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米海軍のめざすコンステレーション級フリゲート艦建造が難関に直面している。LCSの失敗などもあったが、米海軍は学べない組織になっているのか。

 


いいことづくめで構想し、契約交付に続き、実際の作業が始まると色々要求が出てきて変更となり、最終設計が固まらない中で試行として建造を進めるというのは米海軍がLCSで学んだ痛い経験のはずなのですが、フリゲート艦建造でも同じ轍を踏んでいるのはどういうことでしょう。そもそもフリゲート艦建造が必要となったのはLCSが期待外れだったこともありますが、アーレイ・バーク級駆逐艦でなくても用が済む任務に投入できる艦艇を配備して、アーレイ・バーク級の負担を軽減することが主眼点だったはず。であれば、要求性能も思い切って絞り込めたはずなのですが、フタを開けると駆逐艦並の艦容になってしまいました。これではヨーロッパ設計の元の設計は不要ですね。さらに建造面でも遅れがすでに予想されているとは。日本のフリゲート艦建造は順調に進んでいますが、いっそのことライセンス建造で日本から設計を売り込んではいかがでしょうか。とはいえ、これも一旦米海軍の手に鳴ると、色々改修され原型を留めない形になりそうですね。



The U.S. Government Accountability Office says that "unplanned weight growth" and design instability have been major factors in the huge delays with the Constellation class, and that the ship's top speed could take a hit as a result.

USN

海軍の新コンステレーション級フリゲート艦は混乱している

FREMMを原型とする基本設計への変更が止まらないことが大幅な遅れの原因となっており、「予定外の重量増加」でさらなる遅延につながりかねない

海軍が調達を目指すコンステレーション級フリゲート艦の建造は、予想外の総重量の増加のために遅延する可能性がある。海軍と造船会社フィンカンチエリ・マリネット・マリーンは、原型とした伊仏向けFREMM(Fregata Europea Multi-Missione)と比較して艦の構成が大きく変更された場合の影響に取り組み続けている。コンステレーションを既存のフリゲート艦をベースにする目的は、コスト、納期、リスクを削減することだったが、現実にはより大きく、より重く、予定より何年も遅れている。

重量増加、設計の不安定さ、コンステレーション級フリゲートに関するその他の問題についての新たな詳細は、議会の監視機関政府説明責任局(GAO)が昨日発表した報告書に記載がある。先週、海軍はフィンカンティエリ・マリネット・マリーンに10億4000万ドル強の新たな契約を結び、さらに2隻のフリゲート艦を発注したところだ。海軍は現在6隻のコンステレーションを発注中で、その1隻が建造中である。

同時に海軍は、コンステレーション級フリゲート艦USSコンステレーションの初号艦引き渡しが2029年になる可能性があることを確認している。これは、フィンカンティエリ・マリネット・マリーンがフリゲート艦の最初の契約を受けてから約9年後、建造開始から約7年後のことでもある。

A rendering of the future first-in-class USS <em>Constellation</em>. <em>Fincantieri</em>

A rendering of the future first-in-class USS Constellation. Fincantieri

コンステレーション級一号艦の現状に関するデータとして、「海軍は、2023年9月時点で、その時点で35.5%完成させる予定だったが、3.6%しか完了していない」とGAOは報告した。

GAOによると、「フリゲート引き渡しの新日程を評価する上で複雑な要因は、造船所が2023年10月にフリゲート設計の予定外の重量増加を報告したことである。「海軍は、構造、配管、換気、およびその他のシステムに関連する情報のギャップを含む、船舶設計の不完全な要素を承認することを決定し、海軍の要件を満たすために外国の設計を適応させることを過小評価し、この重量増加を推進している」。

ここで注目すべきは、2021年までに、コンステレーション級の設計は、原型FREMMと比較して、24フィート長く、3.5フィート強広くなることが明らかになっていたことだ。加えて海軍は当時、コンステレーション級の排水量は「余裕と将来の成長のために"約500トン増加すると述べていた。

An infographic from circa 2021 already showing significant differences between the <em>Constellation</em> class and its parent FREMM design. <em>USN via CRS</em>

An infographic from circa 2021 already showing significant differences between the Constellation class and its parent FREMM design. USN via CRS


GAOが今回公表した計画外の重量増が、海軍が以前に述べた重量マージンの増加の範囲内かは不明であり、本誌は海軍水上システム本部(NAVSEA)に詳細を照会中だ。

ともあれ、GAO報告書によれば、「重量増加を解決することは、現在進行中の造船所の設計活動に新たな次元を加えることになり、今でさえスケジュールに難があるため、予測可能性をさらに低下させる」。「海軍は2024年4月に、艦設計に影響を与える重量増加を解決するために、他の可能性のある方法の一つとして、フリゲートの速度要件の削減を検討していることを開示した」。

現在までのところ、海軍はコンステレーション級に対する速度要件を開示していないが、少なくとも26ノットの巡航速度を期待されていると伝えられている。フィンカンティエリによれば、イタリアのベルガミーニ級FREMMの「最大連続速度」と同じで、27ノットを超えるという。空母打撃群に追従するため、少なくとも30ノット前後の速度が必要だ。。

The Italian Navy's <em>Carlo Bergamini</em>. <em>Fabius1975/wikicommons</em>

The Italian Navy's Carlo Bergamini. Fabius1975/wikicommons

本誌はまた、重量増加の問題を解決・軽減するため検討中の他の選択肢の詳細について、NAVSEAに問い合わせている。

USSコンステレーションの建造は、少なくとも昨年時点では、最終設計が決まらないまま進められていた。

GAOによると、「設計の安定性は、特に最終的なシステム設計の理解を支援するために組み込まれた信頼できるベンダー提供の情報を使い、3Dモデルで基本的かつ機能的な設計が完了した時点で達成される」。しかし、「海軍は2022年8月に不完全な機能設計のままフリゲート建造を開始しており、船舶設計での慣行に反している」。


A graphical representation of assessed 3D modeling progress on the Constellation class design as of October 2023. <em>GAO</em>

A graphical representation of assessed 3D modeling progress on the Constellation class design as of October 2023. GAO

GAOによると、作業開始から1年後の2023年8月時点で、コンステレーションの機能設計と3Dモデルは、それぞれ92パーセントと84パーセント完成していたと評価されている。

GAO's assessment of progress in finalizing the<em> Constellation</em> class' core design and the associated 3D model since August 2022. <em>GAO</em>

GAO's assessment of progress in finalizing the Constellation class' core design and the associated 3D model since August 2022. GAO

USNI Newsによると、コンステレーションとFREMMの設計の共通性は、15%にまで低下している可能性があるという。GAOによると、これにはディーゼル電気とガスタービンを組み合わせた推進システムと関連する機械制御システムの大幅な変更が含まれており、「造船会社によると、コストが増加し、統合リスクが発生した」のだという。

加えて、「海軍は、(米国固有の新任務)システムに対応し、海軍の居住性と生存性要件を満たすために、親船型の設計を変更した。また、「海軍は、(米国固有の新しい)ミッション・システムに対応し、海軍が求める居住性と生存性での要件を満たすため、原設計を適合させた」とGAO報告書は指摘している。本誌では、今年初めに、Mk 41垂直発射システム(VLS)装備のサイズにまつわる疑問を中心に、コンステレーション級に期待される能力について深く掘り下げた。

GAOは、「計画外の重量増加は、短期的(すなわち、艦隊への引き渡し時)に、また長期的には想定される数十年の耐用期間に初期能力を変更・改善しようとする際に、艦の能力を損なう可能性がある」と警告している。

成長のための余裕を持たせることは非常に重要である。この先コンステレーションに、指向性エナジー兵器やその他の兵器、その他の能力を統合する話はすでに出ている。そうでなければ、耐用年数にわたって艦船を運用し続けることは、経済的にはるかに困難になる。

GAOはまた、海軍の沿海域戦闘艦(LCS)プログラムに関する過去の経験も挙げている。LCSの両サブクラスの初期建造は、一般にコンカレンシーとして知られるプロセスとして、確固とした設計なしに意図的に開始された。その結果、インディペンデンス級とフリーダム級の最初の2隻は、その後の艦船とは大幅に異なる設計となった。USSフリーダム(LCS-1)、USSインディペンデンス(LCS-2)、USSコロナド(LCS-4)はすべて退役した。その中で最も古いフリーダムは、13年しか供用されなかった。海軍は現在、両サブクラスのLCSを今後数年でさらに退役させる方向で動いている。

海軍がコンステレーション級フリゲート艦の取得を決定したことは、LCSで期待に応えることができなかったことへの大きな反撃とみなされている。すでに述べたように、FFG(X)プログラムとして当初知られていたものの中核要件である、確立ずみの生産中の親設計を使用することは、コスト増加やその他の技術的・スケジュール的リスクを抑制するのに役立つはずであった。

GAOの新しい報告書が発表される前から、コンステレーション級フリゲート艦の開発・建造の進捗状況やその欠如に対する批判が高まる中、海軍は責任の大部分を造船所の労働力問題に押し付けている。コンステレーション級の生産を支援するため別の造船所を導入する話もある。

「コンステレーション級)フリゲート艦の場合、率直に言って、ウィスコンシン州での採用と維持の問題だ」と、カルロス・デル・トロ海軍長官は、今月初めの上院軍事委員会公聴会で語った。

しかし、同委員会の共和党筆頭であるミシシッピ州選出のロジャー・ウィッカー上院議員は、同じ公聴会の冒頭発言で、異議を唱えていた。

「コンステレーション級フリゲート艦の建造は3年遅れ、引き渡しには10年近くかかるだろう。海軍が要件を安定させられないことが主な原因だ。要件の70%近くは、海軍が契約を結んでから変更されている。「このため、今日の結果は驚くことではない。これは業界の問題ではない。上級幹部がプログラムを管理できなかったということだ。これは不正行為であり、時間と資源のひどい浪費だ」。ウィッカー上院議員のコメントは、GAOの報告内容と一致している。

海軍がフィンカンチエリ・マリネット・マリーンとともに、コンステレーション級の重量やその他設計要素を最終的にいつ安定させることができるのか、また、その結果、艦の最高速度が低下するのかどうか等非常に多くのことが未知数のままだ。■


Navy's New Constellation Class Frigate Is A Mess | The War Zone

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED MAY 30, 2024 9:14 PM EDT

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コメント

  1. ぼたんのちから2024年6月4日 10:07

    記事では新型フリゲートの建造遅れがレポートされているが、問題はこの艦種だけではない。米海軍の新造、建造・補修計画全般及びその品質は惨憺たるありさまで、近い将来起きるかもしれない米中戦争で、米海軍は、戦う前から白旗を揚げるつもりのようだ。
    深刻なのは、ほぼ全ての主力艦種のほぼ全ての計画が遅延していることである。これではCCP中国の習がいくら凡庸でも、軍事的冒険の誘惑にかられるだろう。
    これらの問題一つ一つに言い訳が付いているが、問題のおおもとは組織的なものであり、根本的問題は、米海軍首脳部がだらしないからだ。改善しようとしているように見えない。
    これは意識的なサボタージュかもしれないし、政治的な思惑があるのかもしれないとも思える。汚職が絡んでいるかもしれない。10年前位までPLANとの闘いなんて起きないと米海軍幹部の多くが考えていたようだが、これは慢心以外のなにものでもない。甘い烈度の対テロ戦争に漬かり過ぎたのか?
    もっと深刻であるのは、米政権が問題視していないこと。老いぼれジョーは、ボケてる場合でないのだ。戦争が起きないことを祈る!

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