先週末、ロシアの爆撃機がウクライナ標的に長距離巡航ミサイルをロシア領空から発射し、NATOが想定した飛行禁止措置ではロシア空軍力の活用を防ぐことができないことを証明した。
3週間近く、ロシア軍はウクライナ国境から侵入し、第二次世界大戦後のヨーロッパで最大の地上戦となっている。しかし、数的・技術的に優位なはずのロシア軍は大きな抵抗を受けており、ウクライナ首都を占領できず、ウクライナの空域の制圧はほとんどできていない。しかし、ウクライナにとって不利な状況は続いている。
ウクライナ上空を飛行禁止区域とする発想は、これまでの紛争でイラク、ボスニア、リビアに設定されたNATO飛行禁止区域作戦を大きな根拠としている。これまでの飛行禁止区域は、ウクライナ上空の飛行禁止区域と根本的に異なる。
ウクライナ上空を飛行禁止区域とすれば、理論的にはロシアがウクライナで空爆することを禁じることになるので、良いアイデアのように思えるが、実際はそうではない。実際には、アメリカの戦闘機をロシアの航空機と交戦させることを意味し、それ以上の可能性もある。
しかし、一連の欠点により、ロシアのウクライナ上空で航空優勢を確保できておらず、ウクライナ人パイロットは空を飛び続けており、ロシアの輸送隊もウクライナの無人機攻撃の餌食となっている。
ウクライナ当局はNATOと米国に対し、ウクライナ上空に飛行禁止区域の設定を要請してきた。NATO当局は、飛行禁止区域を設定すればNATO軍がロシア軍と直接戦闘を行う可能性が高く、その結果、紛争が急速に拡大し、世界規模の戦争、最悪の場合は核戦争に至る可能性があるとして、繰り返し提案を拒否してきた。
NATOがウクライナ上空を飛行禁止区域とすることで、見返りよりもリスクが大きくなる理由はいくつもある。これまでのところ、ロシア機は迫撃砲や大砲による攻撃よりも効果が小さく、飛行禁止区域のもとで迫撃砲や大砲による攻撃は妨げられることなく継続されることになる。さらに、S-400 Triumfのようなロシアの防空システムの射程は250マイル(約850km)あり、ロシア領内からNATO軍機への交戦も可能だ。つまり、飛行禁止区域設定を強行すれば、ロシア国内の空爆につながり、大規模戦へエスカレートする可能性がある。
NATOがウクライナ上空を飛行禁止区域にすれば、より大きな紛争に発展するのはほぼ確実であり、ウクライナ国内へのミサイル攻撃を阻止する効果もないのは明らかである。
ロシア爆撃機はウクライナ攻撃をロシア領空から実施している
ロシア戦術が先週末に変化を示し、ウクライナ上空の飛行禁止区域構想に新たな穴を開けた。ロシアの戦略爆撃機が、ロシア領空からウクライナ国内の目標に長距離巡航ミサイルを発射したのだ。NATO機は、ウクライナ上空を飛行禁止区域にしても、ロシア上空を飛ぶ航空機を迎撃したり撃墜できない。アメリカの防空装備はロシアの巡航ミサイルを迎撃できるかもしれないが、それを運用するとなるとウクライナにアメリカ軍を送り戦闘に参加させることになり、ジョー・バイデン大統領はこれをしないと繰り返し表明している。
ロシアのTu-95MS「ベアH」とTu-160「ブラックジャック」爆撃機はKh-555巡航ミサイル運用能力を実証済みだ。Kh-555は、核巡航ミサイルを改良したもので、NATOではAS-15ケントと呼ぶ。長距離スタンドオフ兵器とされるKh-555は、ほぼ2,200マイルの射程がある。つまり、ロシア爆撃機は、ウクライナの国境から数千マイル地点からでもにこれらの武器を展開し、目標を攻撃できる。■
Russian bombers just proved a no-fly zone won't work over Ukraine - Sandboxx
Alex Hollings | March 14, 2022
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