Why Do Brexit and Trump Still Shock National Security Elites?
8:29 PM ET
ブレグジットで判ったこと:結局、耳を傾けず、理解せず、意思疎通せず、説明もしていない。
LONDON – 6月23日の出来事を追っていただろうか。ブレグジットは関心を引いただろうか。この記事をご覧の皆さんは国家安全保障専門家あるいは外交政策にご関心の向きだろう。国民投票結果に恐れを感じ、トランプ候補のメッセージにも脅威を感じるのなら、大衆に非を求めるのはやめてご自分のことを考え直した方がいい。
- こんなのはいかがだろうか。もう一度各種記事を読んで米国人、英国人が安全保障の専門家知見から距離を置く理由を考えてほしい。その次にこのブログを閉じて周りの人に説明してほしい。どんな仕事をしていてどれだけ重要な仕事なのか。またその政策実施がどれだけアメリカを再び偉大な地位につけられるかを。これはトランプが実行していることだ。トランプは市井の人々を巻き込んでいる。あなたはしていない、あるいはしているつもりでも十分ではない。
- ロンドンでこの四月にアスペン安全保障フォーラムがあり、参加者のほとんどがEU離脱に反対の上、離脱の可能性はないとしていた。なぜ英国が世界規模の安全保障、情報利用の機会を放棄し再度自国で作り上げる必要があるのか。ブレグジットに一票を投じるのは自分の顔から鼻を切り取ることではないか。(鼻とは法執行、情報活動、軍事保安作戦の総称だ)
- ワシントンの国家安全保障専門家のほぼ全員がドナルド・トランプを最高司令官とすることに反対している。共和党指導部でさえトランプの安全保障観を憂慮している。イスラム教徒への態度、イスラム国へ核兵器投入を許容する姿勢であり、NATO解体もある。先週もネオコンの長老ロバート・ケイガンがヒラリー・クリントン支持に回り、保守派著述家のマックス・ブートもロサンジェルスタイムズ紙上でトランプに苦言を呈している。
「トランプは傲慢な扇動家で人種差別、女性蔑視、陰謀論へ誘導を図っている。貿易保護主義や孤立主義の第一人者だ。だがその考え方が大恐慌と第二次大戦につながったのを忘れてはならない。警察国家さながらに不法移民の一斉取り締まりを望み、イスラム教徒の入国禁止を主張する。支持者に反対勢力を襲うようけしかけ、批判勢力には訴訟や中傷をそそのかす。日本や韓国を見捨てて史上最高の同盟のしくみNATOを解体すると公言。その発言はまるでウラジミール・プーチンのような独裁者の観がある。
「ここまで不適格な候補者が大統領選に党大会で推挙された例は米史上にない。トランプ当選のリスクこそ米国にとって最大の国家安全保障上の脅威だ」
- まだそこまでいっていない。トランプは生きており、ブレグジットは起こった。
- 「トランプ現象とブレグジットは類似している」とスティーブ・カル(メリーランド大公共政策研究所長)は指摘する。「共通するのは利益を感じられない政策が決められているとの国民感情だ」としさらに「選択の絞り込み作業が民主的でないし、公共の利益の方を向いていない」ため国民の意見を反映していないとする。「そこで国民はトランプかサンダースかの選択に向かう」と政策こそ全く反対方向だが反体制派として共通する両候補に言及している。
- 言い換えれば、国民は政策に反対しているのではない。一度も意見を聞かれなかったことを問題視しているのだ。そもそも政策決定の仕組みに組み込まれていないのに負担だけ求められていると国民は感じている。エリート層はアメリカを世界を導く国にしておきたいと国民は感じとっており、意見を聞かれない間にグローバリゼーションは税負担増や歯止めのない移民受け入れ、国境警備の形骸化、失業、その他あらゆる不平不満につながると見ている。読者の中にはこれは孤立主義であり誤った主張だと一蹴する向きもあるかもしれない。
- 「国民の動向を孤立主義と片付けるのは正しくないでしょう。アメリカの特別視に反対しているのです」とカルは述べる。
- トランプへ票を投じる層はブレグジット同様に国粋主義の最右翼であり良き時代のアメリカが戻るのであればアメリカの力を一部放棄してもよいと考える。カルによれば調査対象のグループで「世界秩序の名のもとにあまりに多くの服従を強いられている」とか「本来より高い負担を強いられている」との主張が繰り返し見られるという。また「外交政策のエリート層の理想、アメリカの支配に対する自信過剰、強迫観念が結果高い出費につながっている」とも聞こえてくるという。
- 政界は今こそ目覚めるべき時だ。
- ご自分の国家安全保障観が正しいと信じるのであれば、国のためになっているということであり、全米有権者を納得させることができるはずだ。白書、会議、政策サミットなどの手段でワシントンなら有権者向きの仕事ができる。だがワシントンを一歩出ればだれも皆さんに耳を傾けない。国民に接触する方法が見つかれば国民の考えも変わるかもしれない。もっといいのは何もしないことだ。
- クルの調査チームは複雑な外交問題を一般大衆に尋ねても回答はほとんど無意味だと突き止めている。だがもし国民を教育すればその判断はエリート層の考えと同様になるとも判明している。クルは「市民内閣」を八州で組織し合計7千名を作業チーム同士の論争に参加させたところ良好な成果を得ている。
- 「参加者に争点を説明し、賛否の主張をすべて解説して総合的な観点で提言を求めた」のをTPPのような複雑な問題に応用した。その結果、クルによれば参加者は「実にうまく扱えること」ができたという。
- またこの手法を応用すれば真の世論の抽出に非常に有益だという。例としてイラン核交渉がある。クルによれば世論調査では「首尾一貫しない」回答が出ている。質問文を一言を変えるだけで回答結果は大きく変化したが、市民内閣で有権者は政策選択結果を信頼することが判明したという。
- この手法ならエリートがすべて決めているとの見方を解消できるのではないか。クルによればTPPでは「企業の利益の名目で中間層に犠牲を求めるのだから企業にとって都合のいいことに反対だ」との声があり、移民問題では米エリート層は低賃金労働で企業に利益を生み出す政策を作っているが、勤労家庭には益がない。だが一般国民に政策の背景を説明すれば、他国との協力も受け入れ、国連の仕組みを尊重し、他国が負担増を受け入れるのであればアメリカ第一の考えも一部放棄してもよい」と考えるようになるという。「トランプはこの手法を使って、有権者に話しかけている」とクルは述べている。
- たしかにそうだ。トランプは朝令暮改さながらに英国国民投票についての意見を変えている。「これは英国のヨーロッパ連合からの独立宣言であり、政策、国境、経済で主権を再び回復したのだ。来る11月には全米の有権者にも独立を再宣言する機会がやってくる。有権者は貿易、移民、外交それぞれで一票を投じることができ、国民第一が実現する。今あるルールは世界のエリート層がつくったがこれを白紙に戻し、国民の国民による国民のための政府を実現する機会がやってくる」
- お分かりだろうか。トランプは米国民に参加を求めているのであり、有権者には政策云々よりもこちらの方が重要なのだ。
- 「トランプの外交政策に有権者がそのまま賛成しているわけではない。アメリカ第一の姿勢は孤立主義の様相を秘めている」とクルは指摘する。「有権者はそれ以上を期待している。参加を望んでいるが、現状のやり方には満足していない。微妙な点です」
- 一部は可能だろう。今週末にTruConがある。毎年恒例のワシントンでの会合でトゥルーマン国家安全保障プロジェクトのメンバーが全国から集まり、政策目標を論じ、その後各地に戻り、リベラルより左寄りの外交、安全保障その他の政策を広めるのが目的だ。参加者はおよそ1,500名で次世代の公職者他指導層に福音を伝えるエリート層だ。左翼右翼を問わず国家安全保障問題を国民各層に伝える機会があることはいいことで、共和党OBのネットワークからかい離できるはずだ。だがそれだけでは十分ではない。
- もっと有益なネットワークがある。米軍である。軍が隊員勧誘に大金を使うのは理由がある。高校でのROTC勧誘、NASCARレース場、NFLの会場さらに全国各地の入隊勧誘事務所を通じ米軍の姿はどこでも見られるアメリカ精神を形作っている。これを安全保障でも行えないか。
- 全米児童は米政府の仕組みを学ぶ。だが米国のグローバルなリーダーシップを学ぶ機会はどこにもない。時事問題、外交政策、国際関係、世界のしくみ、NGO、中東問題、中国の台頭、経済問題、地球気候変動、海外市場、外交、外国の言語文化、限りなくリストはひろがるがすべて学習の必須項目に入っていない。
- クルの調査研究成果からもしアメリカ人が「市民内閣」を各種問題で経験すれば相当変化し投票行動も変わり安全保障のエリート層と近くなることこそあれ反発はなくなるという。
- そこで読者諸氏も驚いてばかりいるのはなく、ツィッター上で赤面するような意見を表明しEU離脱を求め読者の意見に反対するような有権者、あるいはトランプの視点でものごとを見る有権者を止めるべきだ。ツィッターは全米国民のほとんどは使っておらず、投稿することは自問自答するのと大差ない。
- 読者諸氏の安全保障面での指導性により多くの米国民(英国民)の信頼を集め関与させたいのなら、国民の基本的な考え方を変える何かを始めるべきだ。運動を始める、より効果的な発言をする、などだ。自説を強調し熱意をこめて話しかけるべきだ。だがこれは首都を離れた場所で行うことが肝要だ。いかにも驚愕しているとの演技はやめよう。■
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