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ブームの超音速エアライナー実証機XB-1がロールアウト! 米空軍が関心を示す

 (ターミナル1・2共通記事)エアライン業界は大変保守的で既存機種を最大限に使うビジネスモデルにしがみついています。その結果、半世紀で機種の変更こそありましたが、基本的に性能は進化していません。ここに果敢に挑戦する新興企業数社が米国に生まれています。はたしてその試みが成功するか注目です。機体が登場する3年後に現在の航空不況が克服されているかもありますが、ビジネスジェット分野なら可能性はありますね。超音速性能をいかんなく発揮できるのが海洋上空など限られるのが制約ですが、もともとコンコードを警戒した米議会が陸上上空の超音速飛行を禁止したのでは。軍用用途にした場合、大統領専用機もいいですが、ISR機材はどうでしょう。今回はThe War Zoneからのご紹介です。


ーム・スーパーソニック(本社コロラド州)がXB-1超音速実証機をロールアウトした。同機は開発を目指す実機の縮小版で「ベイビーブーム」と呼ばれる。飛行開始は来年の予定で、55席の超音速旅客機「オーヴァチュア」Overtureの実現を目指す。

 

同機には民間機登録番号N990XBがつき、COVID-19流行のためヴァーチャル発表式典で2020年10月7日に執り行われた。

 

XB-1は全長71フィートで長く伸びたデルタ翼の全幅は17フィートあり、「離着陸時の低速安定性と高速飛行時の効率性を両立させた」とブームは報道資料で説明。機体は炭素複合材料を大量に使い、「超音速飛行時の高温ストレス環境でも強度と剛性を確保した」という。実証機はオーヴァチュアの三分の一の大きさだ。

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ジェネラルエレクトリックJ85-15ターボジェット三基で推力合計12千ポンドを発生する。最高速度マッハ2.2程度をめざす。同エンジンは米空軍で供用中のT-35タロン練習機に搭載されている。

 

BOOM SUPERSONIC

 

空気取り入れ口、排気口はともに可動式でオーヴァチュアでは「コンコードの三十分の一の騒音」になるという。また空力学的に洗練された機体形状でソニックブーム発生も変わるという。

 

XB-1の胴体部分は細長く、機首を延長しているため操縦時に視野が制限されるが、英仏合作のコンコードでは着陸時には機首を下げる複雑な機構を採用していた。ベイビーブームでは遠隔画像システムによりパイロットが機首の先を「見る」ことが可能。これはロッキード・マーティンがNASA向けに製造したX-59静かな超音速輸送 (QueSST)実証機に採用したのと同じ機構だ。

 

ブームはオーヴァチュア投入で民間航空に一石を投じるとする。マッハ2.2は最高速度で巡航飛行時はマッハ2未満となるが、最大航続距離は4,500カイリで、同社は運航効果が見込める路線は500を超えると見る。その一つがニューヨーク=ロンドン線でかつてコンコードも飛行していた。ソニックブームによる騒音問題はまだ未解決だが、同社は高人口密度地帯上空はコンコード同様に亜音速飛行するとしている。

 

この方法でオーヴァチュアは既存亜音速機種に代わる低コストかつ高信頼性の選択肢となる。「シートマイル費用で見ればオーヴァチュアは亜音速ワイドボディ機より低水準です」と同社ウェブサイトにあるが、フライト時間当たりの経費では数字を出していない。ブームは既存機種のビジネスクラス並みの料金を実現するのが目標としている。

 

BOOM SUPERSONIC

オーヴァチュアをエアライナーにした場合の想像図

 

 

ブームは機体価格を200百万ドル程度にするとしており、ここには内装他オプション部分は含んでいない。このとおりなら既存ワイドボディ機より低価格となるが、一方で既存機種の輸送力は大きい。2018年にエアバスは売れ筋のA330-200の平均価格は238.5百万ドルと発表していたが、同機は最大406席の輸送力がある。ボーイングも767-300ERの平均価格を217.9百万ドルと発表しており、300席の旅客を収容できる。

 

それでもオーヴァチュアは各方面から関心を集めており、ブームによればヴァージン日本航空も含めエアライン業界から76機の導入意向が寄せられている。ヴァージングループはブームの大株主でもあり、傘下のスペースシップカンパニーが機体製造テストを支援するとの報道が前に出ていた。

現実にプライベートジェット部門ではオーヴァチュアのような機体に大きな需要がありそうだ。大企業や大富豪など文字通り時が金につながる層には高速移動で時間を稼ぐのは当たり前になっている。マッハ2移動は当然関心を呼ぶ。ブームの提示価格が現状のビジネスジェットの二倍近くになっても同機を求める流れは変わらないだろう。同機が究極のステータスシンボルになる可能性もある。

 

超音速旅客機は軍用転用も可能で、The War Zone はブームの競合相手になるエアリオンAS2超音速ビジネスジェットの話題を前からお伝えしている。ブームは米空軍から契約交付を9月に受けている。これは超音速大統領専用機構想の検討がないようだ。空軍は同じく極超音速分野の新興企業ハーミウスコーポレーションHermeus CorporationエグゾソニックExosonicにも同様の研究を委託している。

 

BOOM SUPERSONIC

ブーム・オーヴァチュアを米空軍で供用する構想の想像図では機体に747原型のVC-25Aエアフォースワンと同じ塗装が施され、超音速大統領専用機となっている。

 

 

ブームはXB-1のテストとオーヴァチュア開発を並行実施すると発表している。まずベイビーブームの地上テストを完了し、飛行テストを2021年に開始する。同社の新工場が2022年に完成し、オーヴァチュア生産を開始し、3年後にロールアウトする。

 

ただし、XB-1、オーヴァチュア双方で遅延が発生している。XB-1の飛行テストは今年末開始の予定だったが、機体安定性強化システムで離着陸時の安全確保で対策が必要となり先送りされた。オーヴァチュアでも2017年時点で路線就航は2023年とされていた。

 

とひえ、XB-1実証機が完成し、テストも数か月後に実際に始まると思うと興奮してくる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Boom Rolls Out Its XB-1 "Baby Boom" Supersonic Demonstrator Jet

BY JOSEPH TREVITHICK, THOMAS NEWDICK, TYLER ROGOWAY

OCTOBER 7, 2020


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