IAF
イスラエルのF-35Iステルス戦闘機が初の交戦でイラン無人機二機を撃墜したと同国が発表した。無人機はイスラエルに接近する途中で、撃墜は昨年のことという。F-35が空中で脅威対象を撃破したのは初めてで、イスラエルが同機運用を迅速に拡大する中での展開となった。同国では同機は「アディール」(強者)と呼ばれる。今回の事件は高額なハイエンド戦闘機やミサイル装備に対し低価格だが普及進む無人機の対照をあらためて浮き彫りにした結果となった。
イスラエル国防軍(IDF)からは映像も公開されており、無人機の一機が攻撃を受けている様子をF-35Iが撮影した。映像が同機の電子光学標的捕捉装備(EOTS)あるいはヘルメット装着のディスプレイで撮影されたものか不明だが、F-35が実戦に投入されたのを見るのは今回が初めてだ。
事件は昨年3月に発生していたが、IDFは昨日に詳細を発表した。その説明によれば、イスラエル空軍(IAF)のF-35I編隊がイラン無人機二機を迎撃し、「イスラエル到達前の」「イスラエルから遠隔地で」両機を撃墜したとある。
無人機の撃墜地点は不明だが、IDFでは迎撃は「周辺国との連携の下で行い、イスラエルへの無人機侵入を防いだ」としている。無人機編隊はイラクあるいはシリアに展開するイラン代理勢力が発進させ、ヨルダン上空を通過したのではないか。IDFは同様の事態が以前にもあったことを認めている。
報道を総合すると無人機2機はともにF-35Iに撃墜されたが、残る無人機は電子戦装備で撃墜された。無人機編隊は終始、イスラエルの地上部隊が追尾していた。
無人機はガザ回廊へ武器を運搬していたとIDFは発表し、パレスチナで活動するハマス集団への搬送を狙っていたとする。ハマスはイランの多大な支援を受けている。
IDF
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IDFは撃墜した機体をシャヘドShahed-197としているが、これまで未知の機種名称だ。映像で分かる範囲ではシャヘド-161ファミリー全翼機無人装備と関係があるようだ。イランは米RQ-170センティネルをもとに同無人機を製造したといわれるが、機体は米製より相当小型でプロペラ推進であることが映像でわかる。
発表を受けて国防相ベニー・ガンツBenny Gantzは「イランの侵略はイラン国内あるいはイラン代理勢力を通じてを問わず、世界の平和や地域内安定への脅威であることをあらためて教えてくれる。当然ながらイスラエル国にも脅威である」との談話を発表した。
撃墜の二ヶ月後にイスラエルはGuardian of the Walls作戦を展開し、ガザ回廊のハマス拠点攻撃を行った。
他方で2018年2月にはシリア国内でイラン軍がイスラエルに向け武装無人機を発進させ、イスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフ他はこれを攻撃用途と認識し,IAFのAH-64アパッチヘリコプターにより撃墜したが、この際の反撃でIAFはF-16Iの1機が撃墜され、F-15にも損傷が発生した。
今になってF-35Iによる無人機撃墜を公表した意図は不明だが、ウィーンでのイラン核交渉と関連があるのかもしれない。交渉ではイラン向け制裁の解除が論点といわれる。
同時に、上記の事件や、イスラエルがらみの攻撃に無人装備が使用されている中で、イラン無人機の潜在的脅威が、最近より鮮明になっている。昨年7月にオマーン沖で発生した、リベリア船籍イスラエル運航のタンカー「M/T Mercer Street」への無人機による襲撃攻撃で死亡者が出たのも一例だ。米中央軍は、この攻撃に「イランが積極的に関与した」と断定した。
特に中東で、小型無人機の脅威が高まっている。しかし、域内の各軍が比較的低価格の無人機を標的にハイエンド装備を使用している状況が改めて注目されている。
サウジアラビアはこれまで、フーシ派が運用する無人機の脅威に対し、AIM-120高性能中距離空対空ミサイル(AMRAAM)で対処してきた。米空軍のAIM-120Cの調達単価は約100万ドルと予想され、それに加え航空機取得、メンテナンス、訓練、基本的なランニングコストなど、その他費用もある。昨年末には毎週10発近い弾道ミサイルや無人機による攻撃に直面していたサウジアラビアにとって相当の出費となる。
イスラエルのF-35Iがイランの無人機2機の撃墜にどの武器を使用したかは分からないが、同型機もAMRAAMと短距離ミサイルAIM-9Xサイドワインダーを装備しており、後者の米空軍調達価格は約47万5000ドルである。しかし、小型無人機の発する熱信号は限られるため、ような赤外線誘導ミサイルAIM-9では、AIM-120含むレーダー誘導兵器と比較して、撃墜の信頼性が低いと考えられる。
F-35Iについては、イスラエルでの戦闘記録に、空中戦での撃墜成功が追加された。この事件は、IAFが同ステルス機を地上攻撃だけでなく、空中交戦にも使用する意向を強めていることを示唆している。イスラエルはF-35の実用化で最前線に立っており、2018年5月には、攻撃作戦に同機を使用する初の国になったと発表している。
イスラエルはF-35Iを50機購入しており、さらに25機を追加する可能性がある。期待されていたF-15戦闘機の追加発注が実現しないため、F-35Iは今後数十年にわたりイスラエル航空戦力の最前線に立つことになりそうだ。国境を越え優先度の高いターゲットを攻撃できるユニークなステルス攻撃機としてだけでなく、昨年3月の事件で、ハイエンドの同機がイスラエル領を脅かす無人機の撃墜にも今後も動員されそうだ。■
Israel Shows The F-35's First Aerial Kill In Newly Declassified Video
The incident involved an Iranian flying-wing drone carrying small arms to Hamas fighters over a very long distance.
BY THOMAS NEWDICK MARCH 7, 2022
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