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F-3を開発すべきか、忠実なるウィングマン無人機を開発あるいは導入すべきか 防衛省内でどんな議論が展開したのだろうか

 

SATOSHI AKATSUKA VIA LOCKHEED MARTIN/CODE ONE

 

菱F-2戦闘機の後継機種検討で無人戦闘機案も選択肢の一つだった。無人戦闘機の提案は自民党の河野太郎が費用削減策として出したとの報道がある。

 

提案を今年初めに検討したと共同通信が伝えている。だが防衛省が同案を一蹴したようだ。同案はイージスアショア導入の断念直後に退けられたとあるが、実際に二つが関連していたか不明だ。

 

共同通信記事では無人機を「戦闘機」としており、日本関係者は高性能無人戦闘航空機(UCAV)の導入を検討していたとある。しかし、記事では同機の具体的な性能要求を伝えていない。

 

日本にMQ-9リーパークラスの無人機がないことに注目すべきだ。日本はRQ-4グローバルホークのブロック30機材を3機導入するが、米空軍が同型機の退役案を提案していることから新たな疑問も生まれている。

 

U.S. AIR FORCE/CAPT. AARON CHURCH

アンダーセン空軍基地の319作戦群分遣隊1所属のRQ-4グローバルホークが定期巡回展開で横田航空基地に着陸した。Japan, May 30, 2020

 

 

無人戦闘機導入の話題が日本で出たのはこれが初めてではない。ただし、提案の却下理由は明らかではなく、今回提案のあった無人機の詳細情報はごく限られている。

 

今回の無人機導入提案の裏には新型戦闘機在開発の費用圧縮があったのは明らかだ。

 

これまで日本はF-22ラプターステルス戦闘機の調達を狙ってきた。その後も同様の高性能機材を手に入れる願望を断念せず、完全国産あるいは外国提携先の手を借り実現を目指してきた。ここから無人戦闘機の選択肢に影響が出たのだろう。また自律型技術の国産開発は可能なのか懐疑的に伝える報道もある。

 

U.S. AIR FORCE/YASUO OSAKABE

エルメンドーフ-リチャードソン共用基地から飛来したF-22ラプターが横田基地を離陸した。 July 17, 2018.

 

 

さらに日本はX-2心神実証機に332百万ドルを投じ、一機を製造しテスト飛行させた。X-2はステルス性機体、推力偏向型低バイパス比ターボファン二基で軽快な機体制御性能を実現したが、ここが日本の次期戦闘機にも期待される性能なのだろう。

 

 

AP PHOTO/EMILY WANG

X-2実証機、三菱重工格納庫内で

 

一方で日本はF-35を大量発注しており、147機をそろえる。ここにF-35Aが100機含まれ、F-4EJファントムII後継機とする。さらに42機が短距離離陸垂直着陸型F-35Bでいずも級空母搭載を目指す。

 

U.S. AIR FORCE/STAFF SGT. DEANA HEITZMAN

三沢航空基地で航空自衛隊と第35戦闘航空団の関係者が航自向けF-35Aの一号機到着を見守った。 January 26, 2018

 

さらに日本は200機近くあるF-15J制空戦闘機の半数に大型予算をつぎ込み、日本向けスーパー迎撃機 (JSI) 仕様に改良する。米政府は2019年10月にこの案件を承認した。改良の中心は新型アクティブスキャンアレイレーダー、ミッションコンピュータ改良型、電子戦装備の一新他だ。

 

こうした有人戦闘機出費がUCAV案を葬ったのかもしれない。ただし高性能無人機はある時点までは有望な選択肢だったのだろう。

 

日本は競合相手のロシアや中国、さらには自らの同盟国と違い、無人航空機開発に及び腰で、防衛体制の中で無人機をどう活用するのか明確な方向を示していない。防衛省内で有人機推進派と無人機派で対立があるのかも不明だ。

 

航空自衛隊がF-3を純国産あるいは海外国との共同開発で有人戦闘機を就役させるのかまだ不明だ。有人ステルス戦闘機を開発し、配備すると非常に高価格となり、時間もかかることは歴史が証明している。このためUCAV案が防衛省内で浮上したのだろう。共同開発で費用面等は抑えられるだろうが、それでも日本には相当の負担となる。日本関係者の話として新型有人戦闘機開発をいちからはじめれば500億ドルに加え定量化不可能な時間がかかるとあった。

 

第四世代機F-2で日本が直面した問題からこの危険さはすでにわかっている。F-16ヴァイパー原型のF-2は相当の高価格機となり、日本製アクティブ電子スキャンレーダーを搭載した少数生産が背景にあった。

 

U.S. AIR FORCE/SENIOR AIRMAN DANIEL SNIDER

航空自衛隊の三菱F-2Aと米空軍F-16がレッドフラッグ-アラスカ19-2演習で アラスカのエイルソン空軍基地に並んだ。 

 

 

日本にとって費用対効果が一番高いのはF-35とF-15JSIのハイ・ローミックスではないか。両機種は生産中で広範囲の支援が活用できる。また両機種で性能改修が続いており、今後はさらに魅力的なオプションが出てくるだろう。

 

さらに費用対効果が高くミドルエンドのステルスUCAVが近い将来に出現してもおかしくない。既存戦闘機と飛ぶ忠実なるウィングマンとすればよい。自律飛行も可能だろう。ただ、航空自衛隊の戦術機材の主要任務が防空と対艦戦で、F-2のように生身のパイロットを乗せるのは良い策とは言い難い。とはいえ防空ミッションではパイロットはまだ必要だ。

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本土防空ミッションは近い将来も有人機が本領を発揮する分野だろう。日本は極めて高い頻度でスクランブル出動を年間を通じ実施しており、ロシアや中国機が日本領空へ接近することが多くスクランブルは年千回に達する。これだけの頻度だと日本の戦術機部隊に相当の負担となり、こうしたミッション実施は無人機では交代できない。

 

無人機が利点を発揮するのは対水上艦戦任務だが、その他にも可能性がある。対地攻撃任務もその一つで、その他にも長時間飛行の海上パトロール機が長距離対艦ミサイルを搭載し、統合運用部隊とネットワークで結べば効果がさらに上がる。現在はF-2がこの任務に投入されているが、同機は同時に空対空戦もこなしており、将来登場する多用途機も同様に重宝されるはずだ。これで航空自衛隊のF-15部隊を他の任務に回せる。

 

BOEING AUSTRALIA

ボーイング・オーストラリアが開発した忠実なるウィングマン無人機なら日本の有人機をうまく補完するはずだが、有人機をすぐ全廃することにはならないだろう。

 

 

有事になれば多用途戦術機材が発揮する柔軟性が日本列島防衛に効果を発揮するはずだ。また国産あるいは輸入機材の忠実なるウィングマン無人機がこうしたミッションを大いに助けるとはいえ、防空で空対空戦をすべて無人機に任せるのは現実的ではない。日本の国土条件を考えればUCAVの長距離飛行性能の必要度は高いとは言えない。

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結局のところ日本は忠実なるウィングマン無人機を自国開発し、戦闘機部隊の補完勢力にするほうがいいのではないか。このほうがハイエンド新型戦闘機あるいは高性能UCAVを開発するよりはるかに現実的であるばかりか、産業界や運用面で複合効果が生まれ、さらに技術進歩によりさらに高性能のUCAVの登場につながることになるのではないか。

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F-2後継機種がなんであれ航空自衛隊は2035年ころの交代を予定している。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

BYJOSEPH TREVITHICKTHOMAS NEWDICKTYLER ROGWAYOCTOBER 14, 202


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