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ロシアとウクライナはドンバスの戦いにむけ準備の最終段階に入ったようだ。第二次世界大戦のクルスクの戦い以来、ヨーロッパ最大の戦車戦になると予想される。モスクワとキーウの双方にとって、大きな賭けとなる。ドンバスの結果が戦争全体の行方を左右しかねない。
2月24日、ロシア軍はキーウ近郊、ハリキウ、ドンバス、クリミアと、4つの主要な進攻軸でウクライナに侵攻した。ロシア軍指導部は、限られた兵力を分散させるにあたり、戦争の最も古い原則の1つである「質量」に違反した。第一目標を定め、その目標達成に戦闘力の大部分を割く代わりに、兵力を広範囲に分散させたため、ウクライナ守備側は4軸すべてを撃退することができた。
キーウの西と北の周辺で深刻な戦闘損失を被ったロシアは、失敗を認め、開戦から約1 カ月で全軍を撤退させ、現在進行中のドンバス戦の北側に配置転換し、キーウとスミSumy地域の失敗を抑える決断を下した。ロシアはまた、ウクライナ軍(UAF)がドンバスの戦いに参加するために撤退しないように、ハリキウ北部の軍を限定的に探査攻撃と嫌がらせ砲撃で維持した。
ドンバスの南側では、ロシアはマリウポルのUAF防衛部隊の撃滅に向け最終段階にあり、ロシアとクリミア軍との間に陸橋が開かれ、ケルソン地域の部隊(ドンバス同様に低いレベルの戦闘が続いている)への兵站やその他支援ができるようになる。
一方、ドンバスでの戦闘の最前線では、4万のウクライナ軍が防衛に当たっている。ロシアの戦略は開幕戦の惨めな状況から転換し、ドンバス線より東側の部隊を前進させ続け、南部/マリウポル軸からロシア軍を投入しドンバス・ポケットの南側の肩を攻撃し、キーウからロシアの装甲を投入してドンバス・ポケットの北側の肩に攻撃する修正案が見えてきた。
ロシアがUAFの陣地を北側か南側のどちらかで側面攻撃に成功すれば、ウクライナの全戦闘部隊を切り離し、計画的に破壊または捕捉できる。一方、ウクライナはロシアがドンバスで自軍を包囲するのを阻止しようとする。その作業は非常に難しいが、不可能ではない。
ウクライナはハリキウやケルソン地区で戦う部隊を撤退させられない。ロシア軍が攻略できる領域を広げないためだ。しかし、キーウ、チェルニヒフ、スミを守っていた部隊を再配置し、キーウにまだあれば戦略的予備軍と合わせ、ドンバスを強化するために送り込むことは可能だろう。
UAF側には、2014年以降、同地域に相当の防衛施設を建設してきた利点があり、ロシアが前線を突破しようとすれば、甚大な損害を与える。しかし、ロシアの突破を阻止するウクライナの目的は、いくつかの理由で複雑だ。
まず、ロシア軍のみならず、ウクライナ軍も兵員や戦車多数を失っており、UAFの戦闘力は開戦時より低下している。キーウ政府は自軍部隊の損失に関する情報をブラックアウトしているため、ウクライナ軍がどれだけの死傷者を出し、ドンバス戦線を守る訓練済み部隊がどれだけ残っているのかは不明だ。
第二に、ロシア側のドンバスへの補給線は短く安全だが、皮肉にもウクライナ側が困難である。ウクライナの援軍や欧米から送られる軍需品は、キーウから前線まで数百キロ移動しなければならない。ロシアは空爆、ドローン、ロケット弾やミサイルによる襲撃で、補給線を破壊し続けている。阻止に成功するたび、兵員、燃料、弾薬、武器が奪われる。
キーウはNATO諸国に重火器、戦車、戦闘機、長距離防空ミサイルシステムなどの提供を懇願してきた。このような援助は、組み立て、ウクライナへの輸送、前線への配送に相当の時間がかかる。すべては、前線に到着する前に破壊しようとするロシアの有人機無人機の監視下に置かれることになる。しかし、同じく重要な要素として、訓練を忘れてはならない。
ウクライナは毎日、訓練済み兵員多数を失っており、交替は容易にできない。攻勢に出るには、ウクライナは新しい戦車、自走砲、防空システムを揃えた戦闘集団を創設する必要がある。戦場でロシア機甲部隊に勝てるまでには、個人レベルから、次に小隊単位、大隊規模と訓練に時間がかかる。ウクライナが十分に訓練しないまま部隊と新装備を戦場に投入すれば、効果は低くなり、その結果、ロシア軍の阻止はより困難になる。
1943年のクルスクの戦いでは、強力なドイツ戦車軍がソ連の防衛戦線の突破を図った。ソ連軍は数ヶ月かけ、精巧な防御陣地を準備し、大量の援軍を投入し、現地での反撃ルートを事前リハーサルし、大量の燃料、食料、弾薬を貯蔵しておいた。ヒトラー軍はズタズタにされ、何万人ものかけがえのない犠牲者を出した。防衛側も大きく損失を被ったが、ここまでの敗北を与えたため、ドイツ軍は攻撃能力を回復することなく、ソ連領から追い出されたのである。
今回のドンバスの戦いもクルスクの戦いと似た地形で行われ、この戦いの結果に多くのものがかかる。ロシアがUAF戦闘団の周囲に形成されたポケットを封鎖できれば、ウクライナ側がそれを破ることは事実上不可能であり、プーチンが新たな攻撃を行うにしても、キーウに戻る道が再び開かれるが、今回はウクライナ側の防御兵力がはるかに少なくなる。
もしUAFが戦線を維持し、ロシア軍に十分な損失を与えきれば、プーチン軍は攻撃に戻る能力を失い、防衛的にまわるのを余儀なくされるかもしれない。その場合、戦争は新たな、暗い局面を迎えることになる。
この戦いにどちらが勝つにせよ、ロシア軍とウクライナ軍の双方が深刻な損失を被り、市民インフラは想像を絶する損害を被ることになる。戦闘が終了すると、両軍とも部隊の再建、交代、再教育のため、おそらく数ヶ月は攻勢に転じることが困難になる。
最も現実的な解決策は、迫り来る戦いが消耗戦となり、1943年のクルスクの戦い以来、人類が見たことのないレベルの破壊となると認識することだ。この戦いでは、間違いなく勝者は生まれないだろう。むしろ、一方が他方よりひどい負け方をするだけだろう。そして、ドンバスの戦いの展開に関わらず、この戦争に軍事的勝利はなく、交渉による解決で終わるという苦い現実が待つのみだ。
アメリカの最優先課題は、第一に、戦争がウクライナ国境から拡大し、アメリカやNATO対ロシアの紛争に発展しないようにすること、第二に、戦争を早期に終わらせる方法の模索を支援することだ。戦争が長引けば、より多くのウクライナ人が苦しみ、死ぬことになる。■
Battle of Donbas: A Massive Tank War Could Decide Ukraine's Fate - 19FortyFive
ByDaniel DavisPublished1 day agoDaniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” Follow him @DanielLDavis1
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