スロバキアがソ連時代のMiG-29フルクラム戦闘機をウクライナに譲渡することに異存はないと、アメリカの国防高官が本日発表した。これは、ポーランドのMiG-29をウクライナ空軍に譲渡するとの計画が以前あったが、アメリカ当局が在ドイツ米軍基地を通じての戦闘機譲渡は認めないと言ったために破綻したのを受けての進展だ。
スロバキア政府は、移転が実現するためには、一定の安全保障が必要だとしている。ウクライナ空軍がMiG-29含む戦闘機を早く導入できるかについては、まだ疑問が残っている。
これと別に、南部の戦略的な港湾都市マリウポリに駐留するウクライナ軍へのロシアの化学兵器攻撃疑惑の詳細は、不透明なままだ。米国当局などが攻撃の可能性を数週間前から警告してきたが、これまでのところ確たる証拠はなく、独立した情報源が同地域へアクセスし検証することはほぼ不可能である。
米国は、スロバキア含むどの国もウクライナへ固定翼戦闘機を送ることに「反対しない」と、米国国防高官が本日未明に記者団に語った。国防総省は3月、ウクライナ空軍へのポーランドMiG-29の譲渡案に関連し、ウクライナに戦闘機を送るとロシアとの緊張が深刻に高まる懸念と、ウクライナ軍が地上防空システムをさらに活用できるはずとして、ポーランド機の引き渡しに直接関与したくないと述べていた。
スロバキアのエドゥアルド・ヘーゲル Eduard Heger首相は昨日、自国のMiG-29をウクライナに派遣する案を浮上させたが、一定の安全保障策が必要であると付け加えた。スロバキア空軍は今後数年で米国製F-16C/Dバイパー戦闘機を導入するが、長年にわたり大幅改良してきたフルクラム12機が、同国が運用する唯一の固定翼戦闘機である。何機がウクライナに向かうかは不明。
スロバキア当局は、S-300PMU地対空ミサイルをウクライナに寄贈する際、同様の条件を提示していた。米国含むNATO加盟国がスロバキアにペイトリオット地対空ミサイルを配備し、同国の防空・ミサイル防衛能力の不足を補った後で、ウクライナ軍はS-300PMUシステムを受領した。米軍やNATO加盟国が、ウクライナにMiG-29を譲渡する計画の一環として、スロバキア領空防衛用に戦闘機配備を提案する可能性もある。
このような移転が最終的に実現するかは、まだわからない。ウクライナ空軍が新たな戦闘機を自軍に導入しても、長期にわたり維持できるかが懸念される。これまでの戦闘で、ロシア軍はウクライナの重要な軍事航空修理施設2カ所を攻撃しており、いずれも大損害を与えたためだ。
同時に、ウクライナ空軍はMiG-29運用の経験を有しており、飛行能力を実証してきた。また、パイロットの数が航空機数よりも多いため、追加要員の訓練が必要となるかとの懸念も軽減される。ウクライナのパイロットが、スロバキアのフルクラムを戦闘投入する前に、同国機材にはない機能の使い方を習得する必要はないかもしれないが、それでもある程度の補足教育は必要だろう。
ヘーゲル首相は、ロシアとの「関係」がないと、自国でこの戦闘機を維持するのは難しいとポリティコ誌に語った。「F-16を待つ中で、各機はいずれ廃止する装備品だ」と付け加えた。
これらの戦闘機が努力に見合う形でウクライナ空軍の空戦能力の向上につながるかも、完全には明らかではない。
ウクライナのある戦闘機パイロット(コールサイン「ジュース」)は先月の独占インタビューで、「敵攻撃機や低空目標、ヘリを狩る空中パトロールには役立つが、制空権確保には役立たない」と語っている。「MiG機はほぼ同じレーダーを搭載し、少しは近代化されています。MiGは非常に高性能で、素晴らしい戦闘機だが、問題はミサイルだ。ポーランドは我々と同じミサイルを使っている。だから、我々は新しい、本当に性能の良い兵器を受け取る必要があるんだ」。
一方、戦闘機以外の外国からの軍事援助もウクライナに流入し続けている。米国政府は、ジョー・バイデン大統領が先月発表した8億ドル軍事支援パッケージを4月中旬までに納入し終える。米国防省高官によると、昨日も、貨物機2機がウクライナに機関銃、手榴弾、防護服などを運んできた。
米国国防省高官は本日、「自爆ドローン」と呼ばれるスイッチブレード滞空弾100個のうち「相当量」がウクライナに到着し、すでに現場で使用されていると述べた。
下の写真は、ウクライナ軍がこれまでロシア軍による制空権獲得を防いできた重要な要因である、肩撃ちの地対空ミサイル(MANPADS)で外国から提供されたものである。写真は、左から米国製スティンガー、ポーランド製ピオラン、ソビエト時代のイグラシリーズで、後者は紛争開始時にウクライナの在庫となっていたものである。
本日の記者会見で、米国防省高官は、ロシア軍が南部の戦略的港湾都市マリウポリでウクライナ人に対し化学兵器を含む攻撃を行ったことについて、米政府は現在、肯定も否定もできないと述べた。米政府関係者は、アクセスの欠如が、何が起こったかについて何らかの初期評価を行う上での最大の障害になっていると述べている。
米国政府は、ロシア軍が非致死性の暴動鎮圧剤と致死性の化学兵器を混合し、後者を隠蔽しようとした可能性を探っているが、それがマリウポルで起きたこととする兆候はない。アメリカ政府関係者などは、ロシア軍が化学兵器による攻撃を行うか、あるいは偽旗として何らかの化学的事件を起こす可能性があると、過去1カ月で何度も警告している。
ウクライナのハンナ(アンナ)・マルヤル Hanna (Anna) Malyar国防副大臣は、国自体がその主張を検証するのに苦労しているほどだと述べている。マルヤルによると、問題の弾薬は実際には白リン焼夷弾であった可能性が指摘されており、白リン焼夷弾も有害ガスを発生させるという。英国国防省は昨日、ロシア軍がマリウポリで白リンを使用する可能性について警告を発していた。白リンの使用は極めて異論が多く、国際条約で特定の状況下では禁止されているが、化学兵器禁止条約による化学兵器の定義には当てはまらないことに注意する必要がある。
アゾフ大隊(アゾフ連隊とも呼ばれる)は、現在ウクライナのボランティア領土防衛軍の旗の下で戦っている、非常に物議をかもしているネオナチ関連の組織で、昨日初めて、ロシア軍が化学兵器攻撃を行ったと主張した。今のところ、この主張を裏付ける、あるいは反論する確たる証拠は出ていない。
昨日、ロシアが独立国として承認しているウクライナ東部ドンバス地域の分離独立地域、ドネツク人民共和国(通称DNR)のスポークスマン、エドゥアルド・バズーリン Eduard Basurinは、マリウポリに残る防衛隊を追い出すために「化学部隊」を使うことを公に提唱していた。しかし、ロシア軍の核・生物・化学防護部隊は、TOS-1A多連装ロケット弾発射システムや、肩撃ちのRPO-Aランチャーで武装した部隊を乗せる専用装甲兵員輸送車BMO-Tなどのサーモバリック兵器を採用し、いずれも都市部に隠れる敵に対して非常に有効であることは重要な指摘であろう。
同時に、ロシア当局は、ウクライナ政府が化学物質を使った挑発行為を起こす準備中と、何の証拠も示さずに非難している。これは、ロシアが自らの行動を隠蔽するための偽情報キャンペーンではないか、と多くが警戒している。近年、ロシアが世界の別の場所で化学兵器攻撃を行った証拠は確かにあるが、多くは特定個人を標的とした暗殺作戦であった。第2次チェチェン戦争でロシア軍が大規模に化学兵器を使用した疑惑があり、ロシア軍はシリア政府による化学兵器の使用にも加担してきた。
英国国防省は、ウクライナ紛争の現状を評価した最新マップを発表した。英国当局はまた、ロシア軍の再配備により、ウクライナ東部での戦闘が急増する予想にかわりないと述べている。
ウクライナにおけるロシアの戦争犯罪の可能性を示す証拠がさらに出てきた。専門家やオブザーバーは、ウクライナからの報告と、ロシアが関与した過去の紛争、特に第二次チェチェン戦争での事件との間に類似点があると指摘し続けている。
下の写真は、ウクライナの義勇領土防衛軍と思われる兵士が、DP-27やマキシムM1910機関銃など様々な武器で武装している様子。この2つの銃の設計は第二次世界大戦より前のものだが、7.62x54mmR弾を発射する。この弾薬は現在も盛んに生産されており、ロシアを含む世界中で広く使用されている。
ウクライナ当局は、親ロシア派のウクライナ人オリガルヒであるヴィクトル・メドベドチャックViktor Medvedchukを拘束したと報じられている。今回の紛争が勃発する前に反逆罪で起訴され、すでに自宅軟禁状態であった。
ロシアのプーチン大統領は本日、ベラルーシのルカシェンコ大統領とロシア東部のボストーチヌイ宇宙基地を視察した。プーチン大統領は、国家安全保障への脅威のためウクライナに侵攻せざるを得なかったというロシア政府の立場を改めて強調した。プーチンとルカシェンコは、これまでの紛争でロシア軍が様々な戦争犯罪を犯したとする主張を否定し、ウクライナの都市ブチャでの市民虐殺などの事件は演出であったと、根拠なく主張している。
長年にわたりプーチンやロシア政府と複雑な関係を築いてきたが、最近は完全にモスクワの軌道に乗ったルカシェンコは、「以前は兄(プーチン)が私をそこに送り込み、連れ戻さないかもしれないと考えていたが、もうそう思っていない」と述べた。
Ukraine Situation Report: Slovakia Donating MiG-29 Fighters Is Fine By The US
Getting additional MiG-29s and other combat aircraft to Ukraine has been a hot topic of discussion for weeks.
BY
APR 12, 2022 4:06 PM
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