ズムウォルト級駆逐艦 DDG 1000 の想像図。海上統合艦隊で運用され、陸上の海兵隊部隊を支援し、沿岸・航空・水中戦も行う、新クラスのマルチミッション型米海軍水上戦闘艦だ。
ズムワルト級は再起動できる。2001年9月の同時多発テロの数ヵ月後、米海軍は、冷戦後のブルーウォーター支配を念頭に新しい3種類の「艦船群」を発表した。沿岸戦闘艦(LCS)、21世紀型駆逐艦(DD21、現DDG 1000)、21世紀型巡洋艦(CG(X))で、ハイエンドの統合防空ミサイル(IAMD)に加え、沿岸での作戦や陸上作戦支援に重点を置いていた。20年がたった今、当時想定された艦隊構造は存在しない。「テロとの戦い」の拡大や競合相手としての中国の台頭といった戦略的衝撃の犠牲となったこと、また、プログラム上の疑問ある決定により大幅なコスト超過を招いたことによる。
太平洋(2016年12月8日)海軍で最も技術的に進んだ水上艦である誘導ミサイル駆逐艦USSズムウォルト(DDG 1000)(左)は、沿岸戦闘艦USSインディペンデンス(LCS2)と編隊を組んで、サンディエゴの新しい母港への3カ月にわたる旅の最終行程を進行中である。ズムウォルトは到着後、戦闘システムの設置、試験・評価、艦隊との統合運用を開始する予定。(U.S. Navy photo by Petty Officer 1st Class Ace Rheaume/Released)161208-N-SI773-0401
米海軍は、CG(X)を全面中止し、LCSは大量建造したが、ハイエンド紛争に適さないとして、多くを退役させる意向だ。その結果、ズムワルト級3隻が残ることになった。ズムワルト級は、海軍の最新駆逐艦クラスであるアーレイ・バーク級フライトIII DDGの推進力と数倍の電力を生み出す統合電力システムを備えた1万4千トンのマルチミッション艦である。ズムウォルトは、海軍がDDG51ラインの再開を決定したことにより、プログラムの不手際と産業基盤での問題両方が発生し、艦隊に加わるまで大変な苦労を経験した。しかし各艦が提供する重要な戦闘上の利点を実現するため必要な予算を支出する機運が高まっている。Hope Hedge Seckが19FortyFiveの記事で最近詳述している。国防総省(DoD)と海軍は、期待される利益を実現するため、積極的に行動すべきである。
2023年後半にUSSズムワルト (DDG 1000)で始まる予定作業は工期2年で、残り2隻でもスケジュールの許す限りConventional Prompt Strike (CPS)設置を行う予定だ。ズムウォルトは現在インド太平洋に配備中で、次回の配備時に極超音速CPSミサイルを搭載すると思われる。
ズムウォルトでの作業を始めてから 5年から 7年後に、海軍は 3 隻に重要な改造を施すことができる。このような改造を行う予算は、弾道ミサイル潜水艦、将来の航空団、水上艦隊が使用する次世代ヘリコプタや無人機、次世代駆逐艦などの優先事業と競合する。中国の侵略阻止が重要となっており、この任務における海軍の役割を考えれば、海軍が現在の即応性と将来の能力投資の間で破滅的な選択をしないよう、国防総省は十分な資金をホワイトハウスに求めるべきだ。
CPSの先:海上制圧型駆逐艦へ
ズムワルトへのCPS搭載は、始まりに過ぎない。海軍がイージス戦闘システムを統合戦闘システムへ進化させ始めた今、ズムワルト級という問題を抱えた3隻の「ユニコーン」戦闘システムを放置したままにはしておけない。積極的なCPS導入計画に過度のリスクを与えることなく、イージスを統合する技術的解決策に到達する作業を本格的に開始しなければならない。さらに、CPS搭載に必要なメンテナンス中は、艦船が造船所を離れてから蓄積された既知の船体、 機械、電気(H, M&E)に関する問題を解決する必要がある。しかし、最も重要なことは、海軍と太平洋艦隊が、同艦の運用コンセプトを考案し、実施することであり、地域の海上支配への献身を反映するものである。
まず、海軍は3隻でインド太平洋での常時配備をサポートできるか判断する必要がある。この「1.0」プレゼンス目標は、基地の場所や、必要なインフラの強化など、その他決定を後押しすることになる。今こそ、決断とそれに伴う投資を行うべき時だ。
CPS を搭載した DDG 1000 が継続的に配備されれば、中国と北朝鮮に対し、通常兵器(トマホーク、スタンダードミサイル)と、搭載する周辺垂直発射システム(PVLS)80セルによる強い抑止力のメッセージを送れる。同艦は、空母打撃群(CSG)の一部として使用されない。むしろ、無人艦、駆逐艦、LCS、揚陸強襲艦で構成する水上・水陸機動団の先頭に採用され、指揮統制(C2)機能を果たす幕僚を乗艦させるだろう。
第二に、イージスから統合戦闘システムへの移行の一環として、海軍は適切な防空・ミサイル防衛レーダーを艦船に装備する必要がある。選択肢としては、SPY-6 AMDRまたはSPY-7がある。
第三に、3隻とも現在、有人ヘリコプターを運用する装備があるが、無人航空機(UAV)を運用すべきだ。当面は、MQ-8Cファイアスカウト数機を採用し、艦内レーダーやその他の監視システムの有効範囲を広げるとしても、より長距離の中高度・長期耐久(MALE)無人機を最初に受領する必要がある。また、UAV以外にも、海軍が中型無人水上艦(MUSV)や大型無人水上艦(LUSV)を導入する場合、DDG 1000は無人プラットフォームの修正保守を行う訓練を受けた乗組員を含む、無人プラットフォームのC2 「羊飼い」の役割を果たす。ミサイル数十発を搭載した無防備なLUSVが敵の手に落ちる心配は、強力なDDG 1000が常に近くに存在すれば軽減される。
平時には、DDG 1000 と乗組員は、前方展開のC2 ノードとして、また前方戦闘力と持続力を提供することで、通常型抑止力を提供する。DDG 1000 は、他部隊の能力を統合・調整することで、より強力な部隊を構築し、1)攻撃は成功しないか、劇的に遅れるという認識(拒否)、2)攻撃による推定利益をはるかに上回る反応があるという認識(罰)、を通じ敵対者を抑止することができる。
DDG 1000は、陸上と海上双方の目標を射程内に収め、迅速攻撃する能力、広範囲に分散した部隊を指揮統制する能力、敵対者に堅固だが一瞬の目標を提示する能力によって、抑止力を達成できる。DDG 1000は、戦場と地域のISR環境を活用し、敵艦隊を探し出し、破壊すると同時に、敵の陸上部隊を射程距離で威嚇する。特定の状況下では、パッシブターゲッティングネットワークで動作時の同艦のステルスプロファイルは、陸上の移動式巡航ミサイルや弾道ミサイルの位置などの陸上イベントへの迅速対応を実現する。
Zumwalt-class destroyer. Image Credit: Raytheon.
結語 ズムワルト級は再起動可能だ
アップグレードされたDDG 1000 の指揮統制機能により、太平洋艦隊司令官は、地域制海権と打撃作戦のC2で比類なき能力と、CPSと長距離攻撃兵器数十発による抑止力を手にできる。この形の未来は、海軍が計画を立て、国防総省が海軍のその他優先事項に支障をきたすことなく資源を投入した場合にのみ実現できる。ズムウォルト級は、設計意図に沿いつつ、21世紀を代表する駆逐艦へ進化を遂げるチャンスを迎えている。今は、迷っている時ではない。■
Zumwalt-Class Can Become a Dominant 21st Century Destroyer - 19FortyFive
Bryan McGrath is the Managing Director of The FerryBridge Group LLC, a national security consultancy. All views contained herein are his. He tweets @ConsWahoo.
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