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プーチンがドイツの軍備増強に道を開いた。緑の党まで国防予算増に賛成し、「平和主義」は消えた。これが現実政治の姿。翻ってGDP1%枠突破もできない日本のリベラル層はどうする?

 Chancellor Scholz meets with Putin.

ショルツ首相がプーチンと2月15日に会談したが、両者の距離はこのテーブルよりも広がった....[+] WIKIPEDIA PROMOTED

 

イデン外交の巧みさと欧州NATO加盟国が危機意識を共有したため、ロシアは経済、世界の双方での立場で大きく後退しつつある。

 

 

ロシアの軍事力は西側情報機関の想定をはるかに下回り、装備で劣るウクライナの戦闘機にも苦戦を強いられている。

 

しかし、プーチン最大の失策は、中欧の軍事大国としての伝統的地位に復帰する道をドイツに開いたことだ。

 

1年前にはこの展開は考えられなかった。冷戦期にNATOの一員としてドイツは軍事大国化を意図的に避け、歴代首相は東西の中間に舵取りしてきた。

 

ソ連崩壊前の数年間、ドイツ軍は50万人を擁し、世界最強の戦闘部隊の1つと広く見なされていた。

 

戦術、戦略的レベルで他国を大きく凌駕し、2つの世界大戦にあと一歩で勝利できたドイツにとっては当然の進展だった。

 

両大戦後、軍が解体されたものの、世界トップクラスの軍隊を再建できたのは、ドイツ史の顕著な特徴だ。

 

プーチンがロシアと西側諸国の間に緩衝地帯を作りたい背景には、ロシアがアドルフ・ヒトラーに壊滅的な打撃を受けたことが少なからずある。

 

しかし、ナチスの残虐行為は、戦後ドイツの政治文化に大きく影響を与えた。ロシアの侵略を抑止するため軍を再建したが、カイザー・ウィルヘルム2世やヒトラーの拡張主義を想起させるのは避けてきた。

 

そのため、長距離爆撃機など攻撃手段を獲得せず、戦勝国に占領された国らしく、戦後ドイツの軍事態勢は純粋に防御的なものであった。

 

1990年のドイツ統一後も変わらなかった。東方からの侵略の危険性は後退したとされ、ドイツは国防支出を着実に減らしていった。

 

陸軍の師団数は12から3、制服組は49万5千人から18万4千人に減少し、GDPの国防比率は3%から2005年に1%という驚異的な低水準になった。

 

トランプ政権の発足前、ドイツ戦闘機で稼働可能な機材は3分の1、ディーゼル電気潜水艦6隻は全部稼働できない状態だった。

 

ドナルド・トランプ前大統領は、世界第4位の経済大国ドイツのNATO支援が不十分だと不満を表明していた。

ドイツ軍参謀長は、ロシアがウクライナに侵攻した当日に、ドイツ連邦軍は「多かれ少なかれ骨抜きになっている」と訴えた。そのうえ、陸軍の準備態勢の低さから、NATOを支援するベルリンの選択肢は「極めて限られている」と指摘した。

 

プーチンは、欧米の軍事計画を大転換させずに、ウクライナを短期で撃破し、占領できると考えていたようだ。

 

結果的に、大きな誤算を犯したが、中でもドイツが最大の誤算だ。

 

ロシア侵攻からわずか3日後、ドイツのオラフ・ショルツ首相はロシアの侵略を非難する演説を連邦議会で行い、ドイツの軍備再建に1130億ドル特別基金を設立するよう呼びかけた。

 

さらにドイツ国防費のGDP比率を、2031年目標の2%以上から引き上げると明言した。

 

ショルツは、連立政権与党に長年続いた反軍事的な考え方「平和主義」を捨て去った。

 

このような軍事的準備をめぐる大転換で注目すべきは、ドイツ国民がショルツを熱狂的に支持していることだ。

世論調査では、緑の党党員でさえ、国防費増額に圧倒的支持を示した。

 

ドイツは、新型の戦術機、艦艇、装甲車など、ロシアの侵略に対抗する装備品調達を急増する動きを示している。ポーランドとデンマークも同様で、ポーランドの軍事予算は2023年に47%増加する予想がある。

 

これがウクライナ侵攻からわずか2週間でプーチンが成し遂げた成果で、ロシア軍が平凡な戦果しか上げない一方で、モスクワに軍事的脅威を与えてきた西側諸国が再軍備を進めるようになった。

 

冷戦終結後、ドイツを萎縮させた軍事支出への嫌悪感は消失し、ロシアへの融和政策も姿を消した。

 

プーチンの誤算は、将来の軍事的危険を自国で増大させるとともに、つい最近まで限界に来たといわれていた同盟を活性化させてしまったことだ。

 

モスクワがウクライナ全土を占領し、傀儡政権を樹立したとしても、ロシアの安全保障は低下し、恐るべき地域大国が復活する。■

 

 

Putin's Biggest Ukraine Blunder: Energizing German Rearmament

 

Loren ThompsonSenior Contributor

Aerospace & Defense


コメント

  1. ぼたんのちから2022年3月13日 9:35

    ウクライナ人民の敢闘に、老スパイでパーキンソン病疑惑のプーチンは驚き、そしてウクライナ疑惑に認知症疑惑の老いぼれバイデンにも予想外であったと思われる。その結果、ウクライナの悲惨な状況は確定してしまった。そして、まさしく世界は「B(頭脳)ゼロの世界に突入したのだ。
    記事で、「バイデン外交の巧みさ」と賛美しているが、後世の評論家は、チェンバレンの再来と評価するだろう(もう言われてるか?)。なにしろウクライナ戦争前から不介入を宣言し、制裁の脅しだけで戦争を止めようとし、戦争が始まるとプーチンの脅迫を真に受け、第3次世界大戦を起こさないため不介入を再度誓う有様だ。ウクライナ戦争の進展が第3次世界大戦に繋がりかねないにも関わらず、である。
    バイデンは、第3次世界大戦を匂わせられ、脅迫されると、後ろ向きな対応を行う癖があるようだ。これは同様の手口を習にも使われるだろう。いやもうすでに使われているか。
    記事でドイツの軍備増強を言っていることに一言。今回のドイツの軍備増強は、メルケル政権の貧弱な防衛政策のツケの穴埋めであり、せいぜいNATOの他の国に追いつく位なものであり、記事のようにはしゃぐ代物でない。

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