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★NATOの冷戦時の第三次世界大戦シナリオが明らかになった



今から見れば狂気の世界ですが、当時は本当にソ連侵攻のシナリオが現実的に見られていたのですね。ロシアが再びこのような姿勢をとることがないよう祈るばかりです。なぜならNATOも拡大したとはいえこれだけの体制の復活はおそらく不可能でしょうから。

 Revealed: How NATO Planned to Win World War Three in Europe

June 6, 2016

北大西洋条約機構NATOはソ連の西欧侵攻を実現させないため1949年に結成された。第二次大戦が終結し、ソ連はポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、ルーマニア、ブルガリア、東ドイツの東欧各地に駐留軍を送った。NATOはチャーチルが述べた「鉄のカーテン」への対抗策だった。
  1. 米および西欧はスターリンのソ連と開戦となれば欧州が主舞台になるのは当然と見ていた。ただし核兵器の配備により東西は直接対決を避け、変わりに代理戦争が各地で発生した。ソ連による西欧侵攻は最大級のリスクがありながら最大級の成果も生むと見られていた。
  2. そこでNATOの戦略ミッションは同盟の瓦解を軍事力で防止することにあった。このため目標が四つ想定された。航空優勢の確保、北米への航路確保、西ドイツの領土保全および核兵器投入の予防だった。
  3. 1988年になるとNATOの西欧防衛方針は前方配備になり、ソ連ワルシャワ機構軍を極力ドイツ国境の内側で食い止めることが主眼とされた。領土奥深い部分での防衛は第二次大戦での東部戦線の経験から有効とされたが実施されていれば西ドイツの住民全員と戦後40年の復興繁栄の結果が犠牲になっていただろう。
  4. NATOには統合戦の構想はなく、ただ「戦線を維持する」ことでソ連、ワルシャワ条約軍を消耗させる構想だけだったようだ。西ドイツ陸軍は戦術レベルで柔軟行動を許された。米国はエアランド戦闘 AirLand Battle 構想として地上兵力と航空部隊を一体運用して敵を同時に攻撃し最前線から後方まで攻撃するつもりだった。
  5. 海上ではNATO海軍部隊の主任務は北米との海上交通路を維持することにあり、米国カナダから増援部隊を無事輸送することだった。NATOの哨戒機、艦船、潜水艦はソ連潜水艦の探知に全力を挙げ、グリーンランド、アイスランド、英国を結ぶ線よりの南下は阻止する体制だった。
  6. 米海軍はノルウェー海に空母戦闘群を二個ないし三個送り別個に戦艦中心の水上戦闘集団一個を派遣しソ連北方艦隊の海軍基地、航空基地を攻撃する想定だった。ソ連本土の攻撃で西側護送船団への攻撃を分散させつつ、海軍、空軍基地を攻撃し補給路も遮断する構想だった。同時にソ連の弾道ミサイル潜水艦を母港から切り離し標的にする考えだった。
  7. NATO海軍部隊はソ連、ポーランド、東ドイツの海軍部隊をバルト海内部に閉じ込め、デンマークや西ドイツへの侵攻を食い止める構想で、西ドイツ海軍はハンブルグ北方でポーランド揚陸部隊の侵攻に警戒する想定だった。
  8. 空ではNATO空軍部隊に複数の役割が期待されていた。米空軍のF-15、F-16、英空軍のトーネードADV、ドイツのF-4ファントムで航空優勢を確保する一方、英軍と独軍のトーネードIDS低空攻撃爆撃機が東ドイツとポーランドのの航空基地を爆撃しポーランドでも同じことを実施する構想だった。米空軍F-111戦闘爆撃機をはじめとする攻撃機材は阻止攻撃、橋梁、司令部、補給処等を破壊し少しでもワルシャワ条約軍の進撃を遅らせ、その後米A-10ウォートホグ、ドイツのアルファジェット、英空軍ハリヤーの各機が前線航空支援でNATO地上軍の窮地を救うはずだった。
  9. それでも決着をつけるの地上戦のはずだった。NATOの航空優勢へソ連が考えた対抗策は航空基地の制圧だった。
  10. 技術面ではNATO地上軍が優位だったが、当時導入された戦闘システムの一部は今日でも稼働中だ。1988年時点で在欧米陸軍の第七軍は「ビッグファイブ」装備を展開していた。M1エイブラムズ主力戦車、M2ブラッドレー歩兵戦闘車両、AH-64アパッチ攻撃ヘリコプター、UH-60ブラックホーク輸送ヘリ、ペイトリオット防空ミサイルでそれぞれ陸軍のエアランド戦闘構想の一部だった。西ドイツは二代目の主力戦車レオパルトIIの配備を始めており、オランダも採用し、マーダー歩兵戦闘車両も登場していた。同時に英陸軍はチャレンジャー戦車、ウォリアー歩兵戦闘車両によりライン河の防衛体制を強化していた。
  11. 北方陸軍集団NORTHAGは西ドイツの北半分を担当して北ドイツ平野の防衛が任務だった。地形の性格上、攻撃側に有利だった。NAOTHAGにはルール地方への近道ルートの防衛も重い任務で重要な工業地帯や当時の首都ボンさらにアントワープやロッテルダムという増援部隊の受入れに必須の港湾につながるルートだった。
  12. そこでNATO部隊はドイツ、英国、オランダ、ベルギーの二個ないし四個戦闘師団が別個に展開し指揮統制は全体レベルでのみ可能だった。有事には英国、オランダ、ベルギーが増派部隊を迅速に送り込む想定とはいえ、同陸軍集団の部隊の大半は防御地点から遠く離れた配置で相当前からの警報がないと展開は無理だった。
  13. 中央陸軍集団CENTAGは西ドイツ南半分の防衛を任務とし、米軍とドイツ軍を中心にカナダ機械化旅団が補強した。ドイツの二個軍団はそれぞれ戦車師団、戦闘車両師団、山岳師団で構成し、防衛線の死守が任務とされ米陸軍の軍団二個は機械化歩兵師団二個あるいは三個で構成した。CENTAGには国境とライン河までの120マイルと一番狭い地帯の防衛を担当した。
  14. 数の上では劣勢だったがCENTAGには切り札があった。米独軍の戦闘態勢は装甲機械化歩兵部隊が中心で戦車を大量に投入するソ連ワルシャワ機構軍との対決に特化していた。西ドイツ陸軍は高度に訓練され、指揮統制、装備の面でも、申し分がなかった。欧州駐留米陸軍には追加大隊があり、火力を約1割追加できた。また各軍団には装甲騎兵連隊で国境線を突破することができた。
  15. CENTAGには地形の利点もあった。ドイツ北方地方と違い、ドイツ南部には丘陵地、山岳地帯に繋がる渓谷もあり防衛側には有利だった。有名なフルダ渓谷も一部でホフ峡谷やシェブ進入路といった知名度は低いが重要地点もあった。
  16. はるか北にはノルウェーがソ連と国境を接し、防衛には不利と見られてきた。だがノルウェーの地形は攻撃側には持続が困難でソ連地上部隊には陸戦隊ならびに空中機動部隊の支援が必要だった。NATOは国際混成ACE機動部隊をノルウェー防衛に派遣する構想で、米海兵隊もノルウェー国内に旅団装備一式を事前配備していた。
  17. NATOはヨーロッパ各地で敵の降下、ヘリコプターによる強襲や特殊部隊の攻撃を想定し小規模ながら機動力ある攻撃で背後のNATO施設や重要拠点が占拠されるのを恐れた。ライン河等の橋梁、司令部、補給処、装備事前集積所などだ。
  18. そこで背後の防衛用に12個旅団規模の西ドイツ予備兵力をあてた。ボンの防衛には落下傘部隊三個が急行する体制だった。NATOの各空軍基地の保安体制は極めて高く米空軍は独自に大規模守備隊を配置し、英空軍も基地を防衛していた。
  19. 通常兵力でワルシャワ条約軍を阻止できない場合はNATOには戦術核兵器各種があり、核機雷から自由落下爆弾、地上発射巡航ミサイル、パーシングIIミサイルまで選択可能だった。核装備は豊富だったがいったん使用すれば核報復を招くのは必至で報復の輪を止めるのは至難の業だっただろう。戦術核が戦略核の使用に繋がっていれば、人類文明は終焉を迎えていたかもしれない。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boringand the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blogJapan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.



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