2050年代までB-52を維持する性能改修パッケージの目玉は、
新しいエンジンだ。
米空軍がB-52エンジン8基の交換構想を始め40年、作業がついに実現する。エンジン換装で、ストラトフォートレス運用を20〜30年維持する。
B-52商業エンジン交換プログラム(CERP)の契約は昨年秋に締結され、プログラムは迅速に進められている。新しいF130エンジン2基が製造され、開発と試験が計画通り進めば、最初の再エンジン搭載B-52は約5年後に運用開始となる。
空軍爆撃機プログラム主幹のジョン・P・ニューベリー准将Brig. Gen. John P. Newberryは、「2030年代に向けて、B-52の姿を決定付ける要素がすべて整った」と述べた。ニューベリー准将は、性能改修の内容として「新しいエンジン、新しいレーダー、超高周波および超低周波通信の改良、データリンクの更新、暗号の改良、およびいくつかの小さな取り組み」が含まれると述べている。
B-52はまた、米空軍初の極超音速ミサイルAGM-183 Air-launched Rapid Response Weapon(ARRW)の最初の搭載機となり、核兵器AGM-181 Long-Range Standoff(LRSO)ミサイルでも唯一の運用機になる。
F130は、ロールス・ロイスの商用エンジンBR725の軍用化版で、空軍はC-37VIP輸送機やE-11 BACN(戦場空中通信端末)で供用している。ロールスはGEエイビエーションとプラット&ホイットニーを抑え2021年9月に5億90万ドルの初期契約を獲得し、B-52搭載用のF130の開発・試験を開始した。ロールスは76機のB-52用にF130を650基提供する。F130エンジンは、プラット&ホイットニーTF33を置き換える。プログラム全体の評価額は約26億ドル。
ロールスはエンジンを空軍に直接提供し、B-52の製造元であるボーイングが、新エンジンが既存または新規の機器の機能に悪影響を与えない形で、機体にエンジンを搭載する。アップグレードは、補修施設への回航の際に実施される。
1月、ボーイングはアリゾナ州のデービスモンサン空軍基地の「機体の墓場」から退役したB-52機体をオクラホマシティの航空物流センターにトラックで運び、アップグレードのデジタル設計を検証している。
オクラホマシティ航空物流センターの「ハイベイ」は、「このプログラムとRMP(レーダー近代化プログラム)のため特別に建設したボーイングの施設です」と、同社の爆撃機担当シニアディレクター、ジェニファー・ウォンは語った。「目的は、実物大のレプリカ、航空機のモックアップををエンジニアリングに利用することです」。
また、B-52に「触れたり」「這い回ったり」した経験のないエンジニアへの実地体験も含まれ。「ハードウェアに触れることは、非常に大きな価値をもたらす」と、ウォン付け加えた。
モックアップは、「CERPプログラムの一部である油圧部品の課題を解決する」ために、リスク低減にも使用されるとウォンは指摘している。
F130は、燃費を約30%向上させ、メンテナンス時間を大幅短縮し、TF33の「ベンダー消失」というサプライチェーン問題を解消できる。燃料効率効果で、アップグレード費用は回収できる。新エンジンで推力や速度の変更はない。
ロールス・ロイスのB-52プログラム・ディレクター、スコット・エイムズは、「重要なのはスケジュールを守ること」と述べている。最初の重要マイルストーンとなる予備設計審査は今年夏に予定され、地上試験は今年中に行われる。
ボーイングはF130用の新しいエンジン・ナセルを設計し、エンジンのアップグレードが、横風時の挙動など、B-52の性能に意図しない影響がないことを確認すると、エイムズは述べている。
現在と同様に、エンジン8基はナセル4つに搭載される。米空軍は大型商用エンジン4基案も検討したが、翼やコックピットなど大幅再設計を避け、リスクと遅延を最小にするため8基に固執した。
ロールス・ロイスは、インディアナポリス工場にB-52専用の6億ドルの生産施設を完成させ、雇用を開始している。
試験エンジン2基は、ロールス・ロイスが屋外ジェットエンジン試験施設を持つ、ミシシッピ州のNASAジョン・C・ステニス宇宙センターで評価される。エイムズは「我々はエンジンをプロトタイプのナセル構成で運転し、操作性と横風効果をテストする」という。
エイムズによると、次の大きなマイルストーンとなる重要設計審査は、2023年に行われる。それまでに、ボーイングのナセルを装着したF130と装着していないF130の物理テストにより、性能の新データが得られ、ソフトウェアモデルの予測値を更新する。データは、ロールスがボーイングと共同開発する制御システムに反映される。
ボーイングとロールスはB-52主翼のデジタルモデルを共有し、同じベースラインで作業を行える。
「ボーンヤード」から引き出されたB-52の機体がオクラホマのティンカー空軍基地に移送され、ボーイング技術陣が新型エンジン含む装備の装着を試す。April McDonald/USAF
デジタル設計と「絶え間ない統合会議」によって、部品同士が干渉せず、最終的な構成の維持が容易だと確認された。エイムズは「ステニスでは、2基のエンジンポッドとナセルをテストスタンドに取り付け、各種の出力設定、気象条件で運転し、エンジンの作動状況を把握するとともに、制御システムへのフィードバックも行う」と述べている。
ボーイングは、コックピットとエンジンをつなぐ配線や油圧を担当する。
ボーイングは、2024年に最初の2機のB-52HをF130エンジンで改造し、サンアントニオの改造施設で作業を行う。最初の8機は、カリフォルニア州エドワーズ空軍基地のB-52試験部隊に加わる。
エンジン交換作業には「物理的な配線、油圧、出力更、冷却の変更」が含まれるとウォンは述べている。
制御装置は「機械式とデジタル式のハイブリッドスロットルシステム」になる。コックピットで機体を操作すると、デジタルとワイヤーが混在することになる。
エンジンのテストに、新型レーダーのテストに、新型ARRWとLRSOミサイルのテストに各2機を割り当てる。
ニューベリー准将によると、飛行試験は2025年から2026年にかけて行われる。飛行の安全性を実証後に、1機に新型レーダーを搭載し、両者の機能に関するデータ収集を開始する。
その後、アップグレードを1つずつ追加する予定で、相互依存関係を考慮する。
ニューベリー准将によれば、「我々は即応能力と一定数の航空機を運用することに留意しなければならないので、あまり長く時間をかけていられない」。
低率初期生産とマイルストーンC、つまり本格生産の決定がいつになるかを言うのは時期尚早とニューベリー准将は認めた。これらの決定で、改修作業のスピードが決まる。しかし、年10機から11機のペースとなると、76機すべての完成に2035年頃までかかることになる。
構造的には、B-52は素晴らしい状態にある。60年前の爆撃機ながら、「素晴らしい整備計画があり、素材は陳腐化していない」(ニューベリー准将)。滑走路で長年にわたり待機していても、機体は摩耗していない。
ボーイングは「機体構造に非常に自信を持っている」とウォンは言う。B-52は「構造的に余裕を持たせて」設計されている。
ニューベリーは、B-52のCERPは、オールデジタル・アプローチによる取得を加速するための先駆けであったが、このプログラムは、今年中に標準的な技術・製造開発(EMD)に転換されると述べた。空軍は多くのお役所仕事を省いた。結局、このアプローチでスケジュールが圧縮され、「およそ3年」短縮できたという。
初期契約では、エンジン24基の開発と生産が行われる。そのうち4基は地上試験用、20基は試験機と予備機用、とエイムズは言っている。この試験用エンジンが最終的にB-52の機体で使用されるエンジンに加わるかは、まだ明らかではない。最初のエンジンは計器類が相当搭載されるので、運用上で取り外すのはコスト的に不利になるかもしれない。
生産契約は、EMD終了時になるだろうと、エイムズは言う。しかし、その前に、「生産率準備(PRP)という大きなマイルストーンがぶら下がっている」。PRRマイルストーンは、全サプライヤーと材料が生産のサポートで準備ができていると証明するものだ。
整備要員用のシミュレーターやトレーニング機器については、「まだ早い」とエイムズは報告しているが、「拡張現実と仮想現実のツールを使い、空軍に提供可能なトレーニングパッケージのデモを行った」という。
ロールス・ロイスは、「他のプログラムを活用し」、USAFに「メンテナンス、サポート、トレーニング用の素晴らしいソリューション」を提供する。2026年までに、同プログラムの生産と配備の姿が「もっと明確になるで」という。
アップグレードされたB-52Hに新しい呼称B-52Jが浮上しているが、制式名称を論じるのは「時期尚早」で、「将来の話題」だとエイムズは言う。
「呼称は、運用と訓練に関係する。飛行方法や使用方法に大きな違いがある場合、乗務員は十分に認識する必要がある」ため、呼称が重要になるのだという。
ニューベリー准将は、B-52試作機の初飛行から4月で70周年を迎えたことに触れ、「B-52が2050年まで飛び続けるよう願う」とし、「B-52の歴史で最大の変更点」と述べ、長寿こそ同機の設計と価値の証だと指摘している。■
New Power for the B-52 - Air Force Magazine
March 23, 2022
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。