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ミサイル巡洋艦モスクワ喪失の背景。ソ連時代の旧式設計、乗員の熟練不足の双方があいまったためか。非対称戦の事例にもなったことに注目。

 


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ロシア黒海艦隊の旗艦ミサイル巡洋艦モスクワがセパストポリに入稿した際の写真 (Photo by VASILY BATANOV/AFP via Getty Images)


 クライナはロシア軍との地上戦で軍事的な粘り強さを証明しているが、今週末、ロシア黒海艦隊の旗艦を巡航ミサイルで攻撃したと発表し、紛争を外部から見守る人々は唖然とした。

 劣勢に立たされたウクライナ軍が、ロシア首都の名を冠した軍艦モスクワを喪失させたのは、戦略的勝利と同時に象徴的な意味がある。

 ロシア国防省は、モスクワが偶発的な火災や爆発に見舞われたとの声明を発表したが、本日、米国国防省高官が記者団に対し、モスクワにはウクライナのネプチューンミサイル2発が命中したと断定した。



 アナリストが今回のロシアの損失が欧州紛争の将来にどんな意味をもたらすか計算するのと並行し、知名度の高い同艦の沈没は、内省的な質問を一部の米海軍観察者に促している。ウクライナが巡航ミサイルで旗艦を沈めたが、インド太平洋で中国と戦う状況で、米海軍の艦船はどの程度まで通用するのだろうか?

 海軍専門家3人がBreaking Defenseに語ったところ、答えは複雑だが、一般に米海軍は同様の攻撃からの防御、回復でずっと有利な立場だという。

 対艦弾は比較的安価で、中国が大量に投資しているため、その脅威は現実のものになっている。しかし、ロシア水上艦の設計は時代遅れで、一発でも命中すれば壊滅的な結果をもたらす欠陥がある。防御力もアメリカ艦ほど強化されていない。さらに、ロシア乗組員が無能であったため、攻撃後の回復が不能になったと思われるが、回復作業は米海軍が何度も実証してきた技である。

 シンガポール南洋理工大学のコリン・コーCollin Koh研究員は、巡航ミサイルについて「米海軍はインド太平洋の中国に大きな問題に直面している」と指摘する。「中国海軍も水上戦闘艦を着実に建造しており、米軍が対艦兵器を強化できれば、同じように中国に脅威を与えることができる」。

 対艦巡航ミサイルは世界の武器市場で容易に入手可能であり、中国にも「大量の備蓄」があるとコーは指摘している。

 ミサイルが効果を発揮するため艦艇を完全に沈める必要はない。乗組員の注意を攻撃から転じるだけのダメージを与えればよい、とコーは言う。弱体部隊がミサイル多数を1隻に集中すれば、1〜2発は有効打になる確率が高い。

 モスクワの最後の瞬間の詳細はまだ不明だが、攻撃直後に沈んだのではなく、港に戻る途中のダメージに屈したというのが一致した見方だ。

 イスラエル海軍は2006年に、イランから支援を受けたレバノンのヒズボラがコルベット艦INSハニットを陸上から攻撃した際に、同様の事件を経験している、とコーは指摘。

 「攻撃は軍艦ハニットを沈めず、行動不能に追い込んだ。この事件と今回のモスクワの沈没は、現代の海戦では、弱い相手も強い敵に非対称脅威を与えられるという考えの証明だ」と述べた。


船舶設計の重要性、防御力のアップグレード、そして安定した乗組員

 しかし、モスクワと米海軍の現在の水上部隊を比較するのは、リンゴとオレンジの違いを論じるのと同じかもしれない。

 元米国海軍大佐でテレマス・グループの副社長であるジェリー・ヘンドリックスJerry Hendrixによれば、まずモスクワなどソ連時代の艦船設計と関係がある。1970年代と1980年代に建造されたソ連艦は、攻撃用装備を甲板上に格納する選択をした。そのため、一発でも当たれば火災が発生し、ミサイル格納容器が加熱され、時限爆弾と化す。

 「スラバ級、キーロフ級、ウダロイ級など、現在も現役のソ連時代艦艇の設計の悪さは計り知れない」とヘンドリックスは言う。「ロシアやソ連が多大な投資をした特殊設計の艦船は、連鎖的な失敗を招く」

 対照的に、アメリカ海軍は、攻撃用弾薬を甲板下に保管する。火災がミサイルを「調理」する恐れがある場合、乗組員は、被害が拡大する前に素早く該当場所に殺到する。

 もう一つの問題は、ロシア水上艦隊が、高性能潜水艦部隊ほどの投資と注意を受けていないことである。また、「古風な」防空システムを搭載しており、現代の巡航ミサイルや弾道ミサイルの軌道に対応できず、小型対象を感知できる感度を有していない。一方、米海軍のイージス戦闘システムは、新しい脅威に対応するため、何十年にもわたって絶え間なくアップグレードされている。

 「イージス艦は、海面から垂直に落ちてくる弾道ミサイルの軌道まで、あらゆる方面を見るため特別に設計され、アップグレードされ、修正されてきました」(ヘンドリックス)。(イージス艦は2016年にイエメン沖で米艦を狙ったミサイル攻撃の迎撃に成功したと伝えられている)。

 退役海軍大将で、現在は海洋戦略センターCenter for Maritime Strategyを率いるジェームズ・フォッゴ3世James Foggo IIIは乗組員も艦が攻撃を克服できるかの重要要因とBreaking Defenseに語った。

 フォッゴは、モスクワの沈没がフォークランド紛争40周年と重なると指摘している。フォークランド紛争では、イギリスとアルゼンチンが艦船2隻を今回のロシア艦船とよく似た事件で喪失した。

 どちらのケースでも、乗組員は攻撃に対し防御するか、少なくとも事後的に被害を軽減することができたはずだった、とフォッゴは言う。だが、双方のケースで乗組員はどちらもできなかった。

 アルゼンチン艦には水密ドアがあり、攻撃で船体が破壊された場合、浸水を遮断する設計だった。乗組員が浸水制御できなかったのは、乗員の準備不足を示すものだ、とフォッゴは言う。英国艦の乗組員はミサイル飛来に気づかなかったという。その後、同艦は火災に見舞われ、延焼して帰港前に破壊されてしまった。

「モスクワについて)憶測以外の事実はないが、(アルゼンチン艦の)状況と似ていると言っておこう。自己満足だ」(フォッゴ)。


プーチンの恥辱

ロシア国防省は、モスクワが人工岩礁に変身したのはウクライナのせいではないとしているが、艦の喪失は認めている。

 首都の名前を冠した軍艦を戦争に送り込んだことは、「我々はここにいて、ここに留まるつもりだという信号を送ったのです」とヘンドリックスは言う。「同艦の損失はプーチンにとって恥ずべきこと、ロシアにとって恥ずべきことであり、ロシアの国威発揚に大きな打撃を与える」。

 フォッゴは、旗艦を失い、ロシアがどのような報復措置をとるかを懸念していると述べた。多くの国の旗艦は通常、よく整備され、比較的最新鋭の艦船で、その国の最高の象徴だという。モスクワはプーチンのお気に入りと噂されていた。

 フォッゴはまた、モスクワの運命と旗艦としての地位について、皮肉なことがあると指摘した。ロシア軍の侵攻の初期に、ウクライナ政府は旗艦であるフリゲート艦ヘトマン・サハイドチニHetman Sahaidachnyをロシア軍に奪われないように、オデーサ北東のニコラエフ港でスカットル(意図的に沈めること)させた。フォッゴによると、モスクワ含む同級の他艦は、ウクライナがソ連の一部であったときに同港で建造されたという。

 「そこにウクライナ旗艦が沈んだままになっている。そして今度はウクライナ側の主張が本当なら黒海艦隊旗艦のモスクワを沈めたのです」「これではまるでハリウッドの脚本だ」■


What should the US Navy learn from Moskva's demise? - Breaking Defense

By   JUSTIN KATZ

on April 15, 2022 at 5:46 PM





コメント

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