2016年6月17日金曜日

★Brexit>EU脱退を選択した英国に三つの可能性


EU脱退の選択に終わった場合の英国はどんな戦略方針に向かうべきか、というのが今回のテーマです。経済面ではEU脱退にを想定した動きが出ていますが、状況は混とんとし票差はわずか、つまりどっちに転んでおかしくないでしょう。EUそのものが不要と英国民が選択すれば一気に制度が崩壊し現状維持が旨の主流派はなんとか残留の結果を出してもらいたいと必死ですが、どうやら安全保障上は世界の終わりではないようです。以下お読みください。

The National Interest


Little Britain, Middleman, or America's BFF: the UK's Options after Brexit

Image: Flickr/c.art.

June 16, 2016

  1. 6月23日、英国有権者は再び国民投票に臨み、欧州連合に残留するか留まるかで意思を示す。外交政策や国際関係関連で投稿する喜びのひとつに歴史上の「もしも」の疑問に答えることだ。過去の暗い記録から予測しEU脱退した場合を考えるのは面白い作業だ。英国離脱Brexitが本当に実現した後の想定はスコットランド離脱を巡る国民投票や婚約破棄とは違う。だが関心の的は「離婚回避」に失敗したあとに英国の長期的戦略がどうなるかで、可能性は三つと見ており「小英国」「仲介役」「永遠の大親友」と呼ぶ。

小英国モデル
  1. まず「小英国」とはEUの陰から英国が抜け出し地政学的に多国間関係を強めることで、1973年に同国がEUに加盟した時点の状況を上回ることだ。国家主権を重視する政治主張が有権者に影響を与えれば英国はかつての「栄光ある孤立」に復帰することになる。この言葉を生んだサリスベリ卿の時代には帝国版図だけに留意し欧州大陸のごたごたとは一線を画せた。今日では冷戦期の日本が例だ。日米同盟関係に守られて日本は新重商主義外交を展開し、地政学上の危険から距離を置きつつ同盟側には最低限の支援しか提供しなかった。英国に置き換えると米国およびNATOと正式な防衛取り決めは維持するが英国に直接関係しない事態へは積極対応はしない。世界に背を向け紅茶をすすり午后をクリケットで楽しむ英国となる。
  2. この場合の英国は参戦に慎重になる。西側の一員とはいえ自国に死活的な権益がある場合のみ戦火を開くことになる。ただし過去の栄光ある孤立から学ぶものがあるとすれば、英国外交にほとんど益がないことだ。孤立主義で紛争を初期段階で抑える介入が遅れたのは、集団対応策の実施ができずその意向もなかったためだ。1890年代末のドイツの台頭が例で最後まで傍観者のままで、ドイツを放置したため1870年代の普仏戦争時よりかえって強力で悪意あるドイツを作ってしまった。

調停役モデル
  1. 二番目の可能性は英国が中間業者に似た立場になることだ。これは韓国の元大統領盧武鉉が2000年ごろに提唱した「バランサー」論に似ている。この発想では「小英国」よりは規模を拡大して中間国あるいは誠実な調停役の役割を演じる。例えば英国政府は米中間の亀裂を解消する立場になる。両方に大事な点を伝える仲買人外交を務め、誠実な調停者あるいは銀行家となる。つまるところBrexit後の予測として経済崩壊が言われるが、ロンドンは引き続き世界の金融センターのままむしろ成長するだろう。英国の金融大国としての国力は閉じられた扉の中でも強いようだ。
  2. ただし歴史をひも解けば誠実な仲介者役は状況の進展につれ発言力を失う傾向がある。教科書を見れば誠実さの欠ける国は仲介者として成功していないことがわかる。英国自体が大戦間に仲介役を心がけたがドイツを怒らせ結果としてフランスの力を弱めている。英仏両国の努力が結果を結ばなかったのは明白である。では現代においてはどうだろうか。インドは長い間にわたる調停役の経験を有するが、同国でさえ非同盟主義が今日では逆に危険につながると気づき始めている。誠実な調停役では機密情報や防衛装備の入手が同盟国時より劣るのは当然だ。相手にすればどちらにつくのかわからない。中国とロシアが一層強圧的な政治手法をとり、歴史修正主義の立場で法支配が前提の自由主義の秩序に挑戦する世界で日和見の立場を取れば状況の危険性を見抜けず致命的な誤算を招きかねない。

永遠の大親友モデル
  1. 最後のシナリオは英国が中核的な安全保障関係を抜本的に見直し、テコ入れすることだ。この選択では従来の同盟国たる米国との関係が強化されNATO重視にもつながる。同時にオーストラリア、ニュージーランドとの最恵国貿易関係、安全保障、住民移動関係が復活するだろう。EU加盟でこの関係は弱くなっていた。EU型から離れた英国は同盟国とともに以前から存在する制度に新しい利用価値を与えるだろう。「ファイブアイズ」(英米加豪ニュージーランド)がアングロスフィアで長い間安全保障の柱だ。英国内エリート層はファイブアイズの再強化策として目に見えない存在から閣僚級組織に格上げし英国および最密接な同盟各国の自由体制を守る手段に変えようするかもしれない。さらにファイブアイズの門戸を広げ、インドやスカンジナビア、北東アジアの諸国の追加を考えてよい。

望ましい選択肢は
  1. 英国の進むべき道では三番目の選択肢が安全保障上、国家主権の独立性の観点双方で優れていると写る。ただしこれから数十年にわたり英国民がどの方向を望むのかはうかがい知れない。三つの選択肢で英国の一般国民や政治エリートに尋ねても意見はバラバラだろう。小英国モデルは地方部で人気を集めるだろう。地方の独立党支持者や過疎地でEU脱退論が一番強い。調停役モデルを一番強く支持するのは保守党内のビジネス観点を有する層ならびにコービー党首率いる新しい労働党の中で専制主義に寛容な一派だろう。ロンドンの都市住民層では人種文化が多様化しており、調停者構想が一番合うのではないか。これは英国がイラク侵攻に参加した2003年の影響で、米国との特別関係に不安を覚える感情のなせる業だ。
  2. 米国との複雑な関係があるからこそ都市部住民で教育を受けたエリート層は米国と自由主義を共有しても、ロシアや中国へは違和感があるはずだ。本人が認めるか定かではないがジェレミー・コービンが一番共感できるのはバーニー・サンダースでありウラジミール・プーチンではないはずだ。また労働党支持層は社会多様性、社会正義、人権がアメリカ社会で扱われている様を共感しても、ロシアが同性愛者を非合法化し、中国が人権運動法律家を投獄するのは容認できないはずだ。この深いつながりが最終的に(ロシアからの潜入者が多いとはいえ)労働党政権が誕生しても毎回英米同盟関係を維持している理由である。そして最良の友人構想を強く支えるのが根っからの保守党支持者と穏健な労働党支持層でともに全国に散らばる。こうしてみると最後の選択肢になれば西側防衛体制は再強化されたメンバー国に出合えそうだ。6月23日の結果と関係なく、米国の政策決定層は英国に手を差し伸べ、英国民に対して米国が最古の同盟国であることを思い出させ、結果と関係なく米国は英国の側につくことを伝えるべきだ。

本稿の著者ジョン・ヘミングスはCSIS戦略国際問題研究所の太平洋フォーラムで非常勤研究員でロンドン大学政経学部でアジア太平洋における米国の同盟戦略を研究し博士号取得をめざしている。


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