ボーイングは本日創立100周年を迎えます。すでに一民間企業の域を超えた存在ですが、あらためてレキシントン研究所のローレン・トンプソン博士が同社の功績とアメリカにとっての意義を手短にまとめていますので見てみましょう。
What Boeing Has Meant For America: A Centennial Assessment
July 14, 2016 Loren B. Thompson, Ph.D
比類なき企業 ボーイングカンパニーの創立は1916年7月15日。以後一世紀でボーイングは世界最大の航空宇宙企業になり、ジェット旅客機、戦闘機、回転翼機、宇宙システムズで名を知られるようになった。年間売上は1,000億ドルに近づきあり、受注残は5,000億ドルほどの同社はアメリカ最大の輸出企業であり、軍用メーカーでは世界第二位だ。
なぜボーイングは生き残れたのか ボーイングは独特の価値観を育て創設者のカリスマ指導力に依存せず、技術で他社の追随を許さない投資を続けたことで同業他社より長く存続している。一部の中心製品だけに依存せず、同社は市場の変化に絶えず適応し、広範な航空宇宙製品に自社技術を巧みに投入してきた。多角化で同社は機会の幅を広げるとともに打たれ強くなった。
恐れず現状を打破したイノヴェーションの歴史 ボーイングはイノヴェーションの豊かな伝統を各方面から受け継いだ。エンジニアリング国家アカデミーは20世紀の傑作工学製品リストにボーイング機を6種類加えている。また787ドリームライナーのような製品で市場の常識を破っている。先をゆくボーイングにはリスクも生まれるが、画期的製品の開発で世界の商文化の方向を変えて成功してきた。
世界を変えた同社製品 ボーイングの737旅客機は歴史上最も使用頻度の高い商業輸送手段である。また777は世界で一番多く活躍するワイドボディ機で飛行距離は他のどの機種より長い。軍用機でも同様にB-52爆撃機やF-15戦闘機は航空優勢を定義する機体となった。B-52は現在も大型爆撃機の中心で、F-15は実戦で一機も撃墜されたことはない。
米経済実績への同社の影響度 ボーイングの社員は160千人、契約企業は20千社を数え米国全土に広がる。民間部門で7割、軍事部門で3割の売上は海外で計上し、全米最大の輸出企業になった。ボーイングはこれまで一度も安価な労働コストや税率を理由に海外進出したことはなく、米国内でイノヴェーションをめざし、各州に関連企業を抱える「エコシステム」を維持している。
米国の安全保障への貢献 第2次大戦のB-17から今日の空母搭載F/A-18スーパーホーネット戦闘機までボーイングは米軍事力による平和維持で中心の役割を果たしている。戦略核兵力の爆撃機、ミサイルの大部分がボーイング製であり、戦闘機、給油機、輸送機、レーダー機材や軍事用回転翼機でも同様。同社製造 の打ち上げロケット、衛星、弾薬は米軍に不可欠な存在だ。
アメリカにとってボーイングのブランドとは ボーイングのブランドは世界で大きな価値があり、人類の進歩への貢献の証明でもある。同社の成功は米国の技術先導性を物語り、製品の競争力も輸出で証明済みだ。同社は民間、軍事両面で顧客とともに努力して成功を得ており、一部門での成功はさらに別部門でも成功に繋がると証明している。
次の100年へ ボーイングは今後も民間輸送機市場で画期的な製品を投入し他社の追随をゆるさないだろう。大型機生産の技は軍用給油機や警戒機に応用され、各種サービス事業は大きな存在に育っており今後も拡大を続けるだろう。宇宙事業も成長分野で、回転翼機でも世界をリードするだろう。有人機・無人機のビジネスチャンスを開拓していくはずだ。■
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