これだけの高性能を要求する米空軍はT-Xで別の狙いがあるのか、あるいは単に高性能を希求したらこうなったのでしょうか。果たして調達が成功するのか、あるいはロッキード=KAI案がこれで本当に有利になるのか、答えはボーイングノースロップの新型機体案が出てくると判明するでしょう。
High-Performance T-X Could Edge Out Low-Cost Bid
T-38: USAF
T-38練習機で老朽化が目立つ中、米空軍が後継機T-Xの提案要求 (RFP)案を各社に公開し、要求水準以上の性能へ誘導しようとしている。
- 空軍は今回T-XのRFPを公開する前から個別に業界に要求内容を示しコメントを求めていた。違うのは要求以上の性能へ追加支払いすることで、高G操縦性、高迎え角操縦性や空中給油能力を想定している。
- このうちG性能が議論になっており、上限7.5gで閾値要求6.5gを超える0.1gごとに奨励金を出すと7月26日付のRFP原案は述べている。言い換えれば二案が同価格なら、高G設計案が高く評価される。あるいは価格差があっても高G対応案が有利だ。
- この評価方式に落ち着くまで空軍は業界と基本性能と要求内容の議論を重ねており、コストと性能の解析とトレードオフでT-Xの全体調達費用を下げるのが空軍の狙いだ。
- 「業界との協議を経て、空軍は閾値以上の性能を実現する意義を深く理解できるようになりました」と空軍報道官ロブ・リース少佐が7月27日に語っている。「したがって提案審査では特定性能を重視し、一定以上の場合には追加支払いし、今後数十年に渡るパイロット養成の効果と効率を引き上げたい」
- RFP案で総計350機のT-X並びに関連装備採用を企業チーム4組が競う。T-XはF-22やF-35を飛ばす次世代空軍パイロットを養成し、採用となればF-35導入国への販売の道も開く。RFP最終版は年末に出る。空軍は契約交付を2017年、初期作戦能力獲得を2024年ともくろむ。
- 契約交付までまだ一年あるとはいえ、競合は激しくなっている。ボーイング・Saabチーム、ノースロップ・グラマン主導のBAEシステムズ、L-3はともに新型機を、韓国航空宇宙工業(KAI)とロッキード・マーティンはT-50Aを原型に、さらにレイセオン、レオナルドとCAE連合はT-100を元に提案する。テキストロン・エアランドはスコーピオン原型で参入意向だったがT-X要求内容では価格面で競合できないと今年早々に判断した。
- RFP案のシステム要求は空軍が昨年公表した要求と酷似し性能要求3点を重視する。高G持続、シミュレーターの視覚鋭敏性と性能、並びに機体の長期間稼働だ。
- このうち高G持続性能が物議を醸しだしている。通常のG持続は速度、高度を一定の条件とするが、T-Xでは具体的な飛行状況を設定し最低6.5gで140度の旋回飛行だ。空軍は6.5gを旋回中最後まで求め、条件は高度15,000フィートで燃料残80パーセント以上とする。また7.5gに耐えることが望ましいとしている。機体制御は高度15,000フィートで開始して13,000フィート以下にせず、速度も開始時から10パーセント以上下がらないことと想定。
- この要求以上の性能を実現すれば報奨金を出すとの空軍発表で有利になりそうなのがロッキード=KAI連合のT-50Aだ。レイセオン=レオナルドのT-100は要求を一応満たすものの「合格線ぎりぎり」と主任テストパイロットのエンリコ・スカラボットがAviation Weekに昨年語っている。ただし、レイセオンのダン・ダーネルからはその後、g最低水準を「容易に達成しそれ以上も耐えられる」と言及している。
- ロッキード広報のロブ・フラーからはRFP原案は予想通りとのコメントが出ている。
- 稼働性も2015年案と同じで最低80パーセントとしている。空中給油はKC-135およびKC-10を想定。燃料消費はT-35比10パーセント減、向かい風10ノット高度7,464フィートの8,000フィート滑走路で6,400フィートで離陸し、同じ条件の滑走路でタッチダウンから機体停止までの距離は7,000フィート以下としている。
- 飛行時間合計は8,000時間で22年間稼働とし、月当たりの飛行時間を30.3とRFP案は記載している。■
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