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予測:ウクライナ戦が膠着状況になれば、「精神異常」のプーチンは戦術核兵器使用に踏み切る。その場合NATOとロシア軍の対決は不可避になる。

 Russia Su-34

Russia's Su-34 fighter-bomber. Image Credit: Creative Commons.

 

クライナ戦争は、限定的ながら高い代償を払いつつ進むロシア軍と、猛烈に反撃するウクライナ軍の構図になりつつある。ロシアが勝つように見えるのは、ウクライナの都市を容赦なく砲撃しているからだが、ウクライナがロシアと膠着状態になるまで戦いつづける可能性もかなり出てきてた。

 

 

2008年のジョージアでの10日間戦争のように、電撃作戦、迅速な侵攻での勝利をロシアが期待していたのは明らかである。近代化されハイテクのロシア軍が、弱小国家で武装も訓練も不十分なウクライナを転覆させる予定だった。計画では、ヴォロディミル・ゼレンスキーにかわりロシアの傀儡が西側諸国が対応策を講じる前に大統領に就任することになっていたようだ。

 

極めて楽観的なこの戦争計画で、ロシア軍の貧弱な兵站体制が説明できる。ロシア側に顕著な食糧、燃料、弾薬の不足は、作戦が長く続く想定でなかったためだ。同様に、ロシア側は予定部隊をすべて投入しており、本国の軍隊はこれ以上ウクライナに投入せず、傭兵を募っている。このことは、プーチンが今回の紛争が大規模地上戦になると予想していなかったためだろう。

 

プーチンには迅速な勝利が必要

今後数週間でプーチンは戦勝へ最も近づく。ロシア軍はまだ消耗しておらず装備も整っていない。戦争に行くことさえ知らされず動員された徴兵隊員や広範な不足はさらに悪化する。ロシア部隊は休養を必要とし、軍需品や燃料等の不足はさらに悪化する。

 

また、1カ月ほどたてば、NATOのウクライナへの補給作戦は、政治的、物流的なねじれをほぼ解消しているだろう。ウクライナを支援する、装備、食料を供給するパイプラインに発展する。ロシアにとって戦争は、ウクライナ支援の西側との消耗戦になっていく。ロシアには西側の大規模な供給を凌駕する経済力はない。実際、同じ「パイプライン」が、1980年代にアフガニスタンのイスラム反乱軍がソ連軍を打ち負かすのに役立った。

 

最後に、あと1ヶ月ほどで、ロシア制裁は経済に深く影響し始める。今のところ、ロシアの企業や銀行、産業界には、蓄えがある。修理工場には、外国製品の修理用のスペアパーツが残っているはずだ。銀行には、ドルやユーロの現金が残っている。しかし、これらの短期的な蓄えや通常業務の資金はすぐに使い果たされる。外国製部品やサービスを必要とする機器は機能しなくなり。経済全体が行き詰まると、戦争を支える力が弱まり、国民が不平や抗議を口にするようになる。

 

プーチンが勝てないと見れば、エスカレートするのか?

時間はウクライナに味方している。キーウが数週間持ちこたえれば、膠着状態が現実味を帯びてくる。4月になれば、制裁措置は大きな痛手となる。ロシア軍部隊は泥沼にはまり、疲労困憊するだろう。ウクライナはNATOの兵器で溢れかえり(実際、すでに溢れている)、ロシア軍がウクライナの都市を占領しても、十分に武装し、支援される反乱軍に直面する可能性が高い。ウクライナのため戦う外国人兵士は、プーチンの傭兵に匹敵するようになるだろう。

 

その時点で、プーチンは泥沼に入ったとわかるはずだ。何年も国力を消耗させる、ソビエト時代のアフガン戦争やアメリカのベトナム戦争やイラク戦争のような、勝ち目のない紛争になってもおかしくない。あるいは、プーチンが撤退し敗北を認める事態も考えられるが、可能性は極めて低い。今回の戦争はプーチンの遺産であり、プーチンは自分自身をロシア史に残る壮大な救済者と自認しているのか、あるいは精神的に病んでいるとの憶測が多くある。

 

となると、プーチンに残された選択肢はエスカレーションすることで無期限の戦いから撤退することだ。ウクライナの都市を無差別砲撃し、守備部隊を排除する戦術が、エスカレーションを示唆している。しかし、膠着状態を打破するためのエスカレーションとなると、大量破壊兵器の使用となる可能性が高い。

 

欧米はどうすべきか?

バイデン政権は検討を始めた。現在のロシアの通常戦の優位性があってもすぐに勝てない場合、膠着状態になる可能性が高い。大量破壊兵器の戦術使用は、ウクライナの都市周辺の膠着した戦線を打破するかもしれない。また、大量破壊兵器はウクライナの指導者を脅かし、自国民の抹殺を防ごうと和平を求めてくるかもしれない。

 

一方、ロシアが大量破壊兵器を使用すれば、NATOの介入への圧力は非常に高くなる。NATO諸国は、飛行禁止区域を設定する圧力をうまくかわしてきた。多くのアナリストは、飛行禁止区域を実施すればロシアとNATOの空軍が交戦することになり、ロシアとNATO間の対立がエスカレートする危険性があると指摘している。

 

しかし、大量破壊兵器による攻撃が生まれれば、NATOはNFZ設定を強要されるのは間違いない。さらに、ロシアに反撃しようとの声も上がるだろう。このような行動は、NATOとロシア間の開戦になる危険性がある。

 

このような理由から、NATOの各国政府はレッドラインを設定していないのだろう。プーチンが大量破壊兵器で対抗し、NATOが対応を迫られる事態を恐れているのだ。しかし、ウクライナが戦場で好結果を上げ続ける中で、ギャンブラーの正体を証明され、欲求不満で絶望的なプーチンがさらに高い賭けに出た場合にどうするのか西側諸国は真剣に検討する必要に迫られている。■

 

 

What Will Putin Do If Russia Has No Chance at Victory in Ukraine? - 19FortyFive

 

ByRobert Kelly

 

Robert Kelly is a professor in the Department of Political Science at Pusan National University in South Korea and a 1945 Contributing Editor. Follow his work on his website or on Twitter.

In this article:featured, NATO, Putin, Russia, Russian Economy, Ukraine, World War III

 


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