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台湾海峡で緊張が高まる中、台湾軍は中国の侵攻部隊にどう対処する想定なのか
今年、中国と台湾間の緊張は1995-96年の台湾海峡危機以来で最も高まっており、多くの識者が今後、実際に衝突する可能性は否定できないとしている。
習近平国家主席は10月16日の第20回共産党大会の開幕で、台湾奪取のため「武力行使を放棄しない」と宣言した。大会閉幕後、習近平は中国の指導者として歴史的な3期目を確保しただけでなく、忠誠心の高い人物を指導的立場に据えた。これによって、反対は皆無に近くなり、意思決定権での支配力が強化されるのが確実となった。
2019年、彰化の高速道路で実施された対侵攻訓練で、ハープーン対艦ミサイルで武装した中華民国空軍のF-16が離陸した Photo by Patrick Aventurier/Getty Images
習近平は、台湾の統一を繰り返し掲げており、最終的には自分の遺産を確保するため実現を目指す可能性があり、台湾への姿勢を強め、統一を急ぐ可能性がある。
人民解放軍の創設100周年に当たる2027年を、中国が台湾を侵略する年として、米政府関係者を含め、多くの人が考えている。CIAのウィリアム・バーンズ長官は10月上旬、CBSイブニングニュースに、習近平は平和的手段による統一を望んでいるものの、遅くとも2027年までに台湾侵攻を成功させる準備を整えるよう人民解放軍に指示している、と語った。
台湾の武力占領は、間違いなく高リスク作戦となり、戦争計画が失敗すれば、政治的に不安定になる可能性がある。北京は経済的、文化的な影響力のソフトパワーを行使し、台湾を接近させようとしているが、成果は上がっていない。そこで、PLAというハードパワーで、強制と威嚇を行うようになった。
独立派の蔡英文総統が就任した2016年からH-6爆撃機による「島包囲」訓練が始まり、中国のグレーゾーンでの攻撃は徐々に強化され、2020年からは防空識別圏(ADIZ)の南西隅に頻繁に侵入している。
中華民国空軍の F-16 戦闘機が、台湾島に接近した巡航ミサイル搭載の PLA 空軍の H-6K 爆撃機を阻止した。 Military News Agency, ROC
ナンシー・ペロシ米下院議長以下2022年8月の議会代表団は、北京にエスカレートを正当化する理由となった。相当数のPLA航空機が台湾海峡の暗黙の了解である中央線上に出撃し、艦艇が隣接地帯を航行した。
短距離弾道ミサイルは、台湾の周囲と上空で指定された封鎖区域に発射され、台湾の限定的封鎖を模擬した。航空・海上封鎖は、台湾の息の根を止めることを目的とした、ハードパワーの次の段階となる可能性がある。しかし、これは日本や韓国の経済的生命線に影響を与え、紛争に発展する可能性がある。
台湾の邱国成Chiu Kuo-cheng国防部長は10月6日、立法院の外交・国防委員会で、中国が航空機、ドローン、船舶で台湾領土に侵入した場合、「先制攻撃」とみなすと発言し、さらに踏み込んだ姿勢を見せた。これは、台湾が実際の攻撃に直面した場合の従来の「先制攻撃」の定義と対照的だ。
10月12日の別のセッションで、このような「先制攻撃」に対してどのような対抗措置が取られるかを問われた邱部長は、侵入した対象に対し武器を試射し、警告に従わない場合は防御的な「反撃」を開始すると言及した。邱部長は、このような「先制攻撃」に対する反撃は、双方が戦争に突入することを意味し、そのため台湾軍は自制していると認めている。
8月に始まった一連の演習で、DF-15B短距離弾道ミサイルの発射を撮影したPLA公式ビデオのスクリーンショット PLA
とはいえ、実際に「先制攻撃」が行われ、軍事衝突が迫れば、台湾の軍事・政治指導者は重要指標に目を配ることになる。沿岸部でのPLA軍の大規模な増強、海軍資産の広範囲な展開、PLAロケット軍の短・中距離弾道ミサイル部隊などの分散、戦争努力を支えるための大規模な物資の備蓄と物流の増強だ。大規模な国際的制裁に直面しても、中国は大義を支持し、プロパガンダマシンが現地住民に解き放たれるはずだ。
PLAが台湾周辺で今夏使用した様々な訓練場所を示す地図。中国大陸からのSRBM発射の方向を示す矢印が描かれている。色の異なる斜線部分は、この地域にある国々の排他的経済水域(EEZ)を示している。DETRESFA_
台湾の現在の軍事態勢は、一般即応態勢と緊急即応態勢をとっている。後者は、紛争が差し迫る状態で、部隊を戦争状態に置くもの。一般即応態勢はさらに、「一般準備」「集中」「強化」の3つの警戒レベルに分けられる。。8月のペロシ訪中による緊張の高まりで、中華民国軍の警戒態勢は、3段階の平時の警戒レベルのうち最も高い「強化態勢」へ引き上げられた。
防衛態勢が強化されると、台湾軍の主要幹部は作戦と対応を監督するため、指揮統制施設に入る。最も著名なのが統合作戦司令センター、通称「衡山司令センター」 Hengshan Command Centrだ。台北市郊外の大指にある山中に建てられた堅固な施設で、三軍の最高レベルの指揮統制センターだ。地元メディアによると、国防相と軍の参謀総長が交代でこの施設から作戦を監督した。
このほか、総統や閣僚を収容するとされる「圓山司令部」 Yuanshan Command Centerも厳重施設だ。PLAは台湾指導者への攻撃を訓練しており、意思決定を不能にし迅速な勝利につなぐのを目的としているのが知られている。もう一つ有名な施設は、台北南部の蝦蟇山Toad Mountainにある中華民国空軍の統合航空作戦センター(JAOC)だ。この施設は、台湾周辺空域を監視し、航空脅威への作戦を指揮する。
中華民国軍部隊は警戒態勢に入る。緊張が高まった8月、中華民国陸軍(ROCA)は陸軍部隊の待機部隊3個をそれぞれ中隊から大隊に格上げした。中華民国空軍も戦闘空中哨戒(CAP)を強化し、戦闘機のスクランブルを準備した。
台湾海峡を二分する中央線から遠くない澎湖Penghu島の馬公Magong基地に前方展開されている、天馬Tian Ju分遣隊のF-CK-1C/D固有防衛戦闘機もこの取り組みに参加する。F-CK-1は通常10数機あり、スクランブル時間が5分と早いため、天舟Tian Ju任務を専ら担う。F-16やミラージュ2000は、さらに1分の猶予を必要とする。
澎湖島の馬公空軍基地の位置と台湾海峡、大陸との位置関係。.Google Earth
馬公の前方展開は、スクランブル戦闘機が侵入するPLA機を迎撃するトランジットタイムを迅速にし、過去数十年間は、海峡沿いの好天候により春と夏の間に実施されてきた。しかし、2020年後半から、台湾ADIZ内でPLAの航空活動が活発化したため、1年の大半をカバーできるよう延長された。
澎湖群島の馬公基地。. GOOGLE EARTH
中国からのいかなる侵略に対しても、台湾の軍事的対応は、「固安Gu'an操作計画(OPLANs)」として知られる国防計画で導かれる。その内容はほとんど知られていないが、台湾の防衛戦略を実施し、本格侵攻を含む各種紛争シナリオに対応する強固なプレイブックだと考えられている。この計画は、新たな脅威の理解と新たな防衛能力の導入に基づき、毎回改良されている。現在進行中のウクライナ紛争と8月の台湾周辺でのPLA演習で得られた教訓は、確実に OPLANの見直しの一部となるだろう。
紛争となれば、台湾は三軍の弾薬を緊急発注することになる。特に中華民国空軍のミサイルは、現在の在庫では高密度戦で数日分しか持たず、戦闘能力維持のため追加納入が不可欠と考えられる。敵対行為が発生した場合、台湾への補給は現在のウクライナよりはるかに複雑になり、PLAの接近阻止/領域拒否(A2/AD)能力の強化でさらに悪化するはずだ。
嘉義基地に展示された中華民国空軍のF-16と搭載兵器のオプション。 YOUTH DAILY NEWS
海外調達を補完すべく、台湾国内の国防生産施設は、小火器用弾薬から天剣空対空ミサイル、天空三号地対空対弾道ミサイルシステム、極秘の雄勝陸攻巡航ミサイルまでノンストップ製造される。検討中の米台兵器生産計画が実現すれば、米国設計の兵器が現地生産され、台湾の生産能力が高まる可能性がある。
中華民国軍による戦争準備の正確なスケジュールと順序は、機密扱いだ。しかし、軍事演習の分析を通じて、推論ができる。この中で最も注目されるのは、公道に空軍の滑走路を設置したことだ。空軍基地周辺に位置する公道は、固定翼機運用に迅速に転用できるよう最初から建設された。空軍基地が使用不能になった場合のバックアップとして公表されているが、滑走路は中華民国空軍の航空戦力に対するPLAの照準を複雑にする分散場所としても機能する可能性がある。
滑走路演習は数年おきに行われており、漢江演習 Han Kuang exerciseでは5カ所すべての滑走路が運用評価を受けた。各航空基地には、誘導路や滑走路を改造し、1つまたは2つの代替滑走路があると考えられている。
PLAは、本島に対して2000発以上の短・中距離弾道ミサイルと地上・空中発射巡航ミサイルを使用できるため、台湾軍は武力衝突開始時に持続的かつ大量に予想される最初のミサイル攻撃を乗り切り、戦力温存フェーズに入る。
分散と別に、中華民国空軍は生存能力を確保するために硬化を重視するドクトリンも確立した。F-16戦闘機140機、ミラージュ2000戦闘機54機、F-CK-1戦闘機129機からなる中華民国空軍第一線戦闘機隊の大部分は、花蓮Hualienと台東Taitungにある嘉善と石山Chiashan and Shizishanの強化施設に避難するだろう。
2016年、海外出張から帰国した蔡総統の飛行機を護衛する武装した中華民国空軍のミラージュ2000-5戦闘機4機 Office of the President, Republic of China
両基地は1980年代初頭に「建安プロジェクト」(Build Safe)で構想され、台湾の戦闘機部隊の大部分を避難させることができると推測される。中央山脈に囲まれ、東側だけ露出しているため、構想当時は安全な聖域と考えられていた。しかし、PLAが島全周作戦を実施し、バンカー破壊弾を導入し、現在では生存能力が不確かになっている。
パレード中の中国製極超音速ミサイルDF-17の2つのモックアップ。この兵器は、短距離弾道ミサイルのロケットブースターと、弾頭として無動力の極超音速ブーストグライドビークルを組み合わせたものである。 China Military
中華民国空軍の地上防空部隊は、レーダーや基地などの重要資産を航空攻撃から守るため、島全体に扇状に配置される。ペイトリオット先進能力2(PAC-2)、PAC-3、および国産開発の天工Tien Kung3号砲台で、台湾に降り注ぐミサイル弾幕を減らすことが期待される。同時に、中華民国空軍のトラック搭載型秘密攻撃ミサイルシステムである「雄勝」Hsiung Sheng「雲峰」Yun Feng両巡航ミサイルも潜伏し、台湾の反撃能力として、海峡を越えたPLA目標への発射命令に待機する。
高雄南部で天宮III地対空ミサイルと発射台の前を行進する台湾陸軍士官学校の学生たち。 Photo credit should read SAM YEH/AFP via Getty Images
海上では、出動可能な中華民国海軍(ROCN)艦艇はすべて海に押し出されるはずだ。しかし、PLAは、台湾周辺に強力な海軍力を誇示するだけでなく、大陸から対艦弾道ミサイルを発射する能力も実証済みで、このような事態は実現不可能である。
SPS-48E 3D捜索レーダーとSM-2ミサイルを搭載した4隻の基隆Kee Lung型駆逐艦は、比較的能力の高い艦上防空能力を提供するだけでなく、台湾の陸上レーダーが破壊された場合に、航空監視の冗長性も提供する。6隻の「濟陽Chi Yang(ノックス)」級フリゲートは、時代遅れだが、各種ソナーとASROCシステムで、中華民国艦隊の最も有能な対潜水艦戦能力を提供している。
中国海兵隊が海岸攻撃演習で水陸両用戦車に伴われ上陸する。PLA
機雷原は、Min Jiang級機雷敷設艇4隻などが展開する。台湾海峡、沿岸、港湾に敷設された各種機雷は、制海権を握ろうとするPLAN艦船や水陸両用部隊への台湾のA2/AD戦略の一環となる。
台湾の防衛戦略で重要でありながら見落とされがちなのが、機雷戦力だ。現地で建造され、2020年から引き渡された4隻のミンジャン級機雷艇Official Photo by Mori/Office of the ROC President
海蜂旅団は、空軍ミサイル部隊と同様に、亜音速の「雄風Hsiung Feng2」と超音速の「海豊3」の移動式ミサイル砲台を搭載し、指定場所に展開し、PLAN艦船に対する照準命令を待ち受ける。2020年代半ばにハープーン沿岸防衛砲台が加わる。
陸上防衛では、正規軍を補完するため予備役が大量招集される。中華民国部隊は、強化施設に身を隠すか、隠蔽を図ることになる。可能性のある中国軍の水陸両用攻撃や、中国軍の侵攻部隊の大部分を送り込むための海や空港の占拠に対抗する期待が部隊にある。塹壕や強襲地点や待ち伏せ地点は、より大規模な前線防御システムの一部として設置される。
台湾近海で行われた中国人民解放軍東部戦区司令部の戦闘演習・訓練で、双眼鏡を覗く兵士(2022年8月5日撮影)。Photo by Lin Jian/Xinhua via Getty Images
中華民国航空・特殊部隊司令部の攻撃・多用途ヘリコプターは、基地外の公園や競技場など分散した場所に展開することもあり、漢江演習で訓練している。
台湾侵攻のシナリオでは、中華民国軍の最終目標は、少なくとも2週間を無援助で持ちこたえることであり、この期間で国防当局者が言及している通り、米国や国際社会が助けに来てくれることを期待することになる。米国は「戦略的曖昧さ」を標榜しているため、実際に軍隊を台湾島の防衛に投入するかは未知数だ。さらに台湾軍と米軍間で相互運用性訓練を行っていないため、両軍が台湾防衛で共同戦闘を行っても、効果が限定される可能性があることに注意しなければならない。
2021年11月、台北と北京間で再び緊張が高まる中、中国の侵略に対する防衛を模した軍事演習の一環で、海岸防衛作戦を行う中華民国軍の兵士。 Photo by Ceng Shou Yi/NurPhoto via Getty Images
台湾侵攻は、近年で最も破壊的な紛争のひとつとなり、人命と財産の大規模損失をもたらすだろう。意思決定者が検討すべきではない。■
This Is How Taiwan’s Military Would Go To War With China | The Drive
BYROY CHOO|PUBLISHED NOV 17, 2022
Roy Choo is an aviation and defense journalist and photographer and the lead author of the book Modern Taiwanese Air Power.
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