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2020年10月15日木曜日

F-3を開発すべきか、忠実なるウィングマン無人機を開発あるいは導入すべきか 防衛省内でどんな議論が展開したのだろうか

 

SATOSHI AKATSUKA VIA LOCKHEED MARTIN/CODE ONE

 

菱F-2戦闘機の後継機種検討で無人戦闘機案も選択肢の一つだった。無人戦闘機の提案は自民党の河野太郎が費用削減策として出したとの報道がある。

 

提案を今年初めに検討したと共同通信が伝えている。だが防衛省が同案を一蹴したようだ。同案はイージスアショア導入の断念直後に退けられたとあるが、実際に二つが関連していたか不明だ。

 

共同通信記事では無人機を「戦闘機」としており、日本関係者は高性能無人戦闘航空機(UCAV)の導入を検討していたとある。しかし、記事では同機の具体的な性能要求を伝えていない。

 

日本にMQ-9リーパークラスの無人機がないことに注目すべきだ。日本はRQ-4グローバルホークのブロック30機材を3機導入するが、米空軍が同型機の退役案を提案していることから新たな疑問も生まれている。

 

U.S. AIR FORCE/CAPT. AARON CHURCH

アンダーセン空軍基地の319作戦群分遣隊1所属のRQ-4グローバルホークが定期巡回展開で横田航空基地に着陸した。Japan, May 30, 2020

 

 

無人戦闘機導入の話題が日本で出たのはこれが初めてではない。ただし、提案の却下理由は明らかではなく、今回提案のあった無人機の詳細情報はごく限られている。

 

今回の無人機導入提案の裏には新型戦闘機在開発の費用圧縮があったのは明らかだ。

 

これまで日本はF-22ラプターステルス戦闘機の調達を狙ってきた。その後も同様の高性能機材を手に入れる願望を断念せず、完全国産あるいは外国提携先の手を借り実現を目指してきた。ここから無人戦闘機の選択肢に影響が出たのだろう。また自律型技術の国産開発は可能なのか懐疑的に伝える報道もある。

 

U.S. AIR FORCE/YASUO OSAKABE

エルメンドーフ-リチャードソン共用基地から飛来したF-22ラプターが横田基地を離陸した。 July 17, 2018.

 

 

さらに日本はX-2心神実証機に332百万ドルを投じ、一機を製造しテスト飛行させた。X-2はステルス性機体、推力偏向型低バイパス比ターボファン二基で軽快な機体制御性能を実現したが、ここが日本の次期戦闘機にも期待される性能なのだろう。

 

 

AP PHOTO/EMILY WANG

X-2実証機、三菱重工格納庫内で

 

一方で日本はF-35を大量発注しており、147機をそろえる。ここにF-35Aが100機含まれ、F-4EJファントムII後継機とする。さらに42機が短距離離陸垂直着陸型F-35Bでいずも級空母搭載を目指す。

 

U.S. AIR FORCE/STAFF SGT. DEANA HEITZMAN

三沢航空基地で航空自衛隊と第35戦闘航空団の関係者が航自向けF-35Aの一号機到着を見守った。 January 26, 2018

 

さらに日本は200機近くあるF-15J制空戦闘機の半数に大型予算をつぎ込み、日本向けスーパー迎撃機 (JSI) 仕様に改良する。米政府は2019年10月にこの案件を承認した。改良の中心は新型アクティブスキャンアレイレーダー、ミッションコンピュータ改良型、電子戦装備の一新他だ。

 

こうした有人戦闘機出費がUCAV案を葬ったのかもしれない。ただし高性能無人機はある時点までは有望な選択肢だったのだろう。

 

日本は競合相手のロシアや中国、さらには自らの同盟国と違い、無人航空機開発に及び腰で、防衛体制の中で無人機をどう活用するのか明確な方向を示していない。防衛省内で有人機推進派と無人機派で対立があるのかも不明だ。

 

航空自衛隊がF-3を純国産あるいは海外国との共同開発で有人戦闘機を就役させるのかまだ不明だ。有人ステルス戦闘機を開発し、配備すると非常に高価格となり、時間もかかることは歴史が証明している。このためUCAV案が防衛省内で浮上したのだろう。共同開発で費用面等は抑えられるだろうが、それでも日本には相当の負担となる。日本関係者の話として新型有人戦闘機開発をいちからはじめれば500億ドルに加え定量化不可能な時間がかかるとあった。

 

第四世代機F-2で日本が直面した問題からこの危険さはすでにわかっている。F-16ヴァイパー原型のF-2は相当の高価格機となり、日本製アクティブ電子スキャンレーダーを搭載した少数生産が背景にあった。

 

U.S. AIR FORCE/SENIOR AIRMAN DANIEL SNIDER

航空自衛隊の三菱F-2Aと米空軍F-16がレッドフラッグ-アラスカ19-2演習で アラスカのエイルソン空軍基地に並んだ。 

 

 

日本にとって費用対効果が一番高いのはF-35とF-15JSIのハイ・ローミックスではないか。両機種は生産中で広範囲の支援が活用できる。また両機種で性能改修が続いており、今後はさらに魅力的なオプションが出てくるだろう。

 

さらに費用対効果が高くミドルエンドのステルスUCAVが近い将来に出現してもおかしくない。既存戦闘機と飛ぶ忠実なるウィングマンとすればよい。自律飛行も可能だろう。ただ、航空自衛隊の戦術機材の主要任務が防空と対艦戦で、F-2のように生身のパイロットを乗せるのは良い策とは言い難い。とはいえ防空ミッションではパイロットはまだ必要だ。

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本土防空ミッションは近い将来も有人機が本領を発揮する分野だろう。日本は極めて高い頻度でスクランブル出動を年間を通じ実施しており、ロシアや中国機が日本領空へ接近することが多くスクランブルは年千回に達する。これだけの頻度だと日本の戦術機部隊に相当の負担となり、こうしたミッション実施は無人機では交代できない。

 

無人機が利点を発揮するのは対水上艦戦任務だが、その他にも可能性がある。対地攻撃任務もその一つで、その他にも長時間飛行の海上パトロール機が長距離対艦ミサイルを搭載し、統合運用部隊とネットワークで結べば効果がさらに上がる。現在はF-2がこの任務に投入されているが、同機は同時に空対空戦もこなしており、将来登場する多用途機も同様に重宝されるはずだ。これで航空自衛隊のF-15部隊を他の任務に回せる。

 

BOEING AUSTRALIA

ボーイング・オーストラリアが開発した忠実なるウィングマン無人機なら日本の有人機をうまく補完するはずだが、有人機をすぐ全廃することにはならないだろう。

 

 

有事になれば多用途戦術機材が発揮する柔軟性が日本列島防衛に効果を発揮するはずだ。また国産あるいは輸入機材の忠実なるウィングマン無人機がこうしたミッションを大いに助けるとはいえ、防空で空対空戦をすべて無人機に任せるのは現実的ではない。日本の国土条件を考えればUCAVの長距離飛行性能の必要度は高いとは言えない。

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結局のところ日本は忠実なるウィングマン無人機を自国開発し、戦闘機部隊の補完勢力にするほうがいいのではないか。このほうがハイエンド新型戦闘機あるいは高性能UCAVを開発するよりはるかに現実的であるばかりか、産業界や運用面で複合効果が生まれ、さらに技術進歩によりさらに高性能のUCAVの登場につながることになるのではないか。

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F-2後継機種がなんであれ航空自衛隊は2035年ころの交代を予定している。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

BYJOSEPH TREVITHICKTHOMAS NEWDICKTYLER ROGWAYOCTOBER 14, 202


2019年2月14日木曜日

あらためて日本のF-3開発状況をとりまとめてみましたが....

Japan's Stealth Fighter: What Happened? 

日本のステルス戦闘機開発はどこまで進展しているのか

This is what we know.
判明していることをお伝えしましょう
February 12, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanStealthF-22F-35MilitaryTechnology
2016年4月22日に、赤青のアクセントをつけた白塗装のジェット機が名古屋空港を離陸した。この時点で日本はステルス機開発で世界四番目の国となった。三菱重工業のX-2心神だ。
その二年後、当初予定のフライトテスト40回を34回で切り上げ心神は退役した。自衛隊は次世代ステルス戦闘機を完全国産開発するか輸入調達するかの厳しい選択に迫られ、報道を見る限り日本は後者に傾いているようだ。
ラプターが入手できず心神が生まれた
日本の自衛隊は他国の軍事組織と異なり自国防衛を想定し海空からの攻撃に対応する。中国が空軍力を整備し中距離弾道ミサイルや艦艇数を増やす中で任務は一層重くなっている。中国、ロシアの軍用機へのインターセプト出動は年間数百回に登る。中国に第5世代機のJ-20ステルス戦闘機が登場して航空自衛隊のF-15やF-2戦闘機の質的優位性が揺らぐ心配がでてきた。
21世紀に入る時点で日本はロッキード・マーティンF-22ラプター調達を希望していた。制空戦闘機では最高の機材と多くが見るラプターには性能相応の高額の値札がついていた。しかし、米議会が輸出を禁じ、ラプター生産ラインも完全閉鎖された。そこで航空自衛隊はF-35Aステルス戦闘機42機の調達に方針を変えたが、制空戦闘機としての性能はラプターに劣る。
技術研究本部は別個にステルス研究をしている。米テスト施設の利用を拒否され、ステルス機モックアップをフランスに搬送し、レーダー断面積測定をしたのが2005年だった。その11年後に三菱重工業がX-2として知られる先進技術実証機を発表した。日本はステルス機開発はこれまでに360百万ドル以上を投入し、協力企業220社に登り、X-2の部品点数中9割は国産調達だ。
X-2は縮小型で全長14メートル、翼幅9メートルにすぎない。実証機なのでこの大きさが許されたのであり、兵装は一切搭載できず、空虚自重は10.5トンしかない。
心神ではレーダー吸収塗装を用いず、非反射性のシリコンカーバイドとセラミックを使用し、バブル形状のキャノピーに特殊スズ合金を施した。さらに機体表面には不規則曲線を用いレーダー反射を抑え、尾翼も外側に鋭く傾けている。
防衛関係者は取材で「心神は10キロ先からだとカブトムシ程度にしか映らない」と述べている。このことを聞くと米軍関係者からF-35のレーダー断面積はゴルフボール程度だとの発言を思い出す。ただし、X-2のRCSはそこまで低区内と見る関係者もあり、実態は中程度のステルス性能だとする。
搭載するIHI製XF5-1低バイパスターボファンはアフターバーナー付きとして初の国産エンジンとなり、耐熱性に優れたセラミックマトリックス複合材とチタンアルミ合金を用いる。排気口にパドルがつき推力を三次元偏向させX-2は異例なほどの細かい挙動が可能だ。量産機ではパドルのかわりに排気口を可動式にしてRCSを下げている。
X-2搭載のエンジンは各5,500ポンドの推力しかないが、機体が軽量のためマッハ2まで加速するには十分でアフターバーナーを必要としないスーパークルーズが実現した。
心神には日本開発技術が他にも盛り込まれているという。現在の戦闘機は「フライバイワイヤ」制御で操縦するが、三菱は先に進み光ファイバーを採用し、伝達速度を早めつつ電磁攻撃に強靱となっている。また「自己修復型」制御も採用し、機体表面の損傷を探知すれば機体制御を自動的に補正するという。
実証機からF-3が生まれるのか
心神は技術実証用であり試作機として量産機開発を目指したものではない。また兵装以外にコンピュータや電子戦装備も大量に積む軍用機ではなく非武装であり機構は簡略になっている。
その本命が国産ステルス戦闘機で三菱F-3と呼ばれ概念設計段階にある。防衛省は大型双発ステルス機で長距離空対空ミサイル6発を機内搭載する機体の生産を2027年に開始したいと述べている。100機以上生産し、F-15JやF-4EJの後継機にしたいという。
コンセプト図は二通り公表されており、ひとつはF-22に似ており、もうひとつが無尾翼第六世代機のようだ。多機能レーダーを搭載し敵機の接近を探知する以外に電磁センサーや高周波兵器として敵の電子装備を破壊する機能も加わるのではないか。
ただし2018年4月にロイターが匿名の日本防衛筋複数の話として国産開発は棚上げし国際提携先を模索すると伝えた。
理由は費用であり、リスク懸念だ。国産開発の場合は初期費用だけで400億ドルと日本は試算しているが、日本の防衛予算総額が史上最高額の水準となったといっても2018年で460億ドルだった。
F-35では新技術導入の結果、予想に反してうまく機能せず遅延と費用超過を招いた例がある。既存技術を採用するほうが堅実だし、他国費用で技術が成熟化すればなお結構なのであり、ゼロから新型技術を導入した機材を開発するリスクを避けられる。
ラプター/ライトニングハイブリッド構想は?
日本政府は情報開示要求(RFI)をBAEシステムズボーイング、ロッキード・マーティンの各社に発出し、共同開発の可能性を模索している。その中でラプターとF-35のハイブリッド版の開発案が浮上してきた。
そもそも日本がF-22を希望したのは制空性能が優秀なためでF-35を上回るためだし、航空自衛隊は空対空戦能力を重視する。しかしラプターは1990年代製のコンピュータを搭載し性能向上もままならず高額につくレーダー吸収剤(RAM)塗装を施している。一方でF-35では費用対効果に優れるRAMパネルを採用し、センサー、コンピュータも新型でネットワーク機能により情報を友軍内で共有できる。
そのため日本政府は新型機にF-35の新機能を盛り込みつつF-22の優秀な飛行性能を継承したいと考えている。
これが実現すれば究極のステルス戦闘機になるだろうが目が飛び出るほどの価格になるはずだ。ペンタゴン内部研究が漏れておりF-22生産ラインを再開し機内装備を一部更新した場合の初期費用は70ないし100億ドルで194機発注の場合で機体単価は210百万ドルになる。初期費用だけ見れば新型機を両型の技術を元にゼロから開発したほうがいい。米空軍も180機残る既存F-22の性能改修となればやる気がでるだろうが、F-35の予算が流用されるとなればロビーストが強硬に反対に回るはずだ。
そうなると心神をベースに三菱F-3を純国産機として開発する構想は予備対策だろう。日本政府としても国内生産とともにステルス技術を自国で管理できる方法のほうが望ましいはずだ。しかし、X-2にあれだけ注力したものの航空自衛隊は第5世代ステルス戦闘機は海外提携先と組んだほうがより安心して費用対効果にすぐれかつ迅速に実現できると結論づけている。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .