映画「Devotion」は、朝鮮戦争のパイロットジェシー・ブラウン少尉とトーマス・ハドナー大佐の実話を描くく (Photo: via Sony Pictures)
「Devotion」は、信じられない空撮シーンと確かなキャストで、悲惨な実話を語る作品
J.D.ディラード監督の新作「Devotion」は、「トップガン」より優れている。「Devotion」は航空映画の最高峰になった。1969年の大作『バトル・オブ・ブリテン』や1954年の『トコリの橋』と肩を並べる作品だ。
映画の予告編 https://youtu.be/nIvBBd8pU1s
「Devotion」の背景にある実話と、アメリカの人種対立と朝鮮戦争が深く織り込まれたテーマが、この映画に多層性と、ハリウッド脚本家が捏造できない本質的な意義を与えている。真実は小説よりも奇なりというが、この場合は優れているのだ。
The movie banner on the official website of Devotion.
熱心な航空ファンなら飛行機の映画に、アメリカの深い社会的不平等を現実的に描きながら一緒に楽しめるかどうかと疑問を感じるだろう。映画「Devotion」は、軍とハリウッドにおける不都合な真実を剥き出しにする。今日に至るまで、黒人の戦闘機パイロットはほとんどいないのだ。
「Devotion」(米国内はソニー・ピクチャーズ、国外はSTXインターナショナル配給)は、作家アダム・メイコスAdam Makosの2015年の著書 "Devotion" の映画化。(初版、Atlantic Books、2015年。 最新版、Ballantine Books、2017年)。実は、「Devotion」の裏にある実話は、それだけで物語にする価値がある。
メイコスは、第二次世界大戦や朝鮮戦争の退役軍人にインタビューし、徹底的な調査と優れたストーリーテリングで物語に命を吹き込む確固たる文学のシチュエーションを切り開いてきた。マコスはミッチナーやヘミングウェイではないが、精力的な研究者であり、有能な作家であり、才能ある語り手である。フォーブス誌のニコラス・レイマンによる2022年1月記事によれば、第二次世界大戦と朝鮮戦争の退役軍人という「偉大なる世代」が「1日234人」の割合で亡くなっている時代に、彼の本は読者を獲得している。
メイコスは2012年出版の『ハイヤーコール』で、第二次世界大戦さなかの1943年、B-17乗組員とドイツ軍戦闘機パイロットの思いがけない遭遇を描いて注目を集めた。続いて2015年に「Devotion」を発表し、すぐハリウッド脚本家ジェイク・クレインとジョナサン・A・H・スチュワートの目に留まった。あとは、よく言われる映画の歴史そのものだ。
パンデミック後の試写会で、「トップガン マーヴェリック」との比較が行われた。比較は必然だ。航空映画といえば、飛行機マニアや歴史ファンにしかなじみのないジャンルだが、メジャースタジオが大金を投じるのは久しぶりだ。一般向け航空映画が1年に2本も公開されるとは、最近の映画史で前代未聞だ。
「Devotion」は、朝鮮戦争中のアメリカ海軍のジェシー・ブラウン少尉とトーマス・ハドナー大佐の実話である。ハドナー大佐は、1950年12月4日、有名なチョシン貯水湖の戦いでブラウン少尉のF4U-4コルセアが撃墜され、英雄的な救出劇で名誉勲章を受章している。
実在のジェシー・ブラウン少尉とトーマス・ハドナー大佐。 (Photo: via US Navy Archives)
「Devotion」のキャストはすごい。VF-32の長兼分隊指揮官ディック・セボリ役のトーマス・サドスキーの演技は圧巻。彼は映画のクライマックスで重要なインスピレーションを与えるスピーチをする。また、グレン・パウエルは、「マーベリック」にも出ており、ジェイク・"ハングマン"・セレシン中尉役として、ジェシー・ブラウン少尉役のジョナサン・メジャーと同等の演技に賛辞を贈ろう。キャスト全員に弱い演技はない。
「Devotion」の出演者ジョナサン・メジャー(ジェシー・ブラウン役)とグレン・パウエル(トーマス・ハドナー役)。(Photo: via Sony Pictures)
「マーベリック」に対し「Devotion」は映像的に十分対抗できる。「トップガン」のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーは、「マーベリック」について次のように語っている。自分の映画を「航空へのラブレター」だと言った。しかし、「Devotion」は、視覚的にも、飛行への畏敬の念においても『マーヴェリック』を凌駕している。第二次世界大戦/朝鮮戦争時代の本物のヴィンテージ航空機が、有名なエアロL-39シネジェットからの息を呑むような空撮で撮影された。このジェットカメラ機には、「マーヴェリック」でも使用された特別開発のSHOTOVER F1 RUSHカメラとジンバルが搭載されている。しかし、映像的には「Devotion」が優れている。
「Devotion」の空撮は、「トップガン」と同じくシネジェットで行った。また、F4Uコルセアの尾翼に取り付けたカメラが使用された。 (Photo: via Sony Pictures)
「Devotion」と「Maverick」の飛行シーンでの視覚的な違いは、コンピューターゲームと大作映画の違いだ。「Maverick」は、フライトシミュレーター、ゲームプレイのような映像の質感がある。必殺のカット割りと閃光のようなセグメンテーションがある。F/A-18スーパーホーネットによる高速ジェット機飛行のめまいや方向感覚を伝えるため、「マーベリック」の飛行シーンは発作を起こしそうなほどだ。「マーベリック』は、荒唐無稽でありえないスーパーヒーローのフィクション映画として成功している。
一方、「Devotion」は実話である。1940年代後半から1950年代のピストンエンジン機が登場する。その結果、すべての飛行シーンで「マーヴェリック」とちがうペースと外観が生まれた。「Devotion」では、飛行シーンを楽しむ時間が長くなった。より敬虔で叙情的だ。そして、あのラジアルエンジンの音......。
「Devotion」の空撮では、少なくとも5機のヴォート/グッドイヤー社製コルセアが使用された。個人所有のヴィンテージ・ウォーバードの数機は、空母レイテ(CV-32)所属の1950年代の戦闘機隊VF-32「ファイティング・スワードマン」の本物のマーキングに再塗装された。このほか、オレゴン州マドラスのエリクソン航空機コレクションからダグラスAD-4Wスカイレイダー、カリフォーニア州チノのプレーンズ・オブ・フェイム博物館からロシア製MiG-15(民間登録N87CN)の実機が登場する。しかし、この映画は有名な曲がった翼のコルセア好きにはたまらないだろうが、「Devotion」の冒頭の飛行シーンで見せ場を作るのは、あまり評価されていないグラマンF8Fベアキャットだ。
「Devotion」のドッグファイトシーンの撮影には、MiG-15実機が使用された。 (Photo: screen capture via Sony Pictures)
このサイトをご覧になれば、「Devotion」を見たくなるだろう。映画館に足を踏み入れたら、技術的な映画製作、全キャストの優れた演技、そしてただただ見事な空中撮影のコンビネーションが、非常に強力であることを覚悟しておいたほうがいい。そして、「トップガン」が精巧だが架空の極超音速実験飛行や無名の悪人たちを描いたのに対し、「Devotion」が実話だったのに驚かないでほしいほしい。「トップ ガンマーベリック」は、近年の航空映画では、僅差で2位になった。■
Move Over 'Top Gun: Maverick', 'Devotion' Is Authentic Aviation Cinematography - The Aviationist
November 23, 2022 Military Aviation, Military History
About Tom Demerly
Tom Demerly is a feature writer, journalist, photographer and editorialist who has written articles that are published around the world on TheAviationist.com, TACAIRNET.com, Outside magazine, Business Insider, We Are The Mighty, The Dearborn Press & Guide, National Interest, Russia’s government media outlet Sputnik, and many other publications. Demerly studied journalism at Henry Ford College in Dearborn, Michigan. Tom Demerly served in an intelligence gathering unit as a member of the U.S. Army and Michigan National Guard. His military experience includes being Honor Graduate from the U.S. Army Infantry School at Ft. Benning, Georgia (Cycle C-6-1) and as a Scout Observer in a reconnaissance unit, Company “F”, 425th INF (RANGER/AIRBORNE), Long Range Surveillance Unit (LRSU). Demerly is an experienced parachutist, holds advanced SCUBA certifications, has climbed the highest mountains on three continents and visited all seven continents and has flown several types of light aircraft.
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