スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナ危機を横目に世界の安全保障環境に対応能力不足を痛感する米軍は、内部改革により軍能力を引き上げる必要を認識。ただし、時間があるのか。

 

 

シアによるウクライナ侵攻を受け、欧州に兵力を投入する中、米軍は、即時性、深刻性、危険性で程度が異なっても、同時に複数の課題に対応が求められている。

 

ウクライナやアジアの紛争により安全保障環境が悪化している今、国防総省は官僚組織を整理すべき時期に来ており、2つの事実を直視するのが出発点だ。まず、国防総省は敵のスピードに呼応した革新と投資を行っていない。第二に、国防総省と上下両院議員多数は、長期的な競争力と引き換えに短期的なリスクを受け入れることには消極的だ。

 

前国防次官(政策担当)のミシェル・フローノワMichèle Flournoy は今週、議会で「(国防総)省全体のイノベーションへの刺激で一定の進展があったものの、ペースや規模は必要なレベルに至っていない」と述べたが、控えめに言っても、これが事実だろう。

 

新興・先端軍事技術全般で米国は遅れをとっており、競争優位性を失う危険性があると国防指導者は警告してる。空軍で初のソフトウェア担当官だったニコラス・チャリアンNicolas Chaillan は国防総省が全領域統合指揮統制(JADC2)で予算措置を欠き、米軍が「関連性のあるペースでタイムリーに能力を提供できる」よう機敏に行動する能力が阻害されているとして昨秋辞任した。

 

その後のインタビューでチャリアンは、「今後15年から20年は、中国に勝てない」と結論づけた。中国との戦いはすでに終わっている。国防総省の統合人工知能センターの責任者マイケル・グローエン中将Lt. Gen. Michael Groenは、軍の人工知能ツール活用は、今の所敵対国に勝っていると主張し、反論した。しかし、同中将は、革新と企業買収のペースが憂慮すべきものと認め、「軍内部で価値観の変化を起こす必要がある」と述べた。

 

国防総省の極超音速兵器開発計画も、中国やロシアに遅れをとっている。1月、米宇宙軍のデビッド・トンプソン大将Gen. David Thompson は、国防総省は「多くの面での遅れをきわめて迅速に取り戻さなければならない」と強調している。

 

中国は核兵器近代化を進めており、元統合参謀本部副議長のジョン・ハイテン大将Gen. John Hytenは「今ある(大陸間弾道ミサイル)サイロ400基の近代化に10~15年かかる」「ただ、中国はほぼその数を一晩で建設している」と警告している。

 

各軍が同様な問題に苦しんでいる。海軍では、海軍情報部隊の責任者であるケリー・エシュバック中将Vice Adm. Kelly Aeschbachが今月初め、「適応速度が不十分で心配」と述べ、海軍組織に「本当に革新的に変わるチャンス」が与えられていないと語った。

海兵隊は中国との戦略的競争に向け再編成の取り組みが評価されているが、戦闘開発・統合担当の新任のカーステン・ヘックル中将Lt. Gen. Karsten Hecklも警鐘を鳴らしている。「もし、今の対応が十分に速いと見る人がいれば、それはおかしい」と、彼は2月の会議で述べた。

 

フランク・ケンドール空軍長官Secretary of the Air Force Frank Kendallは、「現有のレガシーシステム維持にこだわると、十分に資源を有する戦略的な競合相手には勝てない」と警告している。ケンドール長官は、議会と協力し進むべき道を見出したいと前向きだ。

 

しかし、長官が相手とする議会は、期限から半年近く経っても連邦政府の通常予算を通過させられない議会だ。

 

目まぐるしく変わる安全保障の動きと、急変する敵の増強を前に、国防総省が、緩慢に動くのでは言い訳がつかない。

 

ハイテン大将は、成功が確実でない限り、高リスクや新しい取り組みを進めない文化が国防総省にあるのを憂慮している。同大将は、制服組に権限を与えることを第一の解決策とした。「賢いリスクを冒すのを許容しなければならない」と同大将は昨年秋述べた。

 

ケンドール長官もこの考え方に賛同しており、「中国やロシアの抑止には、必要なリソースと、現時点のリスクバランスを取ることで将来の大きなリスクを回避する意思がなければ、米国は1チームとして勝てない」と述べていた。

 

米国は同盟国やパートナーは、各地で戦略的競争相手に直面している。ロシアによるウクライナ侵攻は正当化できないが、欧州安全保障の秩序を乱しており、米軍は遅れを取ったり、鈍い反応を示す余地がなくなっていることを思い知らされている。■

 

How the Ukraine Crisis Could Make the US Military Stronger - 19FortyFive

ByMackenzie EaglenPublished2 days ago

 

 

Now a 1945 Contributing Editor, Mackenzie Eaglen is a resident fellow in the Marilyn Ware Center for Security Studies at the American Enterprise Institute. You can follow her on Twitter: @MEaglen.

More about Mackenzie Eaglen: While working at AEI, Ms. Eaglen served as a staff member on the National Defense Strategy Commission, a congressionally mandated bipartisan review group whose final report in November 2018, “Providing for the Common Defense,” included assessments and recommendations for the administration. Earlier, Ms. Eaglen served as a staff member on the 2014 congressionally mandated National Defense Panel, established to assess US defense interests and strategic objectives, and in 2010 on the congressionally mandated bipartisan Quadrennial Defense Review Independent Panel, which evaluated the Pentagon’s defense strategy. She is also one of the 12-member US Army War College Board of Visitors, which offers advice about program objectives and effectiveness.

 



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...