ウクライナの平和にとって必要条件はプーチンの退場であるという明快な主張で、ロシアにとってもこの人物がトップにいることが最大の不幸となります。こういった人物が次々と現れ権力の座につくロシアと言う国家そのものに問題があるのでしょう。世界にとっても不幸なことなのですが、我々には言論の自由がありますのでこうした趣旨を発表しても怯えることはありませんが、ロシアではそうはいかないのでしょう。
ウクライナ戦争終結にはウラジーミル・プーチンの退場が条件だ
端的に言えば、ロシアによるウクライナに対する大量虐殺戦争は、クレムリンの自選大統領ウラジーミル・プーチンが権力を維持する限り、終わることはありえないし、終わることもないだろう。好きなだけロシアと話し合ったり、脅したり、おだてても、プーチンが去らない限り、物理的にせよ政治的にせよ、平和は近づかない。
ロシアの最高指導者をここまで悪く見る理由は4つある。
まず、彼の言うことは何も信じられない。プーチンは繕いのマントに完全に包まれているため、彼の発表が真実かどうかを判断することは不可能だ。ロナルド・レーガン大統領は、アメリカ人にソビエトを「信用するが、検証せよ」と命じた。プーチンの場合は無意味だ。彼は信用できないし、西側諸国が検証したと主張するロシアのいかなる違反も西側諸国のせいにするのは確実だ。
しかし、プーチンがロシア帝国を再確立し、ウクライナを破壊する決意をしていることは確かだ。結局のところ、彼の繕った主張にもかかわらず、彼はすでに両方の目標を追求しているのだ。欧米の学者やアナリストの中には、ウクライナがNATOに加盟する可能性が遠のいたため、プーチンが戦争と大量虐殺で対応せざるを得なくなったと考える者もいまだにいる。実際には、はソビエト帝国崩壊以来のクレムリンの課題は再帝国化だった。
ボリス・エリツィンは、チェチェンとの戦争、トランスニストリアの占領、独立国家共同体の推進、非ロシア諸国に住むロシア系少数民族のトロイの木馬としての活用に力を注いだ。プーチンは政権を握った直後から、第2次チェチェン紛争での大量虐殺、2008年のジョージア侵攻、2014年のクリミアとドンバスの占領、2022年のウクライナに対する全面戦争と、さらに手を広げてきた。このパターンは明らかであり、プーチンやその同志、プロパガンダ担当者たち、つまりプーチン政権全体による大量虐殺的な反ウクライナのレトリックも同様に明らかである。
プーチンが真剣な交渉に応じようとしない第三の理由は、戦争と完全に自己同一化していることにある。ロシアの最高指導者は、自分の肉体的・政治的生存が戦争に依存していることを十分に理解している。プーチンが戦争を始めたのだから、自分のものなのだ。うまくいけば、プーチンは強く見える。ロシアの歴史には、弱い指導者に不幸なことが起こるという教訓的な例がたくさんある。
プーチンは、ウクライナの降伏以外の交渉をする余裕はない。なぜなら、それ以外の交渉は、エリートや大衆の間で、経済を破壊し、100万人の兵士を失い、ウクライナの居住不可能な領土のために西側のお気に入りの水飲み場から母なるロシアを孤立させることのコストと知恵を問うことになるからだ。
最後に、プーチン自身の自己認識だ。プーチンは金正恩になりつつあり、ロシアは北朝鮮になりつつある。リビエラが立ち入り禁止になり、隠者王国が彼らの唯一の遊び場になると思うと、ロシア専門家たちがどれほどもがき苦しむか想像に難くない。
しかし、そんなことはどうでもいい。金正恩のように、プーチンは自分が支持すると主張する人々の好みなど気にしていない。金正恩と同じように、彼は国民が軍隊式に整然と並べられ、同期して腕を上げ、旗を振り、満面の笑みを浮かべていることを望んでいる。プーチンは、平壌に向かう途中や平壌で、自分と金正恩の巨大な肖像画を目にして感激したに違いない。
両国の偉人が署名した包括的戦略的パートナーシップ協定は、「この協定の一方の当事国に対する侵略があった場合に相互支援を提供することを規定」している。
ウクライナに対するロシアの大量虐殺戦争に北朝鮮が正式に関与することを予告するものであり、金正恩が韓国に挑発行為を行い、自分たちが先に攻撃したと主張した場合、ロシアが戦闘に参加しなければならなくなる可能性を提起するものだ。プーチンはきっと前者の部分が好きなのだろう。後者の部分にはあまり乗り気でないはずだが、彼の戦略的失策の傾向を考えると、そうではないかもしれない。
この合意は、ロシアの北朝鮮化とプーチンの金正恩化を象徴するものでもある。そして、金正恩が先天的に韓国と誠意ある交渉ができないように、プーチンも先天的にウクライナと誠意ある交渉ができない。
平和を考えるためには、プーチンは退場しなければならない。皮肉なことに、ロシアが北朝鮮に似てくれば似てくるほど、そしてプーチンが金正恩になればなるほど、この二重の変容に反対する可能性は高くなる。
世論調査によれば、ほとんどのロシア人はロシアの現状に満足しているようだ。これはロシアにとって悪い兆候だ。しかし、ロシアのエリート層は西側諸国という禁断の果実を味わい、彼らや彼らの子供たちにとって北朝鮮が選択肢にないことを知っている。このことは、プーチンと彼の金正恩的な願望にとって不吉な兆候である。
唯一の疑問は ロシアのエリートたちは、いつになったらロシアに忍び寄る北朝鮮化に何か手を打つのだろうか?プーチンの存続が自分たちの存続と相容れないといつ決断するのか?次のエフゲニー・プリゴージン、ウラジーミル・レーニン、ファニー・カプランは誰になるのだろうか?
北朝鮮化の代償は極めて高いことを、ウクライナと西側諸国は、戦場でロシア人に思い知らせ続けるべきなのだ。■
About the Author: Dr. Alexander Motyl
Dr. Alexander Motyl is a professor of political science at Rutgers-Newark. A specialist on Ukraine, Russia, and the USSR, and on nationalism, revolutions, empires, and theory, he is the author of 10 books of nonfiction, including Pidsumky imperii (2009); Puti imperii (2004); Imperial Ends: The Decay, Collapse, and Revival of Empires (2001); Revolutions, Nations, Empires: Conceptual Limits and Theoretical Possibilities (1999); Dilemmas of Independence: Ukraine after Totalitarianism (1993); and The Turn to the Right: The Ideological Origins and Development of Ukrainian Nationalism, 1919–1929 (1980); the editor of 15 volumes, including The Encyclopedia of Nationalism (2000) and The Holodomor Reader (2012); and a contributor of dozens of articles to academic and policy journals, newspaper op-ed pages, and magazines. He also has a weekly blog, “Ukraine’s Orange Blues.”
Want to End the Ukraine War? Vladimir Putin Needs to Go - 19FortyFive
Put simply, Russia’s genocidal war against Ukraine cannot and will not end as long as the Kremlin’s self-elected president, Vladimir Putin, remains in power.
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この記事の「プーチンの退場が条件」に賛同するも、それが起きるのは、極めて近い将来でなく、人的資源と装甲車両の欠乏が深刻になり、戦争を継続できなくなる2年先くらいまで待たねばならぬかもしれない。
返信削除老いたる陰謀家であるプーチンは、戦争の早期終了計画の失敗を戦争の勝利で埋め合わせようと焦っている。このためますます多くの人員やあらゆる装備を戦場につぎ込んでいる。だが、早晩限界が来る。
ウクライナは、概ね理想的な戦いを行い、ロシアの出血多量によるショック死を期待している。
しかし、この戦争で最も悪どい奴なのは、老いぼれバイデン政権の連中であるかもしれない。戦争を止められる、そして戦争が起きたとしても早期に停戦させられたのは、米政権にほかならない。
悪魔的に考えれば、この戦争によってロシアを徹底的に弱体化させ、あわよくば分裂崩壊させるチャンスと考えれば、戦争を長期に継続させることがベストである。老いぼれバイデン政権はこのように戦争をコントロールしようとしているように見える。ここには人命や人権は、関係ない。もし、ロシア内にクーデタ等、プーチン排除計画に気が付いたなら、米国はプーチンにそれを知らせるかもしれない。実行されたら、戦争が終わってしまうからである。
また、ウクライナ戦争の方式は、米国の新たな世界戦略の一部のモデルになっているとも思える。最近、台湾戦争時の新たな戦術が提案されているが、米国の戦略と戦術が、今、大きく変わろうとしているのだろう。そのためのデータ・資料採取に、米国は、いましばらくの戦争継続を望んでいるのかもしれない。