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ロシア大統領専用機など政府機材が二日間に渡り大量に飛行展開したのはロシア政府が核戦争を覚悟して政府機能を継続する訓練の一環か。各国へのシグナルでもある

 An Il-96-300PU that was involved in a recent surge of curious Russian government air activity in and around the country.

DMITRY TEREKHOV VIA WIKIMEDIA

 

ロシア上空を飛んだ政府航空機の異常な動きについて。

モスクワからロシアの戦略通信機、空中司令機、VVIP機などが大量に発進した意味とは

 

 

クライナ紛争が激しさを増した先週、ロシヤ特別飛行分遣隊に所属するロシア機の相当数が、2日にわたり同国内外を飛行した。同隊は、フラッグキャリアであるアエロフロートの一部門国営ロシヤ航空Rossiya Airlinesに所属し、空中指揮所、通信中継機、VVIP機等特殊航空機を運用する。このほかにも、ロシアでは興味をひく飛行が相次いだ。

 分遣隊所属機は定期的に飛行しており、今回のフライト自体は異例ではなかった。しかし、オンライン飛行追跡ソフトで確認できたのは、モスクワ周辺から同時に多数の飛行が行われ、多くが東方に分散する異例の事態だった。

 金曜日に、オンライン飛行追跡ソフトは、ロシヤ特別飛行分遣隊所属機のアメリカのVC-25Aエアフォースワンにあたるロシア大統領専用機IL-96-300PUと、小型ながら空中指揮所のTu-214PU含め、少なくとも6機がモスクワ地区から出発する様子を見せた。同部隊の特殊航空機IL-96-400VPUもその後、モスクワ地区を離れた。Il-96-400VPUは有事の際に核戦力の指揮統制を行う「ドゥームズデイ」機と考えられており、アメリカ空軍のE-4Bナイトウォッチに類似している。

 機体の多くは、ロシア東部へ飛行し着陸せずにモスクワ周辺へ戻っていった。そのうち1機、エアバスA319-115CJは、西のサンクトペテルブルクまで飛んで基地に戻った。

 ロシヤ特別飛行分遣隊の旅客輸送機IL-96-300の1機は、カザフスタン西部を経由して黒海沿岸のロシアのリゾート地ソチへ飛んだ。別のIL-96-300は、カザフスタンの首都ヌルスルタンに向かった。大統領専用機IL-96-300PUは、西方へ短時間移動し着陸した。Il-96-400VPU指揮機は、モスクワ周辺上空をレーストラック軌跡で飛行した。

 これと別に、FSBロシア連邦保安庁のTu-154が、モスクワ周辺からバルト海のカリニングラードに向け西に飛行した。カリニングラードは戦略的な場所でロシア軍基地多数がある。

 金曜日に観測されたロシヤ特別飛行分遣隊の飛行のタイミング、目的地、一般的な性質は、異例で、注目すべきものであった。また、同部隊の多くの航空機が前日にも興味深い展開を見せていた。

 

ANNA ZVEREVA VIA WIKIMEDIA

ロシヤ特別飛行分遣隊のIl-96-300PU大統領専用機も先週金曜日に展開した機材のひとつ。


DMITRY TEREKHOV VIA WIKIMEDIA

Il-96-400VPU


ANNA ZVEREVA VIA WIKIMEDIA

Tu-214PU 空中指揮所もロシヤ特別飛行分遣隊に所属しており、金曜日にモスクワ周辺で目撃された

 

 

 木曜日、ロシヤ特別飛行分遣隊の8機がオンラインで追跡され、IL-96-300PU、Tu-214PU、Tu-214SR通信中継機もあった。同隊所属のIL-96-300も、モスクワ周辺を離れる様子が目撃された。

 この際も、全機が東に向かい、一部がモスクワに戻る前に比較的短い地上待機をした。Tu-214SRは円形の軌跡で飛び、中継機能を果たしたようで、その後シベリアの都市オムスク空港に着陸した。

 

TOSHI AOKI/JP SPOTTERS VIA WIKIMEDIA

Tu-214SR通信中継機

 

 エアバスA319-115CJ旅客機は、木曜日金曜日に同様のフライトをした。同機はシベリアの都市ノボシビルスク空港でタッチアンドゴーをしたようだ。小型旅客機An-148-100Eは同じくシベリアのウファに飛び、空港周辺で奇妙な低高度パターンで飛行した。

 2機目のIl-96は北東に向かい、オンラインで確認できた時刻と飛行距離を合わせると、一貫して飛行していたのがわかる。

 2日間の飛行の目的は何だったのか、明らかではない。ロシヤ特別飛行分遣隊や他のロシア政府専用機の飛行パターンに詳しい筋は、今回の飛行は普通ではないと指摘している。

  同時に、各機が飛行した場所とタイミング、特にモスクワ周辺から連続出発し、その後多くが東方に分散したことが通常とは異なる。このような行動から、プーチン大統領の思惑通りに進んでいないウクライナ紛争や、ロシアと国際社会の関係に与える二次的影響と関連しているのではと考えても無理もない。

 金曜日にモスクワ上空にIl-96-400VPUが出現したのは、プーチンがモスクワで大規模な戦争支持集会に参加したのと関係しているのだろう。同集会は、ロシア政府によるクリミア占領の8周年記念日に開かれた。

 他の人が指摘しているように、ロシヤ特別飛行分遣隊の動員は、戦略的訓練の様相を呈している。木曜日に航空機が飛んだシベリアは、核戦争など重大危機事態にプーチン含むロシア最高指導部が逃げ込む可能性のある地下壕群に近い。例えば、ウファはヤマンタウ山の北西約90マイルにあり、ヤマンタウ山には約400平方マイルに及ぶ完全な「複合施設」の巨大な地下都市があると言われている。

 IL-96の長距離飛行は、ロシアの指導者たちが、有事の際に軍やその他の重要な政府機関を指揮統制し続ける方法のひとつを反映している。

 さらに、金曜日に別のIL-96-300が飛行した黒海のソチは、イドコパス岬のプーチン宮殿から100マイル以内である。宮殿は、広大で厳重に警備された複合施設の一部で、地下にも重要な施設がある。

 ロシアがウクライナ侵攻を開始する前から、紛争がどのようにエスカレートし、別の場所に波及する可能性があるか、核兵器投入が現実になるかが懸念されてきた。この点に関するロシア政策の正確なニュアンスについては、専門家やオブザーバーが長く議論してきたが、クレムリンがエスカレーションさせて事態を解決する戦略を追求するとの懸念が強い。これは、限定的核攻撃によって、相手にエスカレートを恐れさせることで紛争を凍結し、第三者の介入を困難にするのを目的とする。

 プーチンはウクライナでの「特別軍事作戦」開始を発表する際、ウクライナに介入しようとするいかなる国に、核兵器の使用可能性を脅したとの解釈が多い。その後、プーチンはロシア戦略抑止力を厳戒態勢に置くと発表した。

 ロシア安全保障会議副長官で前大統領ドミトリー・メドベージェフは、金曜日、「ロシアは生意気な敵はすべて追い込む力がある」と発言し、新たな懸念を示した。

 ロシア当局は、ウクライナ政府が米国の協力で核兵器含む大量破壊兵器を開発していると非難している。全く根拠のないこうした発言は、ロシア軍がウクライナなどで核・化学・生物攻撃を起こす前触れと危惧する声もある。

 さらに、この2日間のロシヤ特別飛行分遣隊の飛行は、ロシア軍や国内の他の政府機関による飛行とあわせ実施され、相互関連しているように見えるものもあった。ソチに向かったIL-96-300にはEMERCOMの略称で呼ばれるロシア非常事態省のIL-76が同行していた。同省は、表向きは自然災害時に市民の緊急対応を監督する役割を担う。しかし、同省の航空機は、武器や人道支援物資を外国に運ぶ輸送にも使用されていた。

 オンライン飛行追跡ソフトは、木曜日にカリニングラードに向かうロシア空軍IL-76給油機2機を検知し、金曜日に戻っている。ロシア空軍とEMERCOMのIL-76とTu-134AK、Tu-154M、IL-62M旅客輸送機が木曜日から金曜日にかけてロシア南部、アルメニア、シリアを行き来している。

 木曜日にはモスクワ周辺から中東に民間ビジネスジェット機らしきものが飛ぶ様子がみつかり、アラブ首長国連邦のドバイにも向かっていた。

 報道によると、ロシアはウクライナでの軍事活動を支援するため、国内治安機関に加え国外から追加人員を確保しようとしている。これが今回の動員の理由の一部かもしれない。ロシアの半自治区チェチェン共和国当局は、追加部隊派遣を表明している。シリアの独裁者バッシャール・アル・アサド政権は、シリア部隊の編成に協力したと伝えられているが、中東での作戦を担当するアメリカ軍トップのフランク・マッケンジー海兵隊大将は金曜日に、そうした人員をウクライナに送り届ける努力は今のところ「ほとんどない」ようだと述べた。

 ジョージアのアブハジアや南オセチアのような紛争中地域に現在配備中のロシア部隊を、ウクライナへ呼び戻す過程にあるとの報告もある。先週ロシア軍機が向かったアルメニアに展開したロシア軍も含まれるかもしれない。

 また、プライベートジェットが中東に向かうのは、ロシア社会のエリート層や同国の航空部門への制裁がますます厳しくなっていることが原因の可能性がある。多数国がロシア製機材の飛行を禁止する中、飛行が可能な第三国に航空機を配置し、あるいは現地で再登録すれば有利に働くかもしれない。こうした動きは、制裁措置のためロシア政府が航空機を接収するのを回避するためであった可能性もある。

 もちろん、以上はすべて、入手情報に基づいて、飛行の理由を考えたものに過ぎない。正確な説明とは断言できない。今回のフライトの目的について、さらに情報が出る可能性はある。しかし、地政学的な現実を考えれば、モスクワから指導層を迅速に脱出させ、生存可能な場所に移送するなど、政府機能の継続訓練は思慮ぶかく実施すべきだろう。

 いずれにせよ、全機はトランスポンダを装着して飛行しており、オンラインで追跡可能であったことが注目に値する。ロシア政府が各機の動きを注目させ、ウクライナ紛争でロシアと対立する国々を含む関係方面にシグナルを送る意図があったのだ。もちろん、間接的なシグナルには誤解されるリスクが常につきまとうが、今回はそのようなリスクはかなり低い。ただし、情報収集力を有する国家にとっては話は別だ。

 今回のフライトを説明する情報をさらに探すと同時に、今後も同様の傾向が現れるか警戒の必要がある。

 

 

Let's Talk About The Flurry Of Unusual Aircraft Activity Over Russia Today

The flights included a mass launch of Russia's strategic communications, command post, and VVIP aircraft out of Moscow.

BY JOSEPH TREVITHICK MARCH 20, 2022

 


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