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ロシア黒海艦隊旗艦モスクワがミサイル攻撃により喪失。ウクライナ沿岸にロシア海軍が近づけなくなり、艦名の持つ意味もあり、影響はこれから大きく出そうだ。

 Moskva seen from the air in 2009

巡洋艦モスクワRussian MoD picture.

 

クライナ軍がロシア黒海艦隊の旗艦スラバ級巡洋艦モスクワを攻撃し、艦内に深刻な被害を与えたと報じられている。ロシア通信社も被害を確認した。巡洋艦モスクワに関してこれまでに判明していることをまとめた。

 

 

 4月13日夜、ソーシャルメディア上で、ウクライナ軍がロシア巡洋艦モスクワを攻撃し、艦内に大きな被害をもたらしたとの噂が流れた。ロシア海軍の艦船がウクライナの砲撃に遭ったという同様の(しかし検証されていない)主張が過去にあったため、この主張に各人は懐疑的だった。哨戒巡洋艦ワシリー・ビコフとフリゲート艦アドミラル・エッセンが被害を受けたと噂されたが、事実でないことが判明した。

 真夜中に、国営の RIA Novosti や TASSを含む複数のロシアメディアが、巡洋艦モスクワ艦上で爆発があったと確認した。ロシア国防省は本事件に関して声明を発表していないが、ロシアメディアの情報源は国防省だった。

 RIA Novostiによると、モスクワ艦内で弾薬が爆発し、乗組員は避難した。タス通信も同様の声明を出し、その理由を「弾薬の爆発」だとした。

「ロシア黒海艦隊のミサイル巡洋艦モスクワが火災とその後の弾薬の爆発で深刻な被害を受け、乗組員は避難したと、ロシア国防省が木曜日に発表した」

 ウクライナの主張とロシアメディアの発言から、巡洋艦モスクワに長距離ミサイルが命中したと推測される。使われたミサイルの種類について公式発表はまだないが、ソーシャルメディアTelegramで流れたオデーサ州知事の声明によると、ウクライナは現地で設計・製造した対艦ミサイル「ネプチューン」を同艦に命中させたとある。

ネプチューンミサイルで襲撃したとするオデッサ州知事のメッセージ

 

ネプチューンミサイルは、2022年4月にウクライナ軍に納入される予定だった。開戦当初からウクライナでの沿岸ミサイル配備の必要性は常に提起されてきたが、ロシア黒海艦隊が領海付近で活動し陸上攻撃にミサイルを発射しても、ウクライナは対艦ミサイルを配備していなかった。多くの専門家やアナリストによると、戦争のため納入スケジュールが中断され、ウクライナに対艦ミサイルの能力が欠如していたのだという。ウクライナと英国が対艦ミサイルの納入について協議を行っている中で発生した巡洋艦モスクワへの攻撃は驚くべき事件となった。

 

Loss of Russian Cruiser Moskva: What we know so far
ネプチューン対艦ミサイル

 

 

また、ウクライナのメディアは、TB2ベイラクタル無人機がロシア巡洋艦の気をそらす中で対艦ミサイルを発射したと主張している。だがモスクワは複数の脅威に同時対処する能力を持つため、この主張は非現実的だ。

 モスクワは旗艦であるだけでなく、武器やセンサーでもロシア黒海艦隊中で最も強力な艦であった。同艦は2020年にメンテナンスとアップグレードを終えており、開戦以来、艦隊の先頭に立ち、スネーク島攻略で重要な役割を果たし、水陸両用部隊を支えた。

 損傷の低度や同艦の現状は目視では確認できないが、入手可能な証拠から沈没の可能性が濃厚だ。最も重要な証拠は、乗組員の避難だ。救命が不可能で、これ以上の努力も無駄と判断された場合、艦を放棄することがある。判断は、艦長によってなされることがあり、乗組員は艦から脱出する。したがって、避難は、直前に艦が沈み始めていたことを明確に示すものである。

 もし確認されれば、モスクワの喪失は、開戦以来、ロシア軍で最大の犠牲となったことは間違いない。主要艦の喪失は、通常、国民的トラウマを誘発し、ロシアの首都からとった艦名は、心理的影響を強める。軍艦の損失は、当該国の本土の一部とみなされるため、他の資産の損失と全く異なるが、モスクワの名前と役割が損失の重要性を高めている。

 

 

ロシア海軍艦艇の展開の様子を示した図は3月26日以降の動きをもとにしている(Credit: https://twitter.com/TheShipYard2)

 

 今回の事件は、ウクライナ軍が獲得した対艦ミサイルを見抜けなかったロシア軍情報部の失敗も浮き彫りにしている。

 先にアリゲーター級LSTを失ったにもかかわらず、ロシア艦隊は黒海で無制限に行動していた。抵抗も脅威もないため、ロシア軍艦はあえてウクライナ海域に侵入し、オデーサ付近を哨戒した。この事件以降、ロシア軍艦は黒海での活動に慎重になり、対艦ミサイルで設定したA2AD(Anti Access-Area Denial)地域に入らないよう、ウクライナ沿岸からスタンドオフの距離を保つようになる。

 また、東地中海は同級の巡洋艦2隻が航行しているが、トルコ海峡が閉鎖されているため、黒海艦隊の増強に使う選択肢はない。

 ロシアは、ウクライナの陸上からの艦艇攻撃を無力化するために、オデーサへの激しい空爆で報復を試みることも可能であろう。しかし、それでは自国の旗艦がウクライナの砲撃で失われたと認めることになる。

 モスクワ事件の後、新たな展開が待っていることは間違いない。一方で、フォークランド紛争でアルゼンチン巡洋艦ARAジェネラル・ベルグラノが喪失して以来の近代海戦上の一大事になった。■

 

Loss Of Russian Cruiser Moskva: What We Know So Far

Tayfun Ozberk  14 Apr 2022

https://www.navalnews.com/naval-news/2022/04/loss-of-russian-cruiser-moskva-what-we-know-so-far/

Story by Tayfun Ozberk with additional reporting by Xavier Vavasseur

 


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