を断固として示すべきだ。
今回の法廷の結論は中国が台頭してきた歴史で大きな変換点になり、戦後世界の仕組みに対して世界問題を修正主義的立場で見る中国の価値観が最もわかりやすい形で衝突したものといえよう。今回の決定への対応策を決めるのは中国自体だが、米国の選択肢はひとつしかない。断固としてフィリピンの友人たちの側に立ち、地域全体で普遍的価値観を守り、いかなる大国といえども軍事力やGDPの規模と関係なく、法の上には立てないとの原則を守ることである。
J・ランディ・フォーブス下院議員(共、ヴァージニア)は下院軍事員会シーパワー及び兵力投射小委員会の委員長であり、下院中国問題議員連盟の共同ホッ金人でもある。
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