スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナ関係のニュース:ドイツがレオパルド戦車を(イタリア経由で)で供与か、米国はウクライナ軍を国内で訓練、マウリポル包囲戦の行方など


 

A German Leopard 1A5 main battle tank. Germany is currently considering approving the transfer of 50 Leopard 1 tanks to Ukraine.

RAINER LIPPERT VIA WIKIMEDIA

 

 

イツの防衛関連企業ラインメタルのトップは、ウクライナ当局が承認すれば、6週間以内に冷戦時代のレオパルド1主力戦車の送付を開始できると述べている。発言は、ドイツ政府に移送を許可するよう圧力をかけている。オラフ・ショルツ首相は、自党や連立政権内でウクライナへの戦車供与を支持する声が高まっているが、計画を保留しているとされる。

 

 

 

 ドイツがレオパルド1の搬送を許可すれば、ウクライナに戦車や装甲車を送った、あるいは送る計画を発表した他国にドイツが加わることになる。ウクライナが同戦車の操作方法や整備をどう訓練するのか、必要なサプライチェーンをどう確立するのかは不明である。いずれにせよ、これは最近ウクライナの国際的パートナーが地対空ミサイルや対艦ミサイル、火砲など、より高性能の兵器を同国に導入する動きが広がっている一部である。

 ロシア軍はウクライナ東部のドンバス地域とその周辺を確保するため、攻勢を強める準備をしているようだ。週末には、商業衛星画像プロバイダーのマクサール・テクノロジーズが、ウクライナの都市ハリキウの東約8マイルの道路上を移動するロシアの装甲車両、野砲、トラックの画像を公開した。車列は、合計数百台の車両で、前線に向かい南下しているように見える。

 

以下の最新ニュースをお伝えする。

 ドイツ新聞ハンデルスブラットHandelsblattがラインメタルCEOであるアルミン・パッペルジャーArmin Pappergerのコメントとして、ウクライナにレオパルド150両を譲渡する可能性を伝えた。パッペルジャーによると、最初の戦車は譲渡の承認後6週間以内にウクライナに移動が可能で、ウクライナ軍が戦車全車両を受け取るのは3ヶ月後になる。

 パッペルジャーは、譲渡が承認されれば、戦車はラインメタルのイタリア子会社ラインメタルイタリア経由で送られると述べ、イタリア軍で供用されていた車両を示唆した。イタリア軍は2008年までレオパルド1を運用していた。ベルリン政府は、ドイツ製兵器システムを外国から第3国へ再移転させるのを厳しく規制している。ドイツのクリスティーネ・ランブレヒト国防相も週末に、ウクライナに直接譲渡できる装備は「限界に達している」と発言していた。

 この計画が実際にいつ動き出すかは不明。ショルツ首相は、戦車やドイツ製歩兵戦闘車「マーダー」(台数不明)のウクライナ供与について、さまざまな理由で最終決定を先延ばしにしているとされる。

 レオパルド1が旧イタリア製であっても、第三国経由の譲渡を認めれば、ロシア当局の反発のみならず、ドイツ国内の政治的懸念も和らぐかもしれない。ドイツ政府は、ロシア産天然ガスからの脱却をめざしているが、現状では天然ガスが重要なエナジー源であることに変わりはない。ドイツはチェコ共和国から旧東ドイツ軍BMP-1歩兵車両をアップグレードするなど、ウクライナへの第三者提供を承認している。

 また、ウクライナ軍がレオパルド1を受領した後、実際に運用できるのかとの懸念もある。ウクライナ軍には同戦車の運用・整備経験がなく、部品や105mm主砲用弾薬のサプライチェーンも未確立だ。

 ラインメタルのパッペルジャーはハンデルスブラット紙で、スキルを有するウクライナ人なら、数日でレオパルド1の操作訓練を受けられると語った。「レオパルド1では、集中的な訓練が必要だ。しかし、ウクライナ人が戦車を欲しがるのであれば、方法は見つかるはずだ」と、現在の連立政権の一翼を担うドイツの自由民主党の防衛政策スポークスマンであるマーカス・フェーバーMarcus Faberが、同紙に語っている。

 

 ウクライナ軍が最終的にレオパルド1戦車を受け取るかはともかく、この2週間で他国から今までより実質的な軍事支援計画が出てきた。今週末には、英国政府がウクライナへの対艦ミサイル供与で詳細を詰めていることが明らかになったが、具体的な兵器システムは特定されていない。英国当局がハープーン対艦巡航ミサイルの輸送を計画しているという噂や、すでに輸送したとの噂があるが、裏付けは何もない。

 興味深いことに、英国製マートレットMartletミサイルがウクライナで地対空ミサイルとして使用されているように見えるビデオクリップが公開された。英国当局は、これまでウクライナに肩撃ち式の地対空ミサイルのスターストリークStarstreakの供与を確認していたが、マートレットの供与は公式発表されていない。マートレットは、スターストリークと同じ手持ち式や発射台から発射でき、構成によっては、海洋や地上の目標にも使用できる。

 米軍は現在、一般に「自爆ドローン」とも呼ばれるスイッチブレードSwitchblade滞空待機弾の使用について、ウクライナ人要員向け訓練方法を模索している。4週間前、アメリカ政府がウクライナ軍に同兵器100基の供給を始めたことが初めて明らかになった。週末には、米国国内でウクライナ軍に同無人機の使い方を訓練したと米国防総省が明らかにした。ウクライナ軍隊員は、ミシシッピ州ビロクシの海軍小型船舶教習所(NAVSCIATTS)で行われた別の訓練コースに参加するため、侵攻開始前から米国に滞在していた。昨日、ウクライナ帰国を前に、オースティン米国防長官が隊員と談話した。

 米国防総省高官は本日、スロバキアが先週ウクライナに譲渡した長距離地対空ミサイルS-300が破壊されたとする証拠はない、と述べた。週末にロシアが南部の都市ドニプロの空港を攻撃した際、破壊された標的の中にS-300が含まれていたとの報告があった。ウクライナの地元当局者は、空港が事実上破壊されたと述べていた。

 ウクライナ当局はここ数週間、戦車や装甲車、その他の高性能兵器システムの追加供与を繰り返し要請している。これは、ロシア軍の主要な作戦の焦点が、同国の東部と南東部の地域に移っているためだ。マクサール・テクノロジーが週末公開した衛星画像では、ドンバスの前線に向かい南下する、ロシア軍の大規模な車列が写っており、新たな大規模攻撃の計画を示している。

 英国国防省が発表した紛争に関する最新評価では、ロシア軍はドンバスのウクライナ支配地域を砲撃し続けているが、これまでのところ攻撃は撃退されているとある。英国政府関係者はまた、ロシア軍がマリウポルを完全確保するために進行中の戦いで、論争の的になっている白リン焼夷弾が使用される可能性を警告している。アゾフ海に面した南東部の戦略的な港湾都市マリウポルは、1カ月以上にわたり包囲されているが、ウクライナ防衛隊は持ちこたえている。この地域を完全確保するのは、クリミア半島への陸橋を確保するロシアの大きな目標のための重要な要素だ。

 米国防省高官は、ドンバスでロシアが新たな攻勢を開始する兆候はまだないが、ウクライナ北部の地域から撤退した部隊がその方向に動いているように見えると述べている。また、ロシア軍がマリウポルで使っている壊滅的な戦術を他のウクライナの都市にも使うことが懸念されるとも述べた。

 また、これまでの戦闘の結果、ロシアの大隊戦術群の一部が完全に戦闘不能に陥ってたとの指摘もある。

 

 ウクライナ東部で激戦が続いているのは確かだ。同地域からは市民数千人が避難している。ウクライナ当局によると、クラマトルスク市から約16万人が避難している。先週、避難拠点となっていた同市の鉄道駅がロシアのミサイル攻撃を受け、子供5人含む少なくとも57人が死亡、さらに114人が負傷した。

 米軍によると、ロシア軍は侵攻開始以来、ウクライナに弾道ミサイルと巡航ミサイル1500発以上を発射している。ウクライナ海軍がこれまでの戦闘で事実上無力であったことを考えれば、ロシア軍は他の対艦巡航ミサイルを陸上攻撃に使用している可能性がある。

オーストリアのカール・ネハンマー Karl Nehammer 首相は、今日モスクワでロシアのプーチン大統領と会談する。ネハンマー首相は、2月のロシアのウクライナ侵攻開始後に、プーチン大統領と会談する最初の西側指導者となる。同首相はキーウでウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とも会談しており、欧州の指導者多数がキーウ訪問をしている。■


Ukraine Situation Report: Leopard Tanks Could Arrive In Six Weeks With Germany's Approval

Ukraine has been asking for tanks as a major Russian offensive in Ukraine's east looms.

BY JOSEPH TREVITHICK APRIL 11, 2022


 

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...