スキップしてメイン コンテンツに移動

ドンバスの戦いの行方が戦況を左右する。ロシアの勝利の可能性にジョンソン首相が西側で初めて公に認めたが、どうなるか。

 

 

シア軍は、戦争の行方を左右しかねないウクライナ東部で攻撃準備に入っており、1945年以来ヨーロッパで最大の人道的大惨事を終わらせるための和平交渉の見通しは、これまで以上に暗くなっているようだ。

 ウクライナ戦争が第2段階に入ったのを受け、ロシア軍が狙いを明らかにした。特別作戦の第2段階の開始以来、ロシア軍の任務の1つは、ドンバスとウクライナ南部での完全支配の確立である。国営通信タス通信によると、ロシア中央軍管区の司令官代理ルスタム・ミネカエフ少将Maj. Gen. Rustam Minnekaevは金曜日に、「これによりクリミアへの陸上回廊が確保される」と述べたという。

 ミネカエフ少将の発表は、ロシア軍の攻撃は最東端のドンバス地域に限定されるとしてきたウクライナや西側の評価を覆すもので、ロシア軍は供給ラインを短く安全としつつ、有利な戦場地形の恩恵を受けられる。

 ロシアが南西部の重要な港湾都市オデーサを完全支配するつもりなのか、それともロシアと同盟関係にあるドネツクおよびルハンスク人民共和国(DPRおよびLPR)の代理国家を通じ支配するつもりなのかはまだ不明で、ロシアの占領下にあるウクライナ領土に対する計画もクレムリンは明らかにしていない。ウクライナの国家安全保障・防衛評議会のオレクシー・ダニロフOleksiy Danilov書記は、ウクライナの新聞ウクライインスカ・プラウダのインタビューで、占領下にある南部ケルソン市を指す「ケルソン人民共和国」は存在しないと明言した。最近の報道によると、ロシア政界には、ケルソンをクリミアに編入したうえで、住民投票を実施し、ロシアに編入する計画があるという。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワMaria Zakharova報道官は金曜日に、モスクワは4月15日に和平提案を提出したが、ウクライナ側の返答がないと述べた。 クレムリンのドミトリー・ペスコフDmitry Peskov報道官も同じことを言った。「現時点では、ウクライナ側は我々の草稿を受け取っており、ボールは彼らの側にある。我々は回答を待っている」。

 ウクライナ大統領顧問のミハイル・ポドリャクMikhail Podolyakは20日、ロシアの提案を受け取っており、数日間かけて検討すると明らかにした。

 ウクライナは正式回答していないが、ダニロフ書記は20日、和平交渉の可能性には悲観的な見方を示した。「(戦争は)いつでも再発の可能性がある。ロシア連邦との和平協定など信じていない。我が国の歴史で、何度もこのような経験をしてきた。和平合意は常に破られてきた」と記者団に語った。

 英国のボリス・ジョンソンBoris Johnson首相は今週、プーチン大統領が誠実さを欠いているため、ロシア・ウクライナ和平交渉は絶望的だと警告した。彼は記者団に、「プーチンの誠実さの欠如が明らかな今、ウクライナがプーチンと交渉できるかは非常に難しい」と述べた。「ワニに足を顎で掴まれた状態で、交渉できますか?それが、ウクライナが直面している困難だ。我々は戦略を続け、武器を供給し続けなければならない」と述べた。

 モスクワとキーウ両政府は、ドンバスとウクライナ南部での戦いが戦争の帰趨を決すると考えているようだ。

 「ドンバスの戦いは、我々にとって非常に重要である。」「理由はさまざまだが、まず安全という理由がある。ドンバスに展開する我軍は、この国で最高の軍隊です」とヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、先のインタビューで述べた。、「ロシアはこの部隊を包囲し、破壊しようとしている」と述べ、今後の戦いが「戦争全体の行方を左右する可能性がある」と付け加えた。

 ウクライナがドンバスのロシア軍を大敗させれば、クレムリンにはこの戦争を継続する選択肢が大幅に制限される。ドンバスでロシアが失敗すれば、侵攻の本来の目的である政権交代とウクライナ軍事力の永続的低下の2つは、核エスカレーションに頼らなければ達成がほぼ不可能になる可能性がある。

 しかし、ロシア軍がウクライナ東部部隊を隔離し破壊することに成功すれば、モスクワはウクライナの訓練された武装部隊の大部分を無力化することになる。元中佐でDefense Prioritiesのシニアフェローであるダニエル・デイビスDaniel Davisが指摘するように、ロシア軍がドンバス支配を強化し、ウクライナ第二の都市ハルキウを包囲し進軍を止める要素はない。ドンバスで決定的な勝利を収めれば、ロシア軍はオデーサ方面への攻撃、ひいてはキーウへの帰還に有利な立場に立てる。

 クレムリンでのウクライナ戦争のタイムテーブルは、国内的配慮により動かされている。西側軍事関係者によれば、モスクワは5月9日(ロシアが第二次世界大戦でナチスドイツに勝利したのを祝う日)までに戦場で大きな勝利を収めようと急いでいるという。

 双方が影響力を競い合っているように見えるため、ドンバスの戦いが決着するまで和平交渉は望めそうにない。

 ジョンソン首相は金曜日、ロシアが戦争に勝つ「現実的な可能性」に備えるよう西側諸国を促し、現地状況を「予測不可能」と表現した。ウクライナ侵攻が2ヶ月目に入る中、ジョンソン首相の発言は、ロシアが勝利する可能性を西側指導者が初めて公に認めたことになる。NATO主要加盟国は、クレムリンが数週間のうちにウクライナ東部地域で大きな戦果を上げた場合、ロシア侵攻を撃退し、敗北させる目的で進めてきた前例のない武器移転プログラムに関して、これまでのアプローチを調整するかは不明だ。■

 

Will Russia Win the War for the Donbas? | The National Interest

April 23, 2022  Topic: Russia-Ukraine War  Region: Europe  Tags: RussiaUkraineNATOVladimir PutinDonbasWar

by Mark Episkopos

 

Mark Episkopos is a national security reporter for the National Interest.

Image: Reuters.


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...