中国は台湾制圧に成功するだろうが、ウクライナでのロシア同様に代償は報酬より高くなる。
中国にとってウクライナ侵攻の教訓とは実行は想定より困難になること
ロシアによるウクライナ侵攻は、中国が台湾の奪取のきっかけになるとの議論がある。台湾とウクライナは確かに地政学的に似た位置にある。ともに好戦的で独裁的な隣国から反体制的な領土として扱われている。ともに米国や他の民主主義国に助けを求めているが、各国との正式な同盟関係はない。
さらに、両国へ民主主義世界は「戦略的あいまいさ」を示している。ともに民主主義国が助けてくれると確信が持てない。曖昧さが、中国やロシアによる直接的な介入を思いとどまらせるという論理である。しかし同時に、民主主義諸国は、ウクライナと台湾において、強固な国家能力と軍事能力を開発させ、自衛能力を高めることで、ロシアや中国の攻撃を抑止できると期待してきた。
抑止力がウクライナで失敗したのは明らかだ。並行してウクライナの失敗に触発され、台湾でも失敗することが懸念される。つまり、ロシアの攻撃から、核兵器によって外部からの軍事介入を排除すれば、自分たちも攻撃できると中国は学ぶだろう。中国メディアによれば、現在の中国メディアはウクライナ戦争を曖昧に伝えている。
しかし、実戦の経過から実践的な別の教訓が導かれる。
愛国心ある国民が動員され戦う
ロシアがウクライナに勝つ、あるいは中国が台湾に勝つという仮定には、非対称性が根源にある。過去10年間、巨費を投じて近代化を進めてきたロシア軍の規模と技術は、弱く、軍備も中規模の中堅国家を凌駕し、打ち負かすはずだ。プーチンはまさにそれを期待していたようだ。プーチンは電撃作戦、つまり親ロシアかいらい勢力を素早く樹立し、その後迅速撤退するつもりだったようだ。
しかし、プーチンの立ちはだかったのは、獰猛な民族主義者の抵抗と奮起を促すリーダーシップの壁だった。ロシア軍は苦戦を強いられ、現在は長距離砲撃に頼っているため、一般市民多数が必然的に死亡し、泥を塗っている。ウクライナ軍は、勝ち目が低いにもかかわらず、粘り強い勇気で世界を魅了している。その情報作戦は見事というしかない。大統領は有名人になった。その大統領が民主的に選出されたことは、国民の正統性と支持を得ていることにほかならない。ウクライナの戦いを支援するグローバルな取り組みが始まっている。
台湾でもこうしたことがほぼ間違いなく適用される。
閉鎖的な独裁国家の腐敗した軍隊は、お粗末な戦いぶりを示す
ロシア軍の戦術作戦の低さは衝撃的であった。特にキエフへの北方攻撃では低い士気と低劣な兵站を露呈した。原因の多くは、ロシア軍の腐敗にある。強力な軍隊でありながら、燃料や弾薬が不足したり、整備不良や装備不足で車両が故障したり、車両を放棄したり、傭兵に依存する傾向が強まっている。
ここでも中国と類似点が目を引く。中国にも腐敗が蔓延している。中国軍はかつてよりはクリーンというものの、人民解放軍は、第三世界の軍隊によく見られるように、経済活動に関与している。ロシアが証明するように、見栄えの良い近代化に多額の費用をかけるのは、戦力投射の兵站を備えた専門化した軍隊より価値がはるかに低い。中国の場合、十分な兵力を台湾に上陸させるには、1944年のD-Day以来最も複雑な水陸両用作戦を実施する必要があり、ウクライナ以上に機能的な兵站が重要となる。
大規模な制裁措置の反動
最後に、民主主義諸国は激しく反発している。ロシアへの制裁網は驚くべき速さで拡大中だ。ロシアはSWIFTシステムへアクセスを制限され、西側の石油市場を失う可能性があり、通貨は下落し、資本逃避が加速している。プーチン大統領は戦争に勝つとしても、大損害の割に得るものが少ない勝利となるだろう。
ロシアは世界経済から孤立し、おそらくプーチンが権力の座から降りるまで、状態が続くだろう。ロシアの経済成長は10年以上遅れる。人的資本の逃避が加速し、資源と技術を持つロシア人が国外に流出する。外国技術にアクセスできなくなる。ロシアは天然資源輸出への依存度をさらに高める。そして、プーチンは、唯一残された大口購入者である中国が、厳しい価格を要求してくるのを目にする。プーチン自身は二度と国外に出られなくなり、戦争犯罪の訴追を受ける可能性さえある。
中国が台湾を攻撃した場合、同じ可能性がありそうだ。中国はおそらく勝つだろう。中国軍は、勝つために必要であれば、現在のウクライナ同様に島を砲撃し服従させることが可能だ。しかし、その結果、中国は世界経済から切り離される。ロシア同様に中国も成長を促進し、重要技術を得るため西側市場へのアクセスが必要だ。習近平国家主席は、中国をこうした市場から切り離し、自立した国にしようと努力しているが、いかんせん時間がかかる。新技術や資源が世界中に散在するグローバル経済において、中国が切り離されても成長率を維持できるかは不明だ。
その意味で、中国にとってウクライナは、台湾を奪う鈍器になりかねない。しかし、2週間にわたるロシアの失態と、世界経済からロシアが急速に疎外された後、より微妙な教訓を引き出す必要がある。中国は台湾を征服できるかもしれないが、ウクライナでのロシアの惨事のようになれば、その代償は報酬よりはるかに高くつくはずだ。■
Russia's Disaster of a War in Ukraine Means China Won't Invade Taiwan? - 19FortyFive
Robert Kelly is a professor in the Department of Political Science at Pusan National University in South Korea and a 1945 Contributing Editor. Follow his work on his website or at Twitter.
オバマは、「戦略的忍耐」とか、「世界の警察官でない」と発言して、中国の不法な南シナ海支配を許し、ロシアにグルジア侵略、及びクリミア半島等のウクライナ侵略を放置し、今回のウクライナ戦争の下地を作った。
返信削除バイデンは、ウクライナに軍事介入しないからと最初に発言して、ロシアの好きにさせ、ロシアは戦争を引き起こし、さらにこの記事のように、CCP中国の台湾侵攻でも「痛い目に遭うぞ」と遠吠えで済ませる可能性があるということなのだろうか。これは米国の世界覇権の最終的な放棄であり、民主主義国家を売り渡すとともに、同盟国に対する裏切りである。
そして一連の米国民主党政権の同盟国に対する信頼の欠如は、世界戦争への道を開くことになるのかもしれない。「忍耐」もいい加減にしてほしいものだ。
では何をすべきだったか? 結果論になるが、米国は、ロシアの軍がウクライナ周辺に集結する間は、ウクライナに軍を派遣し、米露戦争も辞さない姿勢を見せるべきだった。プーチンが恐れるのは米露戦争であり、だからこそウクライナがNATOに加盟する前に支配しようと目論んだと思える。しかし、バイデンはウクライナをロシアに突き出す行為を先に行ってしまった。
ウクライナ戦争がどのような結末になるにせよ、戦争を防げなかった米国の抑止力は地に落ち、同盟国との結束は緩み、新たな危機が起きるだろう。記事のように日本周辺でもだ。日本は、真剣に米国抜きの東アジアの安定について、対策しなければならない時期に来ているのだろう。これは日本だけの軍事力拡大で済むことでもない。