スキップしてメイン コンテンツに移動

2023年度国防予算要求の概要② 米海軍省の艦艇、航空機関連の動向

 

今回退役の対象とされる巡洋艦は5隻

海軍は、5年間で36億ドルを節約するため、来年度に艦船24隻を退役させたいと発表した。

2023年度予算要で、海軍はフリーダム級沿海域戦闘艦(LSC)9隻、タイコンデロガ級巡洋艦5隻、ロサンゼルス級潜水艦2隻、揚陸ドック艦4隻、給油艦2隻、遠征転送ドック2隻を退役させる。

LCSの退役について、海軍予算担当副次官補ジョン・ガンブルトンJohn Gumbleton は、コンステレーション級フリゲート艦が対潜能力を持つため、LCSの対潜戦任務が不要となるとした。

「LCSのASW能力を見ての決定です。ASWのミッション・モジュールは、大きな課題を抱えたまま、うまくいきそうにありません。浮いた予算で4隻目のフリゲート艦を導入します。4隻目には効果的なASW能力があると思われるので、LCSポートフォリオでリスクを取ることにした」と、ガンブルトンは記者団に語っている。

コンステレーション級フリゲート初号艦は2026年の納入予定であり、初期運用能力獲得は2030年となる。

「フリーダム級には、駆動系で問題があります。ただしその修正は法外な金額ではありません」と、ガンブルトンは9隻のLCSに言及した。「しかし、艦種2つを維持する代わりに、艦種を一つに絞れば、節約が可能になります。それで今回の決定になったのです」

USSフォートワース(LCS-3)は、海軍が退役させたいLCS9隻の1隻。海軍は2021年度と2022年度にフォートワースを退役させようとしたが、議会が阻止した。フォートワースは2012年に就役した。フリーダム級LCSは、ガスタービンとディーゼルエンジンを結合するコンバイニングギアで問題が発生したが、フォートワースには別のコンバイニングギア機構を備えている。

海軍次官メレディス・バーガーMeredith Bergerは、LCSの9隻退役について聞かれ、「費用のかかる修理やメンテナンスから解放される」と述べた。

海軍関係者は、2023年度予算要求について、改訂版の国家防衛戦略、カルロス・デルトロ Carlos Del Toro海軍長官の目標、海軍作戦部長マイク・ギルデー大将Adm. Mike Gildayの優先事項である即応性、近代化、能力を満たすものと説明している。

 

「この環境下で、艦隊を持続可能とする決定をした。そのため、予算内で維持不可能な対象には予算をつけていない」と、バーガーは記者団に語った。「また迫りつつある脅威に対し、最高度に有能かつ準備の整った艦隊と部隊を作るため、現有装備の調整を確実に進める。そのため、短期的には、準備体制があがり、より致命的で、より能力の高い艦隊が生まれる。長期的には、艦隊の規模も増える」。

艦船合計24隻を退役させると、海軍は将来防衛計画(国防総省の5年間の支出見通し)全体で36億ドル節約できると、ガンブルトンは述べた。

ただ、24隻のうち16隻は耐用年数に達しておらず、海軍は特例を求める必要がある、とガンブルトンは指摘する。

「巡洋艦も注目されていますが、5隻中4隻が耐用年数に達しています。早期退役を求めるのは1隻のみ」と述べた。

USSフォートワース(LCS-3)、カリフォーニア州サンディエゴ海軍基地にて。 Feb. 15, 2022

だが今後数年間で、艦隊規模は縮小する。米海軍の戦闘艦艇数は2022年度に297隻だが、2023年度には285隻、2024年度2025年度は287隻、2026年度に284隻、2027年度には280隻に減少する。

2023年度の海軍造船会計では、アーレイ・バーク級フライトIII 駆逐艦 2隻、バージニア級攻撃型潜水艦 2隻、コンステレーション級フリゲート 1 隻、サンアントニオ級揚陸輸送艦1 隻、アメリカ級強襲呂揚陸艦1隻、 T-AO-205 ジョンルイス級給油艦1隻、T-ATS6 ナバホ級救難艦1隻、計9隻を 279 億ドルで購入する。

海軍省の 2023 年度予算要求は、海軍が 1,805 億ドル、海兵隊が 503 億ドルで、合計 2,308 億ドル。海軍は2023年度比5.4%増の533億5千万ドルの調達資金を要求する。また、運用・整備費に614億2000万ドル、人件費に411億9000万ドル、研究開発費に210億2000万ドル、軍事建設費・家族住宅費に31億3000万ドルを要求している。

海兵隊は、調達費に122億3000万ドル、運用・保守費163億ドル、人件費172億9000万ドル、軍建設・家族住宅資金14億6ドル、研究・開発資金306億ドルを要求。

ガンブルトン氏によれば、要求はインフレを考慮し、海軍は5%、海兵隊は2%の「実質成長」となる。海軍省によると、海軍の要求額1805億1000万ドルは、2022年度の1722億6000万ドルに対し4.8%の増加、海兵隊の要求総額503億ドルは、1.8%の増加となる。

海軍は、耐用年数延長プログラムで上陸用舟艇エアクッション2機のオーバーホールと、艦船海岸接続装置2基と中古輸送船2隻の購入も要求している。

2023年度には、コロンビア級弾道ミサイル潜水艦計画やフォード級空母の購入はないが、海軍は両計画で段階的な資金投入を必要としている。ガンブルトンによると、海軍はフォード級で増予算29億ドルを要求している。フォード級空母は現在、ハンティントン・インガルス工業Huntington Ingalls Industriesのニューポート・ニューズ造船所Newport News Shipbuildingで3隻建造中。

今回の計画では次世代駆逐艦 DDG(X) の開発に取り組む中で、アーレイ・バーク級フライト III駆逐艦の複数年調達を再度実施する可能性が出てきたことがわかる。また、2023年度から2027年度にかけて、バージニア級攻撃型潜水艦を年間2隻購入する予測だ。

 

航空機材調達勘定では、海軍省は168億ドルを要求する。 内訳は、海軍が F-35C ライトニング II 共用打撃戦闘機JSF(9)、海兵隊が F-35C(4)、F-35B 短距離離陸・垂直着陸機(15)、海軍のE-2Dアドバンストホークアイ(5)、多発訓練システム機(6)、海兵隊向け多発式訓練システム(4)、海兵隊向けKC-130J(5)、海兵隊向けCH-53Kキングスタリオンヘリコプター(10)、海軍向けTH-73A訓練ヘリコプター(21)、TH-73A訓練ヘリコプター(5)機、海軍向けMQ-4Cトライトン(3)、海軍向けMQ-25Aスティングレイ(4)、海兵隊向けMQ-9Aリーパー(5)の合計96 機で168 億ドルの調達となる。

F-35Cの要求は、海軍のこれまでの想定から減少している。2022年度予算で議会に提出した説明資料では、2023年度に20機のF-35Cを購入を予測していたが、今回の要求では海軍海兵隊で13機しか求めていない。

「JSFの要求を下げたのは、バランスのためです。つまり、艦船建造のポートフォリオ、航空ポートフォリオ、兵器、研究開発とバランスをとるということ」とガンブルトンは「JSFを増やしたかったが、バランスを重視した」と記者団に語った。

兵器調達については、2023年度は、海兵隊に115基、海軍に39基の海軍打撃ミサイルを含む総額47億ドルを求める。

人員については、海軍は2023年度から2027年度に約1万人の乗員を削減する。

インフラ面では、造船所インフラ最適化計画(SIOP)で2023年度に17億ドルを要求しており、海軍の公的造船施設改修210億ドルの一部となる。

要求には、軍人と民間人双方向け4.6%賃上げの予算も含まれている。■

FY 23 Budget: Navy Wants to Shed 24 Ships for $3.6B in Savings Over Next Five Years - USNI News

By: Mallory Shelbourne

March 28, 2022 1:35 PM • Updated: March 28, 2022 5:20 PM

 



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...