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ライトニング空母構想の実証を進める米海兵隊・海軍。実際の作戦環境を想定し最適化を模索中。日本にも参考となるはず

 


海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA)211所属のF-35B ライトニングIIが強襲揚陸艦USSトリポリ(LHA-7)から発艦した April 2, 2022. US Navy Photo

 

強襲揚陸艦USSトリポリ艦上にて---海兵隊が4月2日記録を破った。F-35BライトニングII共用打撃戦闘機を16機も強襲揚陸艦に搭載したのだ。

 

曇天の下で甲板要員が海兵隊パイロットに発艦地点を示し、その他機体を海軍最新の大型強襲揚陸艦USSトリポリ(LHA-7)艦上で移動させた。今週は更に多くの機体が加わる。

 

各機は海兵隊戦闘攻撃飛行隊225「ヴァイキングス」と海兵隊戦闘攻撃飛行隊211「ウェイクアイランドアヴェンジャーズ」の機体で、ともにユマ海兵隊航空基地(アリゾナ)に駐屯している。さらにユマとニューリバー(ノースカロライナ)の海兵隊作戦試験評価飛行隊1の所属機も加わる。海兵隊はF/A-18ホーネットおよびAV-8BハリアーをF-35Bに交替させつつある。

 

とは言えトリポリにF-35B十数機を搭載し運用するのは記録更新や写真広報のためではない。同艦には500名の海兵隊員も乗る。関係者はUSNI Newsに今回のMAG-13訓練をトリポリで展開するのは大型艦と海兵隊機材により統合MAG(海兵航空集団)作戦を展開する一歩に過ぎないと語り、これまでにない動きとする。

 

「これまで20年にわたり展開されたのとは別の形になる。従来は飛行隊が中東に展開し各種任務にあたってきた」と説明するのはMAG-13司令チャド・ヴォーン大佐Col. Chad A. Vaughnだ。同集団もユマに本拠を置く。

 

今日の敵勢力は将来にわたり、特に空で米軍と対峙してきた敵を上回る存在になる。このため従来を上回る規模の共同作戦が必要となると関係者が認識している。

 

「未経験の技量のセットが必要となる」とヴォーン大佐はトリポリ艦上で艦長ジョエル・ラング大佐Capt. Joel Langに述べている。

 

昨年10月MAG-13は隷下飛行隊を砂漠統合現場演習でカリフォーニアのトゥウェンティナインパームズにある海兵隊航空地上戦闘センターに派遣した。「MAG司令部にとっても地上から戦闘の仕方を学ぶ機会になった」「可能な限り多くのF-35を投入し、同時にMAGパイロットと司令部が海上から戦闘を展開する方法を同時に訓練する機会になった」(ヴォーン)

 

海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA)211のF-35BライトニングIIがUSSトリポリ(LHA-2)に着艦した。April 1, 2022. US Navy Photo

 

トリポリの艦名をつけた以前の小型ヘリコプター強襲揚陸艦と同様にアメリカ級トリポリにはウェルデッキはないが、海兵隊航空作戦を想定した設計になっている。同艦にはLHD級大型強襲揚陸艦を上回る大型燃料貯蔵施設があり兵装庫も拡大しているほか、指揮統制通信機能も充実している。

 

「統合部隊司令やMEF指揮官が認可してくれれば本艦にもっと多くの機体を搭載できる。本艦は航空作戦にぴったりだ」(ウォーン)

 

「ライトニング空母」構想は海兵隊やF-35事業推進室が提唱してきた。「MAGの訓練で最適な機会になっている」とヴォーンは語り、VMX-1の作戦評価官がトリポリ艦上に今週加わり、F-35B運用のフィードバックを行う。

 

構想には前史がある。2003年3月のイラク侵攻で強襲揚陸艦USSバターン(LHD-5)、USSボンノムリシャール(LHD-6)に「ハリアー空母」の名がつき、AV-8Bハリアー攻撃機2個飛行隊を展開し、任務部隊51に提供した。米軍連合軍はバグダッドを目指していた。各艦はハリアー分遣隊を搭載したものの、海兵隊ヘリコプターが大勢を占めていた。

 

今回の海上演習には六ヶ月の準備期間が必要だった。ラング艦長は2020年9月よりトリポリ艦長で、今回の演習を乗員幕僚合わせ1,100名に実戦の予行となるよう事前にMAG-13と打ち合わせた。最大何機まで運用可能かを試すだけでなく、運用面で最適な機数上限を探る目的もある。

 

「どれが一番良い結果を出すのか確かめるべく、作戦環境を再現する。最も効率の高い方法を探る。海上部隊として威力を最大にする最適化でチームはやる気いっぱいです」(ラング)

 

強襲揚陸艦USSトリポリ(LHA-7)が太平洋を航行し海兵隊のライトニング空母構想の実証にあたった。 April 2, 2022. US Navy Photo

 

演習は一週間にわたり展開し、4月7日終了するが、MAG海兵隊員とトリポリ乗員は発艦、回収、移動、などF-35Bを艦上であらゆる面で試す。「MAGとして戦闘展開方法を学びつつあり、艦上からどう展開するのがいいのか、艦上で機体が多すぎて動きがとれなくなくなる事態を回避する方法を学んでいく」とヴォーン大佐は説明している。

 

ただしライトニング空母構想には疑問点も残る。F-35Bへの燃料補給が限定されること、E-2Dアドバンストホークアイのような早期警戒機を搭載していないことだ。USNI Newsでは今年後半に規模を拡大したテストが実施されると聞いている。

 

ヴォーンがこう付け加えた。「目標は海軍、海兵隊のチームがこの構想を採択することです。運用方法は確立ずみです」■

 

Marines Load Record 16 F-35Bs Aboard USS Tripoli Test of 'Lightning Carrier' Concept - USNI News

By: Gidget Fuentes

April 5, 2022 1:14 PM • Updated: April 5, 2022 3:17 PM



ライトニング空母構想は日本にも参考となりますね。しかし、強襲揚陸艦になんでも期待すればモンスターのような大型艦になり、結局正規空母と同じになってしまいます。ここは統合作戦として空軍機材で早期警戒任務にあたらせるとか、知恵の使い所ではないでしょうか。海軍だけ海兵隊だけで作戦が実施しにくくなっているのでしょうね。なお、アメリカ級は排水量5万トンとなかなかの艦容です。


コメント

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