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LEO衛星で全世界をカバーし、敵標的情報を「光速」で戦場に送る米陸軍の迅速攻撃構想

"Attacking at Speed": Army Project Convergence & Breakthrough Lightning-Fast War


甲戦闘車両がアリゾナの「直撃火力」ミッションで敵戦車を標的にする。車内には標的の照準情報が上空を飛ぶ無人機、ミニ無人機、ヘリコプターから無線で入るが、まず標的の詳細情報は高速移動する低高度衛星を運用するワシントン州から入ってきた。


陸軍のプロジェクト・コンヴァージェンス2020は実弾発射を伴う実験でアリゾナ砂漠で展開し、高性能衛星の力を借りて標的を迅速に探知しデータを転送し迅速な攻撃力を発揮するクロスドメイン攻撃の新しい形を試す。


小型高速の新世代低軌道(LEO)衛星はワシントン州のルイス・マッコード共用機地から運用されており、標的情報をリアルタイムでアリゾナ州ユマの演習実証地に送ってきた。かつてない高速長距離標的捕捉技術が現実のものとなった。


「ここで目にしたのはLEO衛星からの情報提供の第一段階だ。ワシントン州を経由して地上統制ステーションに送信された。地上ステーションがデータを中継した」と陸軍の戦闘能力開発本部を統括するジョン・ジョージ少将が現地で語った。


演習ではLEOと中高度地球周回軌道衛星の新技術を活用し、地球静止軌道(GEO)衛星の能力の上を行く「網目」ネットワークの増強を目指した。


「これまではGEOを活用してきた。LEO衛星だと衛星通信につきものの遅延を大幅に減らせる。かわりにデータスループットが増加する。戦術情報をより多くの地点で得られる利点がある」と専門家が語っている。


目標捕捉の迅速化技術がプロジェクトコンヴァージェンス2020で使われているが、その背景に陸軍は敵軍の捕捉及び交戦で「スピード」を重視しており、現行より相当加速しようとしている。ネットワーク対応衛星から無人機へ、ミニ無人機へ、さらに地上の攻撃手段へFIRESTROMの呼称のAIがデータを送ると陸軍の通常戦の在り方そのものが一変する。今回の演習に応用された技術はセンサーから発射兵器までの調整最適化を最小20秒で完了するが、これまでは20分が常識だった戦場の在り方が大きく変わる。


「宇宙配備センサーの情報を地上や空中に送るのは簡単かつ超高速で実施できそうだったが、実際は複雑な構成となり作動させるため何週間もコーディング作業が必要だった」と陸軍将来装備本部のロス・コフマン准将(次世代戦闘車両機能横断チーム長)が今回の演習場で語っている。


高速ネットワークのLEOの整備を陸軍、ペンタゴンが急いでおり、今後合計4,500基まで増強の予定がある。今まで約600基が配備されており、今後は毎月60基増やす。


「GEO利用が普通だった。それをMEOさらにLEOの利用まで広げてきたが、まだまだ発展途中だ。来年の演習までに北米地域は24時間週7日連続カバーでき、実証を続ける。4,500基すべての配備に二三年かかるが、ゆくゆく全世界をLEOでカバーする」と陸軍技術将校が語っている。


LEO衛星の利用はペンタゴンの目指す宇宙空間の活用方針に合致したものだ。宇宙装備の回復力と生存力を高い接続性とともに両立させる。LEO衛星の「ネットワーク化」で情報共有しながら対象地をきめ細かくカバーするのが宇宙の「ノード」で、ここから標的データを転送し連続追尾を実現する。


LEO衛星システムでは一部衛星が敵の攻撃で機能喪失しても機能を維持するねらいもある。このため冗長性が重要だ。有事には衛星ネットワークは敵の攻撃や妨害があってもミッション実施機能を維持する。

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「LEOにより回復力が実現し、ネットワーク維持も可能です。同じ通信内容が複数経路を通過するパス多様性を確保できるからです。これを使い戦術ネットワークを形成します」と上記陸軍技術将校は語る。


プロジェクトコンヴァージェンスの衛星ネットワークは今後も続く陸軍合同装備投入シークエンスの一部だ。コフマン准将の説明では宇宙空間や宇宙配備のセンサーは敵標的の侵入段階に活用される。次に来るのが分解段階で航空機により敵の長距離火砲を破壊し、最終段階が「活用」段階で地上軍が敵を攻撃した、というのが今回の演習の内容だった。■


この記事は以下を再構成したものです。


Army Seeks Thousands of High-Speed, Low Earth Orbit Satellites For Ground Attack

Kris Osborn

2020年9月29日


-- Kris Osborn is the Managing Editor of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 

 

Army Tests Breakthrough Cloud-Enabled War at "Speed of Fires"

The Army Secretary described it as “making decisions at the speed of fires"

 

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