スキップしてメイン コンテンツに移動

2023年度国防予算原案で4%増7,730億ドルを提案したバイデン政権には、現実の脅威、インフレに加え、議会の反発が待ち受ける。23年度予算については今後もお伝えします。

  

 

 

ワイトハウスが3月28日発表した計画では、国防総省の2023年度支出は4%増となる。昨年政権が希望した額を大幅に上回るが、議会共和党はこれでも満足しないだろう。

 政府高官によれば、総額7,730億ドルにはロシアと戦うウクライナ支援資金、軍用機や核抑止システムで新たな投資、「北朝鮮、イラン、暴力的過激派組織を含む持続的脅威」に対抗する資金を含む。

 この支出計画は、2022年度レベルより300億ドル以上(4%)増加になる。

 昨年、ホワイトハウスは3%以下の増額を要求し、共和党および穏健派民主党との1年にわたる争いを引き起こした。最終的に国防総省予算は増額された。

 要求額が増えても、議論は繰り返される公算が強い。先週、上下両院の共和党議員40人が、インフレ進行と世界的な脅威の増加を受け、国防予算で少なくとも5%増額をホワイトハウスに要求した。ミシシッピ州選出のロジャー・ウィッカー上院議員Sen. Roger Wickerはホワイトハウス要求を「戦略的に不健全」とし、ロシアや中国など脅威を抑止するべく原案を変更すべきと主張した。

 「課題に対応するため、各軍トップは、より多くの要求をしている。艦船、飛行機、兵器、衛星、そして訓練の充実を求めている」(ウィッカー議員)。「バイデン大統領は、逆に、任務遂行に必要な資源を減らそうとしている。戦略的に不健全であり、将来の紛争や我が国への脅威のリスクを増大させる可能性がある」

 月曜日の声明でバイデン大統領は、予算提案について「国家安全保障への歴史上最大の投資の一つで、世界で準備、訓練、装備がもっとも整った軍であり続けるため必要な資金」と呼んだ。

 ホワイトハウス当局者は、予算案が承認されれば、2年間で国防費が9.8%増加することになり、「米国の抑止力を維持・強化し、重要な国益を推進するため必要な資源」を提供できると指摘した。

 研究、開発、試験、評価用予算の重視は続き、9.5%増1,301億ドルを「過去最大」と称している。内訳は極超音速兵器に47億ドル、マイクロエレクトロニクスと5Gネットワークに33億ドル、バイオテクノロジーに13億ドルを含む。

 議会は「旧式装備」の処分計画を昨年破棄したが、政権は再び同様の提案で27億ドル分の再優先化を求めている。空軍は150機を退役させ、MQ-9の100機をその他政府機関に移管し、海軍は24隻を退役させる(16隻は耐用年数前に退役させる)。

 予算案では、欧州抑止力構想に62億ドル、ロシア侵攻を食い止めるウクライナ向けに3億ドルを要求している。国防総省は、中国が依然「ペースメーカー」であることから、インド太平洋地域の抑止力構想に61億ドルを要求している。

 また、核3本柱の近代化予算では、核関連事業に344億ドルを計上する。内訳は、コロンビア級潜水艦に63億ドル、B-21爆撃機50億ドル、地上配備型戦略的抑止力と呼ばれる次世代大陸間弾道ミサイル36億ドル、核指揮統制システム48億ドルを投じる。

 国防総省は、マイクロエレクトロニクスに33億ドル、極超音速兵器と指向性エネルギー兵器のサプライヤー拡大に6億500万ドル、「重要材料」に2億5300万ドル、鋳鍛造に480億ドル、バッテリーとエナジー貯蔵に43百万ドルの投資を提案している。予算概要でホワイトハウスは国防産業基盤を技術革新の源泉としてアピールしている

 「DODは、イノベーションを進め、高価値技術を生み、戦略的競合相手への米国の優位性を確保し、連邦政府の研究開発全体で高賃金雇用を創出する重要な役割を果たしている」とホワイトハウスは総括している。

 「新予算は、イノベーション推進につながる画期的技術に投資し、防衛技術産業基盤を支援し、米国の技術的リーダーシップを確保し、次世代防衛能力の開発を支えるため、防衛研究、開発、試験、評価資金に優先順位をつける」と、述べている。

 国防当局は、予算提案に購買力低下の反映を認めている。国防総省は、燃料価格上昇で1月中旬に予算を使い切った。

 バイデン大統領は22年度の国防・国家安全保障全体に7,530億ドルを要求したが、議会は最終的に7820億ドルへ増額した。

 キャピタル・アルファ・パートナーズのバイロン・キャランByron Callanは、共和党の目標は国防・安全保障費全体で8,750億ドルと見ている。■

 

Biden requests $773 billion for Pentagon, a 4% boost

By Joe Gould and Leo Shane III

 Mar 29

 

Megan Eckstein and Stephen Losey contributed to this report.

About Joe Gould and Leo Shane III

Joe Gould is senior Pentagon reporter for Defense News, covering the intersection of national security policy, politics and the defense industry.

Leo covers Congress, Veterans Affairs and the White House for Military Times. He has covered Washington, D.C. since 2004, focusing on military personnel and veterans policies. His work has earned numerous honors, including a 2009 Polk award, a 2010 National Headliner Award, the IAVA Leadership in Journalism award and the VFW News Media award.


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...