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ホームズ教授の主張 長期戦になれば、ロシア、ウクライナそれぞれ有利不利になる。ウクライナに勝機はまだある。

  

 

クライナでどちらが優勢なのか。

 ロシアの攻勢がいつまで続くのか、成功するのかは、外交政策の専門家やコメンテーターでホットな話題となっている。無益な話題とまでは言わないが、自信過剰が目につく評価には要注意だ。戦史を紐解けば、時間経過とともに作戦が頓挫する傾向がわかる。停滞することもあれば、運が逆転することも稀ではない。勢いを持続させる、あるいは衰えた勢いを取り戻すには、熟練した軍事装備だけでは足りず、創意工夫と強い個性を持つリーダーシップが必要だ。

 

 

 ロシアはウクライナに勝利をおさめる運命ではない。実際、ロシアの攻勢は初日から失速の兆しを見せていた。劣勢でも戦闘力を最大限に発揮すれば、潜在能力を浪費する相手を打ち負かせる。

 ウクライナに勝機はある。

 軍事の天才カール・フォン・クラウゼヴィッツは、戦場のリズムを神秘的な言葉づかいで説明し、軍事的成功が政治的成功にどう関係し、役立つかを示した。提唱した考え方は「絶頂点」であり、戦争の運命が一方または両方に、劇的な方法で変化し始める点を指す。一方の敵対勢力の相対的な強さが頂点に達し、他方の敵対勢力が底を打ち回復に転じることもある。あるいは、以前は強かった競争相手が弱くなる転回点が訪れるかもしれない。

 まず、「勝利の絶頂点」だ。クラウゼヴィッツは、攻撃側が奇襲性、主導権、最初の打撃地点を選択する特権などにより、軍事バランスで最初に優位となると仮定している。しかし同時に、クラウゼヴィッツは戦術的防御こそ最強の戦争形態と考えた。そのため、攻撃側の軍事的優位は時間経過とともに頂点に達し、減少に転じる。しかし、政治的優位性(勝者に有利な交渉力)は、頂点に達した後、減少し始めるので、攻撃者が防御者に意思を押し付ける能力も減少する。

 これがクラウゼヴィッツのパラドックスだ。攻撃側は一般に、望むものを手に入れようと、勝利の頂点(軍事的優位の最大限界点)を超えても攻撃を続ける。しかし、攻撃が続けば、立場は弱くなる。戦果を得るため戦場の優位を長く保つには、名将の技が必要だ。

 政治的には、ロシアは絶頂に達しているのか。プーチン大統領が渇望していた電光石火の勝利に失敗したことで、ロシアの軍事面での定評は汚された。モスクワの脅威を恐れる国は減り、支援を求める外国人指導者は少なくなる。パワーポリティクスでは評判がすべてであり、ロシアは自らのブランドを傷つけた。

 さらに、ロシアは世界中の主権国家の敵となり、1945年サンフランシスコで確立された国連主導の世界秩序にふさわしくない存在だと露呈してしまった。ロシアは、中国に勝るとも劣らぬ無法国家だ。ウクライナで、ロシアは力技で勝つかもしれない。しかし、ロシアの政治的地位は低下し、永続的な政治的利益を得られなくなった。

 攻撃側の運命がいつ頂点に達するかで、防御側に影響が出る。ロシアは、作戦初期に勝利の絶頂点を超えてしまった可能性がある。ウクライナ軍は、ロシアと真正面での戦いを拒否し、非正規戦にもちこんでいる。弱者が強者の体力と意志を消耗させる戦略である。戦闘が長引けば長引くほど、国際的な非難が高まり、ロシア国内でも戦争への抵抗も大きくなる可能性がある。

 最終的には、妥協の和平が成立するかもしれない。

 防衛側の同盟国やパートナーも、侵略側が勝利の頂点に達するまで後押しできる。国際制裁は、侵略者の装備を時間をかけ減少させる。ウクライナの場合は対戦車兵器を提供することで、戦力均衡を保つ。ロシアの軍事優勢は部分的に衰え、モスクワが納得できる勝利を実現する能力も低下する。同盟関係の維持管理がウクライナの今後に極めて重要だ。

 クラウゼヴィッツがいう絶頂点の第二は「攻撃の絶頂点」だ。攻撃側が勝利の絶頂点を超えて、行き過ぎた行動を続けると、優位度の差は日に日に小さくなる。最終的にゼロになり、攻撃側は敵地の奥深くで弱者として戦うことになる。戦場の優位度から交渉力が生まれるならば、攻撃側の和平条件は有利でなくなる。

 兵員数の大きな格差を見れば、ロシアが攻撃の絶頂点をオーバーシュートするかは疑問だ。しかし、不可能でもない。ジョージ・ワシントンの大陸軍は、アメリカ独立戦争初期に同様のミスマッチに直面したが、巧みな同盟政治と相まって、不規則手法により、長い闘争の末にアメリカの植民者を勝たせた。毛沢東の赤軍は、国民党軍が中国共産党を絶滅寸前まで追い詰めた長征から生還した。ウクライナには状況は不利だが、生き残る可能性はある。

 つまり、戦力を大量投入せず、分散させ、侵略者に戦略的勝利を与えないようにし、影響力のある同盟国や友好国を取り込む。このような戦闘の干満の力学を、戦略理論家エドワード・ルトワックEdward Luttwakは、戦争の「逆説」論理と呼ぶ。指揮官は部隊を過剰なまで展開する傾向があり、作戦は頂点に達するまで続く。勝者が敗者となり、政治的目的を達成できなくなる可能性が生まれる。

 ロシア・ウクライナ戦争に関して、解説者には、ロシアの武器を揶揄したり、あるいはロシアの巨大な力に対抗するウクライナが生き残る可能性を絶望視する傾向がある。クラウゼヴィッツやワシントン、毛沢東なら、こうした早計かつ歴史の流れと異なる判断を嘲笑うだろう。おそらく、今後数週間は両当事者にとり、浮き沈みの激しい展開となるだろう。

 本当に終わるまで終りはない。

 

Yes, Ukraine Could Beat Russia - 19FortyFive

ByJames Holmes

 

A 1945 Contributing Editor, Dr. James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.” The views voiced here are his alone.

 


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