2016年6月13日月曜日

★★歴史に残る機体シリーズ① B-58ハスラーは冷戦時代の偉大な失敗作



冷戦時代の各機には独特のカラーがありますが、中でもB-58は異彩を放つ存在で就役時間が短かったのは結局同機の存在価値が消滅したためでしょうね。莫大な費用は無駄になったのでしょうか。無駄と言えば無駄ですが、世界が大戦の惨禍に合わなかったのはウェポンシステムとしての抑止力が機能していたからこそで、それだけの予算を投じて今日の世界があるわけで、同機も一翼を担っていたのですね。今日の世界は核戦力への適正な予算配分が減っているためシステムの有効性が減っており、より危険になっているともいえるでしょう。

The B-58 Hustler: America's Cold War Nuclear Bomber Blunder

She was a work of art—but was nearly obsolete from the start.
June 10, 2016

  1. 奇想天外な機体が数々登場した当時でもB-58ハスラーほど視覚面で目立つ機体はなかった。デルタ主翼、巨大なエンジン、さらに驚くべきその性能により同機は神話の域に達し、パイロットは限界を超えた速度で文字通りその主翼を引き裂いたこともあった。
  2. というのはうそだがB-58は操縦が難しい機体だった。驚異の技術を有しながらハスラーの事故率は恐ろしく高く、保守コストも同様で、ミッション性能はすぐに陳腐化してしまった。わずか十年しか就役せず戦略爆撃機開発の手詰まりを象徴する機体になった。
  3. ハスラーはB-47ストラトジェットの直系の後継機となった中型爆撃機だ。中型爆撃機の任務は海外基地を発進してソ連を攻撃することだったが、ハスラーが就役するまでに中型と大型爆撃機の違いは縮まっており。空中給油が登場し前線航空基地の安全性に米空軍が懸念をいだき、さらに同盟各国が戦略核兵器の国内配備に懸念したことでB-58は米国内からの運用しかできなくなった。
  4. メーカーのコンヴェアーはB-36ピースメーカーで爆撃機事業に参入していた。巨大かつ低速のB-36は1950年代の長距離戦略爆撃機として水爆を搭載し米核抑止力の中心となっていた。だがMiG-15はじめソ連の迎撃戦闘機の出現で一気に時代遅れになり、同じ課題が新型ジェット爆撃機たるB-47やB-52にも残った。
  5. ハスラーはピースメーカーと類似性がまったくない。大型エンジン四基をデルタ翼に取り付けたB-58はマッハ2で飛行し核兵器と燃料タンクを胴体下に運んだ。米国内基地から離陸し、KC-135タンカーの支援を受けてソ連領空に高速高高度で侵入しつつ、ソ連迎撃機をかわし、核兵器を投下する作戦構想だった。初飛行は1956年で作戦運用開始は1960年だった。合計116機が調達されたが機体単価はB-52ストラトフォートレスとほぼ同額だった。
  6. 初期のデルタ翼機としてハスラーも空飛ぶ怪物だった。着陸、離陸時に失速傾向があり、スピンも多々あったためパイロットは制御方法を必死に体得した。ハスラーの飛行特性には独特の特徴がありパイロットの経験能力との調和が欠けていた。保守管理には専用工具が必要で非常に高価な作業になった。
  7. このため事故率は驚くほど高く116機中26機が事故喪失となり、10年間で26パーセントを喪失した。黎明期のジェット機事故率は総じて高かったが、ハスラーの事故率は突出しており、機体単価が高いことが痛かった。もしB-58退役に踏み切っていなかったら、全機が数年のうちに消耗してたはずと述べた専門家もいたほどだ。
  8. B-36やB-47同様にB-58も実戦で一発も爆弾投下をしていない。ハスラーはヴィエトナム戦に投入されず核任務に専念したが、B-52は北ヴィエトナムを爆撃している。B-58も理屈の上では通常爆弾を運用できたが、高速かつ低空では機体制御が難しく正確な爆弾投下は困難だったはずだ。
  9. 米空軍は高性能の侵攻爆撃機が必要としながらB-58に高い評価を与えなかった。カーティス・ルメイ将軍はB-58の欠点を列挙することでB-70ヴァルキリーの正当性を訴えている。ただしB-52の後継機を狙ったB-70もB-58同様の運命をたどった。当時の国防長官は高高度SAMとミサイル搭載迎撃機の出現で爆撃機は時代遅れと主張したのだ。
  10. ロバート・マクナマラ長官は1965年にB-58全機退役の命令を発出し、退役が完了したのは1970年だった。供用期間は10年たらずになった。B-58を民間ジェット機に転用する案もあったが予想どおり立ち消えになっている。任務はB-52が引き継ぎ、低空侵攻はハスラーより効果的にこなせた。中型爆撃機による通常爆弾投下任務は戦闘爆撃機が引き継ぎ、FB-111アードヴァーク(同機も長い苦闘の歴史あり)から多用途戦闘機としてF-15、F-16さらにゆくゆくはF-35が引き継ぐ。精密誘導兵器の出現で爆弾搭載量が爆撃機の性能を支配する時代は終わった。
  11. B-58の存在はむしろポピュラーカルチャーの世界で鮮明だ。未来的な形態と危険な印象がアーティストや映画製作者を刺激してきた。中でもB-58編隊(作品中では『ヴィンディケーター』)がモスクワ爆撃に投入される1964年の映画Fail-Safe(「未知への飛行」)が最も有名だ。モスクワ攻撃を誤って命令された編隊はソ連領空へ侵入しモスクワを核攻撃する。米大統領はニューヨーク攻撃を命令する。
  12. B-58は第二次大戦後の戦略爆撃手段として空軍が構築した業績の一部だ。第二次大戦ではB-17、B-24、B-29が大きな攻撃手段となった。この経験から空軍上層部は戦争に勝つためには戦略爆撃を長期間継続する必要があると思いつく。SAMが出現し、ヴィエトナムの大失敗が重なり、さらに当時の指導層が引退したことでB-58のような爆撃機への支持にひびが入った。
  13. だがICBMなら爆撃機よりさらに高速かつ高高度を飛翔し、ソ連防空網は無効となる。さらに潜水艦発射方式の弾道ミサイルは核抑止力を安全に維持し、弱体な爆撃機を連続パトロール飛行させる必要がない。これに対して各種ミッションを柔軟にこなしながら残存性がある機体はB-52ぐらいしかない。

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author ofThe Battleship Book. He serves as a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money, Information Dissemination and theDiplomat.


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