なんといっても先週の大きな話題はBrexitで結構な差で離脱が決まりましたね。英国内ではまだ動揺が続いているようですが、英国はNATO脱退まで決めたわけではありません。それでも経済パフォーマンスが落ちることを前提に早くも国防力縮小の議論が発生しているようです。これを機会にロシアが勢力を伸ばすことは許容できませんので、欧州特に西欧の防衛面の結束はますます必要で、EUがだめでもNATOは一層重要性を増してくるでしょう。その中で日本のNATO加盟(NATOの改組が当然必要です)もそのうち議題に上るのではないでしょうか。週明けの金融界は大変でしょうが、経済論理より正当な扱いを受けていないと感じる政治感情の方が強いことが証明された事件で、これから世界は大きく変わるのではと見ています。
After the Brexit, What's Next for Defense?
Andrew Chuter12:10 p.m. EDT June 24, 2016
英国は未知の世界に突入した。国民投票でEU離脱が決まるとアナリスト、関係者それぞれが国防関連の影響を憂慮し始めた。
- 直近の影響は政治面ですでに現れており国防支持派の首相ディヴィッド・キャメロンが辞任を発表し10月までに退陣する。
- ジョージ・オズボーン蔵相も辞任と見られる。オズボーンは国防省の実績に不満を持ちながら戦略国防安全保障見直し strategic defence and security review, SDSR で今後五年間の国防支出増を昨年11月の認めた
- 欧州残留を希望したスコットランド自治政府も独自に国民投票を実施し連合王国残留の可否で民意を問う可能性が出てきた。
- スコットランドが分離独立すれば軍事作戦上で大きな影響が発生する。ファスレーンの原潜基地だけの問題ではない。与党スコットランド国民党の公約は英海軍の弾道ミサイル原潜、攻撃型原潜をスコットランドから追い出すことだ。
- だがEU離脱の影響は国防面でもっと緊急の課題を生むとの分析がある。
- 「離脱後に歳出見直しは必至な中で国防費が削減対象外というのは非現実的」とマルコム・チャーマーズ英シンクタンクRoyal United Services Instituteの副所長は述べる。
- 「財源が減れば政府は戦略の優先を従来のグローバルな役割から欧州同盟国と同じ水準に再調整を迫られるでしょう」
- 23日の投票後にチャーマーズが出したレポートでは短期的な支出削減の可能性は十分あるが、国防予算への長期的影響を左右するのは経済実績の悪化の程度次第としている。
- 元軍需調達大臣のピーター・ラフは保守党政権は歳出削減に及び腰となりNATO加盟国の防衛費2パーセント水準目標を達成できずに問題を再発させたくないはずと見る。この水準はオズボーン蔵相が昨年の支出見直しで了承している。
- 「緊縮予算は必至だったが蔵相が2パーセント公約を守ったのは極めて勇気のいる行為だった」と評価し、「保守党は懸命に国土防衛を継続しており、国会議員からの支援は強い。蔵相人事は見えないが支出削減に動かないだろう。削減が必要なのは事実だが次の首班人事次第でしょう」とラフは述べた。
- 予算編成の圧力の中で国防予算水準をどこにおくか疑問が出ている。
- 国家監査局による先週の報告では国防予算は256億ポンド(350億ドル)でSDSRでボーイングP-8哨戒機の調達も決まっている。
- これに対してチャーマースは政府はSDSR内容を見直し「EU離脱で生まれる新しい状況に国防安全保障政策全般を合わせる好機だ。政府は特にフランス、ドイツと密接に動くべきだ」と主張する。
- ラフは2015年度SDSRは現時点で負担不可能で予算調達できないと指摘する。「あくまで願望であり実現は無理」
- 「英国は軍事活動の中心をヨーロッパの安全確保に移すべき」とチャーマースは述べる。
- これに対し国防コンサルタントのハワード・ウィールドンは英国離脱の直近の影響は最小限と見る。
- 「長期的な影響は首相人事で今と同様の国防支出の考え方が続くかで大きく変わります。次期蔵相は国防省にSDSR2015の見直しを強く迫ると見ています」
- ウィールドンはEU離脱でP-8およびAH-64E攻撃ヘリコプターの調達契約発表がまもなく開催のファーンボロ航空ショーで取り消しにはならないと見る。
- 匿名条件の国防企業幹部は不確実ではあるものの中核事業は政府承認を受け前進するはずと語った。
- 「今の勢いを殺したくないです。ビジネスは予定通り進むと見ていますが、途中で変更が発生するかもしれません」
- 次期原子力潜水艦事業は総額300億ポンド以上と見られ、国会での審議を待つが、ヴァンガード級トライデントミサイル潜水艦四隻の後継艦は大問題だ。
- 上記企業幹部は国民投票結果で英国内及び海外から投資は減速すると見ている。
- 「英国向け投資案件は疑問視されるでしょう。英国企業も投資活動に慎重になり、状況がはっきりしするまではそのままとなり、結果として投資低迷が続くと思います」
- 「英国に投資しようと考える向きも政治面で不確実性を嫌うでしょう。企業活動でこれまでとは見方が変わります」
- ただし英国防産業は全般として「きわめて回復力が高く粘り強いので、問題を直視し新しい政治環境に挑戦していくでしょう」とする。
- 同幹部は英国離脱でもヨーロッパ各国とりわけフランスとの共同事業に大きな影響はないと見ている。
- 「国防産業の観点ではEUを高く評価していません。ヨーロッパ各国との国防関係協力事業はブリュッセルと無関係です。特にフランスと関係強化につながると楽観視しています」
- 「ヨーロッパの反応はこれからですが、ドイツの国防観はフランスと大きく違いますし、フランスは英国よりの考え方ですので、事業の協力関係は自然に続きますよ」
- ラフは対欧州協力関係で政治要素が入るのは必至と見る。
- 「そうなると英仏協力は一層難しくなりますね。英仏防衛条約が両国のトップによる政治取り決めで成立ずみですが難易度は高くなるでしょう。次期首相がキャメロンと同じ扱いをするかも不明です」
- パリではフランス防衛調達部門のトップが英国との強い関係を強調しつつ現時点で中長期的には不明と語っている。
- 「国防部門ではランカスター条約で取り決めた二国間協力が基礎で両国の高レベルがそれぞれ支持しています」とローラン・コレ・ビヨン防衛装備調達総局局長が語った。「今の時点ではブレグジットの影響が防衛部門にどう出てくるか不明ですが、短期的な影響は少ないとしても中長期的にはわかりません」
- カミユ・グランはシンクタンク戦略研究財団Fondation pour la Récherche Stratégiqueを主宰し短期的には若干の不確実性があるが心配すべきは先が見通せないことだという。「ヨーロッパの防衛に悪材料です」■
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