スキップしてメイン コンテンツに移動

★日米が防衛装備品市場を相互開放へ ミサイル防衛他への波及効果を予想



本件はほとんど国内報道されていませんが、武器輸出三原則の変更、前向きになった日本の姿勢に対して米国内の保護主義条項がハードルになっていたわけですが、この合意でそれも適用除外にするという大きな意義があるのですね。ただし潜水艦案件で明らかになったように「売ってやる」姿勢では諸外国のマーケットに参入するのはほぼ不可能で、ここは必死に販路を開拓してきた民間企業のDNAを投入する必要があるでしょうね。とはいえ当面は中核部品や特殊分野のパーツの輸出が主になるのではないでしょうか。iPhoneと同様ですか。

US, Japan Sign Arms Trade Pact: Missile Defense Co-Production & More

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 07, 2016 at 12:41 PM

Navy cruiser Lake Erie launches SM-3 IB missile 575519537757ad8b1368733557
SM-3 IB ミサイルを発射する米海軍巡洋艦USSレイクエリー。同ミサイルは日本との共同生産。

日米が両国間で武器貿易を開放した。乗り気ではなかった日本が合意に踏み切ったのは中国の恐怖が日本を第二次大戦後の平和絶対主義から変貌させたことの証だ。アシュ・カーター国防長官と中谷元防衛相がシャングリラ対話に合わせて相互防衛装備調達Reciprocal Defense Procurement(RDP)合意に6月3日署名した。カーター長官は「包括的かつ原理原則に基づく安全保障ネットワーク」で日本のような従来からの同盟国とシンガポールのような新規に加わった協力国を結ぶ構想を提唱している。
今回の調印で日本はアジアで初めてRDPに加盟した。23カ国がすでに加わっており、イスラエル、エジプト、スウェーデン、NATO加盟国の多くがあるが、各国製の防衛装備品はバイアメリカ法やその他貿易保護措置から適用除外となる。このクラブ加盟は安倍晋三首相にとって大きな一歩で、日本を「普通の」国家にして他国と軍事作戦ならびに装備品生産を共同で行える方向を目指す一環だ。わずか二年前までは国内産業に武器製品の海外販売を禁じてきた日本にRDP加盟は大きな成果だ。
「貿易統計を見ると航空宇宙の民生用では日本は主要サプライヤーになっている。でも防衛用途を見るとゼロだ」とTeal Groupアナリストのジョエル・ジョンソンは指摘する。RDPで大きく変わる可能性が出てきた。RDPとはとどのつまり「日本企業を米国国民と同等の待遇を与え、貴国は米国企業を日本国民と同等の待遇を与えること」とジョンソンは説明する。「バイアメリカ条項の適用は繊維製品、靴を除き免除されます」
だからと言って米側が日本の防衛装備を導入することは期待できない。たとえば三菱重工のそうりゅう型潜水艦や川崎重工のP-1哨戒機、新明和工業のUS-2水上機などだ。保護主義の色彩の強い施策は別にしても米軍の要求内容は時として独特で他国装備品がそのまま選定されることは少ない。インドはUS-2の導入に踏み切りそうだが、オーストラリアへの潜水艦売り込みはフランスに敗れている。
逆に日本はすでに米国と同等の装備品をライセンスあるいは共同生産の形で生産している。富士重工のUH-1Jヒューイ、F-16をもとにしたF-2戦闘機などがある。戦略予算評価センターのブライアン・クラークは「日本は中核分野となる潜水艦戦などで米技術を導入し、電子戦、ステルス、攻撃兵器もその例ですが、その逆は発生していません」
だが今回の合意で日本製ハイテク部品の米製兵器への採用が容易になると期待される。
クラークは「外国から装備品を完成形で買うことは米国ではまれですが、外国製の部品やミッションシステムとしての武器、センサー、ジャマーポッド等では米国製より性能がすぐれているものがあります。これまでRDPは外国メーカーからの部品購入の促進に使われており、システムとしての完成は米企業がもっぱら行ってきました」と述べる。
では日本から何を期待できるだろうか。「カメラのようは光学製品はずっと優秀です」とジョンソンは話す。電子製品でも強い。すでにペイトリオットミサイルの一部は日本製であり、スタンダードミサイルSM-3の最新版アップグレードも共同開発している。ともにミサイル防衛関連で北朝鮮を脅威と受け止める日本にはミサイル防衛技術の向上は望ましい方向だ。
ただし攻撃兵器の部品となるといまだに根強い平和絶対主義により微妙な問題になるだろう。特に日本製部品を採用した米国装備が第三国に輸出されれば問題になりかねない。「日本は戦闘が進行中となるとアレルギー反応を示します」とジョンソンは説明。
「日本は事態を整理する意味で荒っぽい修正をしてくるでしょう。日本国内の方が米国より負担感は大きいかもしれません。米国は相互調達方式に慣れています」とジョンソンは説明したが、日本は武器輸出を開始したばかりだ。「今回の措置で日本企業は米軍への装備品売り込みが可能になりましたが、日本はどのハードウェアを販売対象にするかを選択するでしょうし、販売条件も慎重に検討するはずですが、果たして買い手にとって受け入れ可能な内容になるのか疑問ですね」■



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...