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★南シナ海対立はもっと深刻な問題に拡大しないか心配される



いよいよ12日(現地時間)国際仲裁裁判所が結論を出しますが、意味がない、根拠が無い、従うつもりは毛頭ないと、ますます中国は不良ぶりを示しているようです。それだけならいいのですが、武力衝突の危険が著しく増えると見るのが普通の見方で、南シナ海がきな臭いことになれば日本経済もお先真っ暗になってしまうのですが、この国は本当にのんきですね。


The National Interest


South China Sea Showdown: Part of a Much Bigger Nightmare

July 11, 2016

  1. 明らかな予測結果をあえて口にすることが良い場合がある。南シナ海をめぐる中国対フィリピンの係争問題で国際仲裁裁判所が明日司法判断を下すがその行方は明らかだ。何が起ころうと、裁定内容にかかわらず、緊張をはらむ同海域は中華人民共和国と領有を主張する多数国がにらみ合い、更に中国と米国も対立する。どう見ても事態は悪化を重ねそうで、おそらく急速に展開するだろう。
  2. まず南シナ海をめぐる中国とフィリピンの二国間の課題を見てみよう。仲裁裁判所が中国の主張の少なくとも一部を無効と宣言するのは確実と見られる。中国はフィリピンからスカボロ礁を2012年に奪い領有宣言しているが,これは岩礁であり200マイルの経済専管水域の要件を満たさず、中国が主張する九段線で南シナ海の85%を自国領海とする論拠が崩れる。
  3. 当然中国は烈火のごとく反論をしてくるだろうし、すでにもう行っている。習近平主席は数日前に「面倒な事態は怖くない」と他の中国関係者同様の発言をしている。だが中国からは交渉も可能との暗示も出ており、フィリピンも協議に前向きな姿勢を示している。
  4. 問題は中国がスカボロ礁のみならず南シナ海の領有を主張していることだ。声明の内容及び回数を見ると、中国は交渉の余地を残していない。さらに交渉したとなれば中国国民も怒りにかられ政府は弱さを露呈したと決めつけ、中国共産党が一番恐れる事態である国内騒乱につながりかねない。
  5. アジア太平洋更に広くインド太平洋地区に不幸なことに交渉しても即座に失敗に終わるか、時間をかけて何の合意形成もできないだろう。どちらにせよ中国は力の行使に出てくるだろう。防空識別圏(ADIZ)を設定するか、スカボロ礁でも浚渫工事、軍事基地建設を始めるだろう。
  6. 中比関係以外にも影響が出る。例えばヴィエトナムが自国も国際仲裁裁判所に法的な解決を求めようとするかもしれない。日本も尖閣問題を法廷に持ち込むか南シナ海での集団訴訟に加わるかもしれない。(日本の原油輸入の6割がこの海域を通過することがポイントだ)
  7. フィリピンと中国の交渉が実現しても決裂するのが関の山だろう。中国としては強硬策しか選択がないと見るだろう。
  8. 真の試練は米中関係だ。現時点で中国は南シナ海で海軍演習を終えようとしており、米国は空母打撃群一個を派遣中でフィリピンに交代で配備中の航空部隊がある。緊張が一気に高まれば米国は必要な対応が取れる体制にあり、中国がADIZを一方的に宣言すれば、空母艦載機あるいは陸上機でこれに挑戦し新たな段階の航行の自由作戦を開始する、あるいはフィリピンとの条約を尊重し、あるいは他国との関係を尊重し一番恐ろしい事態になるかもしれない。
  9. だがもう一つ大きな問題があり、こちらはすぐ解決できそうにない。中国は大国として現状のアジア太平洋国家間の仕組みは自国の目指す権益や要求に適合していないと感じている。中国は国力がまだ弱い段階では日本が尖閣諸島を実効支配し、東シナ海の覇権を握る事を容認していたが、経済力も軍事力も強大になった現在でもそのままとは思えない。中国の定義では台湾は反乱地方の扱いで冷戦の産物としているが、遅かれ早かれ再度前面に出そうだ。
  10. 中国は南シナ海での自国経済力、軍事力の存在感は圧倒的で発言力も最大になってしかるべきと見る。台頭する国家として地域内秩序は新体制にはふさわしくないと見る。同時に米国には自分のことだけ心配しろ、この地方に構うな、中国の動きを封じ込めたり制限するな、今だけでなく未来永劫に、というのが中国の意向だ。まさしくツキディデスの罠で戦争は不可避になり、更に地域内で拡大するだろう。
  11. ということで準備を怠りなく。この数日あるいは数週間は相当荒っぽい展開になりそうだ。しかしながら南シナ海問題は実はもっと大きな問題の断面に過ぎず、大問題が綺麗な形で終結することは少ないのは歴史が示している。■
Harry J. Kazianis is a Senior Fellow for Defense Policy at the Center for the National Interest and Senior Editor at The National Interest Magazine. You can follow him on Twitter: @Grecianformula.
Image: Flickr.


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