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なぜウクライナへF-16やF-15を供与しないのか----戦闘機よりも防空装備を提供したほうが高効果低リスクとなる理由。

 



クライナ空軍は公式ツイッターでF-16ファイティングファルコンやF-15イーグルのような西側機材をNATOに求めている。説明文にはウクライナ空軍にこうした機材がなければロシア空軍に対し優位に立てないとある。



ウクライナはパイロットを養成すれば米製ジェット戦闘機で実戦に参加できるとし、数週間の訓練で十分とするが、F-15やF-16で戦闘に臨むためには普通の訓練では十分とはいえない。新機材のコックピットで単なる操縦なら簡単だろうが、戦闘となると話は別だ。米国のパイロットでも他国より長い訓練をしているとはいえ生き残れる保証はない。まして戦闘に勝てるかは不明だ。


ウクライナ空軍にはあいにくだが、この要望は却下されそうだ。


ウクライナ空軍は自国が戦場となり、勝ち目がないといわれながら雄々しく戦い、領空を死守している。そこに米製第4世代高性能機材が加わればロシア軍を押し戻せると見る向きは多い。ことにロシア軍は東部のドンバスに中心を置き、部隊を移動させている。


だが真実は、ウクライナに多用途で実績あるF-16や航空優勢でチャンピオンのF-15を供与するとは一般で言うような簡単なことではない。リスクを考えればもっと低リスクの支援策より大きな恩恵が生まれるかといえばそうでもない。


ウクライナがF-15やF-16を要求する理由とはRed Flag - Changing With The Times > Nellis Air Force Base > Article Display米空軍の第64、65アグレッサー部隊のF-15イーグル、F-16ファイティングファルコン (U.S. Air Force photo by Master Sgt. Kevin Gruenwald)


ウクライナが西側に接近してきたとはいえ、軍事では多くがソ連時代の装備品で、空軍も例外ではない。F-15、F-16ともに1970年代から供用されているが、ウクライナではSu-27やMiG-29を運行している。ポーランドのMiG-29をウクライナへ融通する案が浮上したのは、ウクライナパイロットにも機種変換が一番容易な機種のためだ。


単純に就航開始時で比較すれば、ウクライナ機材は米ファイティングファルコンやイーグルより新しく、MiG-29がロシアで供用開始したのは1982年、Su-27は1985年なのに対し、F-16が1978年、F-15は1976年だ。


米空軍第114戦闘航空団のF-15CがスホイSu-27フランカーの機列の横を通過した。クリアスカイ18演習でウクライナのスタロコスティアンティニフ基地にカリフォーニアから移動した。 (U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. Charles Vaughn)


しかしこの間、アメリカと同盟国は、第4世代戦闘機プラットフォームを更新し、極めて優秀な現代機へ変貌させてきた。こうした機体は、新型ステルス機のレーダー探知を回避する能力はないものの、激しい戦闘環境でも高い成果を上げる能力がある。


ロシア機も同様の改良が施し、今回の紛争ではウクライナの飛行士よりも明らかに優位に立っている。そのため、ウクライナは西側戦闘機の性能で、ウクライナ領空で優位性を得られると考えているのだ。


NATOの戦闘機が威力を発揮すると考えてよい理由がある。F-16は軽量な制空戦闘機であったが、その後マルチロールプラットフォームとして大きな価値を発揮している。F-15は素晴らしい評価を得ており、イーグルは現時代の(そしておそらく他の時代の)最も強力な制空権を発揮する戦闘機である。F-15は104戦全勝で喪失ゼロとの戦績を残しており、F-15のようなドッグファイトを得意とする戦闘機は他に存在しない。


ウクライナのパイロットはソ連時代の戦闘機に慣れているため、戦闘でF-16やF-15を効果的に使えるようになるには、慣れる必要がある。ウクライナは、2〜3週間で移行可能と言っているが、その可能性は極めて低い。だが、同国の厳しい状況を考えれば、実現可能かもしれない。


米空軍には戦闘機パイロット向けF-16ファイティング・ファルコンの操縦訓練コースがある。ただし、このコースの所要期間は6週間以上で、ウクライナのパイロットが訓練を短縮できる可能性はあるが、短期コース終了後に新型機の高性能を発揮できる可能性は低いだろう。


しかし、ウクライナは今回話題に上る航空機を運用したことがない。数機をウクライナの滑走路に着陸させ鍵を渡しても、戦闘で飛ばすには十分ではないだろう。実際、航空機をウクライナに持ち込むのは簡単なことだ。


米空軍は各機に整備要員25名を投入している

機種で異なるが、F-16のような低コストで運用可能な機体でも、運用に膨大なメンテナンスが必要で飛行時間1に対し整備時間16がかかる。


高度なまで専門化した航空機整備士は、修理はもちろんのこと、メンテナンスでも専門的な訓練を必要とする。


F-15Eストライク・イーグルやF-16Cファイティング・ファルコンを運用する米空軍の第332航空遠征隊によれば、航空機1機に対して25人の整備員が必要で、もちろん、より少ない人員でも維持可能だが、ハードな戦闘飛行では、通常の訓練飛行より多くの整備や修理が必要になることは間違いない。


これには、飛行前、飛行中、飛行後の安全確認(飛行中とは、任務続行のために出発する前に再武装するために着陸すること)を行う個人と、「バック・ショップ」と呼ばれる専門グループも含まれる。


これらの「バックショップ」整備士は、武器、誘導装置、推進装置の整備や修理など、より特殊な技術に特化する。こうした仕事は、空戦を継続するために不可欠だ。ソケットの位置を間違えたり、パネルの固定が甘かったりすると、致命的な墜落事故につながることもある


戦闘機を戦闘に飛ばすということは、能力の限界に挑戦し続けるということであり、機体やその他部品に多大なストレスを与えることを意味する。このような戦闘機を飛行状態に保つには、多大な訓練が必要である。空軍の戦術機整備士になるには、テキサス州ウィチタフォールズにあるシェパード空軍基地で5種類の上級訓練コースを修了しなければならない。基礎訓練に加え、各職務に特化した訓練を約18カ月かけ修了した後、各隊に配属され、その業務に完全に熟達するまでOJT(On-the-Job Training)が続けられる。


高度な訓練を受けた整備士は、航空機整備に必要な資材、特殊機器と大規模な物流事業に依存することになる。そのためには、特殊機材を置く場所から、欧米製部品をウクライナの滑走路に定期的に輸送する手段まで、ウクライナにまだない新しいインフラが必要となる。目標はNATO軍をウクライナに派遣せず、これらすべてを達成することである。

 仮にウクライナが数週間でF-16やF-15を使いこなせるまでパイロットを訓練できても、その間に機体整備員を十分に訓練できないだろう。しかし、仮にそれができても、武器に関して別の深刻なハードルに直面することになる。


しかし、アメリカのF-15やF-16などの戦闘機と、ウクライナのソ連時代の戦闘機とでは、搭載兵装がまったく違う。ロシアのR-27空対空ミサイルをF-16に装着して、引き金を引けばうまくいくというものではない。最新の空対空ミサイルや空対地ミサイル、さらには最新の爆弾は複雑な技術を利用しており、専用の取り付け金具と特別な訓練を受けた技術者が必要だ。航空機兵装システム専門家の養成にも綿密な訓練(空軍によると45〜86日分)が必要だ。


もちろん、ウクライナにも兵器技術者がいるので、機体の武装の仕方などについては時間はかからないかもしれないが、一朝一夕にできることではないのは確かだ。


しかし、同様に重要なのは、ウクライナが戦闘で真価を発揮するため、各機に専用弾薬を安定供給する必要があることだ。ウクライナは兵器について外部から供給を受けているため、このインフラ整備はすでに行われているが、ロシア軍が供給ラインを狙えば、ウクライナに兵器や部品の流れを維持するのはかなり困難になろう。


50th EARS refuel F-16s

(U.S. Air Force photo)


S-400 Triumpfのようなロシア製高性能防空システムの運用範囲は約250マイルで、ウクライナ戦闘機が領空を制圧するためには、ロシア国内の防空システム、さらにはベラルーシと交戦する必要が出てくる。実際にウクライナ当局者やパイロットが戦闘機の要求の一部として主張している。そうでなければ、ロシア領に近づきすぎたウクライナのジェット機は高性能防空装備で撃墜され続けることになる。


しかし、ウクライナがたF-15やF-16をロシアに送り込む必要がある最大の理由は、ロシアの防空システムではない。最大の理由は、ロシアによる空爆のほとんどは、ロシア領空を離れない航空機が行われ行っているからだ。



NORAD, Russian Air Force make history in combined efforts > Joint Base  Elmendorf-Richardson > News Articles

ロシアの Su-27 (U.S. Army photo by Maj. Michael Humphreys)


ウクライナはロシア国境に接しているため、ロシア軍は国境を越えてウクライナにミサイルを発射することなく、1日に数百回の出撃が可能である。同様に、ロシアの統合防空システムは、地球の裏側まで到達するため、AWACS(空中早期警戒管制システム)に大きく依存している。ウクライナのF-15やF-16は、ロシアの空爆を阻止しようとすれば、空爆を支援する戦闘機や爆撃機、AWACSと交戦するためロシア領空内に飛来せざるを得なくなる。


このことは、航空機だけでなく、その運用に必要な訓練や装備、弾薬をウクライナに供給するNATO諸国にとって問題となる。ウクライナのF-15やF-16がロシア領空に入れば、西側諸国が防衛的な支援をしているというよりも、ロシアに攻勢をかけるためウクライナに装備を供与したように見えるのは間違いない。ロシアに攻め入ることで、ロシア政府はウクライナを支援する施設やポーランドなどの物流供給ラインを攻撃し、米国製戦闘機による脅威を中和する反応に出る可能性があるため、紛争がウクライナの国境を越え拡大する可能性が劇的に高くなる。


ウクライナは更に戦闘機を喪失し、戦いは続く

NATOがウクライナにF-15やF-16を提供しても、ロシアの圧倒的な数的優位を相殺できる可能性はないだろう。ロシアは戦闘機を約1500機保有しており、世界第2位の空軍力を誇っている。ウクライナは開戦当初100機足らずだったが、今では50機近くになっている。ウクライナに西側の戦闘機を数十機提供しても(可能性は極めて低いが)、互角に渡り合うには十分ではないだろう。


その代わり、ウクライナのパイロットは、ロシアのパイロットと戦闘に入ることになる。そして、戦闘機を滑走路に着陸させ、ミサイル攻撃を繰り返し、数週間の訓練しか受けていない技術者や整備士が、戦闘機を極めて迅速に戦場に戻し、また同じことを圧倒的な勝算のもとに行わなければならない。これでは、戦闘機多数が墜落し、パイロット多数が死んだり、負傷したり、捕らえられたりすることになる。


ウクライナの飛行士たちが、少ない人数で大きな成果を上げる能力を発揮したように、事態が非常にうまくいったとしても、この戦闘機の流入(あわせて必要な訓練、装備、資材、弾薬のすべて)は、ロシア軍を自国領土に押し戻すだけの効果はない。ロシアはウクライナで15万人以上の兵力を運用している。


つまり、戦闘機提供はウクライナの国境を越えて紛争が拡大させる可能性はあるが、それだけでウクライナ国内の戦闘を終わらせることができるとも思えない。


ウクライナ防空豚が撃墜したロシアのSu-35は大4世代機として最先端の機材の一つ。(Ukrainian Ministry of Defense)


多くの指摘があるが、戦闘機を提供するよりも、防空システムを使ってウクライナ領空をコントロールするほうが、費用対効果は格段に高い。防空システムにはもちろん訓練やロジスティックスも必要だが、一部NATO加盟国が運用中のソ連のS-300のように、供用が長く続くシステムをウクライナに供給すれば、追加訓練や設備インフラがなくてもロシアの航空機や巡航ミサイルとも交戦できる。


これらのシステムは、戦闘機のようにロシア国内のロシア航空機と交戦はできないだろうが、より粘り強いオプションである理由の一つである。もちろん、以前ウクライナにMiG-29を送朗とした際と同様に、防空システム(と、それが発射する弾薬)の供給が限られていることが懸念される。

 最終的にウクライナがF-15やF-16を要求するのは、たとえ運用に苦労しても、ないよりはあったほうがいいに決まっているからだろう。しかし、これらの戦闘機がウクライナ防空に提供できる価値はかなり限られており、ウクライナ内外のロシアの防空網に狙われ、数で大きく劣る中で地上目標を空爆で攻撃しても、最も効果的で実行可能な支援方法とはいえないだろう。


ウクライナには多くの支援が必要だが、目的は紛争の拡大ではなく、ウクライナの人々を守ることとすべきだ。F-15やF-16をウクライナに提供すれば確かに助けになるが、ほかの選択肢と比較した場合、コストやリスクに見合う価値はない。■


Why can't NATO give Ukraine F-15s or F-16s? It's about more than pilot training - Sandboxx

Alex Hollings | April 4, 2022


Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.

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