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イラン核武装を絶対容認できないイスラエルが次にとる行動とは。イスラエルの戦略文化とは。

F-35I Adir Israel

F-35I Adir. Image Credit: IDF Air Force.

 略的文化の枠組みは、厳しい議論を経て、いまも健在である。グレイの戦略的文化を文脈として採用すれば、イラン核協定の可能性に向けた現在のイスラエルのアプローチが生きた適用例となる。イスラエルのヤイール・ラピドYair Lapid首相が最近の国連総会で述べた声明に示されている。「核兵器を持てば、イランはそれを使うだろう...わが国はわれわれを滅ぼそうとする勢力に対し手ぶらではいられない。今日のユダヤ人には国家がある」。

この発言はイスラエルの戦略文化の特徴を反映している。すなわち、脅威の具体化を防ぐこと、脅威評価において敵の能力と意図を収束させること、ホロコーストを念頭に置き「二度と起こさせない」アプローチ、すべて失敗した場合の独自の軍事行動への依存、例外主義などだ。

米国はイスラエルと同様、イラン核武装を阻止することをめざしている。しかし、そのための手段については、イスラエルと考えが異なる。これは安全保障上の利害の違いであると同時に、戦略文化の衝突でもある。

イスラエルの戦略文化を理解することが、イスラエルの政策、戦略、作戦を理解する上で非常に重要なのだ。

核協定とイスラエルの戦略文化

イスラエルはイランとの新たな核合意に署名することを思いとどまるよう、主に欧米諸国に質の高い情報に裏打ちされた公開キャンペーンを展開している。首相、国防相、モサド長官、国家安全保障顧問など、イスラエル高官は最近、このキャンペーン推進のため相次いで訪米している。

また、イスラエルは米国との協力関係を強化し、万が一協定が結ばれても、イランに対する行動の自由を保持すると強調している。イランへの秘密行動もイスラエルによるものとされている。さらに、イスラエルはイランに包括的に関与しようと、イランの悪意ある活動を公にし続けており、イランの地域的影響力に対抗した「影の戦争」を展開しているとされる。

イスラエル首相は、先ほどの国連総会での演説で、「イラン政権が核兵器を持てば、それを使うだろう」と主張した。これは、敵対国の能力と意図を収斂させようとするイスラエルの傾向を反映している。この傾向は、1979 年の時点でブースが述べており、民族中心主義が脅威評価における能力の過大 評価を招く可能性があると主張している。

その意味で、イスラエルはイランの戦略や意思決定だけでなく、イランの文化も理解していると考える傾向がある(例えば、イスラエルは1979年イスラム革命に至る社会の激変を西側諸国より認識していた)。このようなイスラエルの目に映る内容は、西側諸国にはないものだ。イスラエル首相が最近、国連加盟国を非難したのが一例だ。「何を恐れているのだ?人類の歴史の中で、沈黙が暴力を止めたという前例があっただろうか」。

このイスラエルの論理によれば、予防が必須だ。国際的な支援の有無と無関係に。たとえ大きなリスクを伴うとしてもだ。これもイスラエルの戦略文化の典型的な特徴である。1981年にイラク核施設を攻撃し、2007年にシリア核施設を攻撃した際に行使された「ベギン・ドクトリン」がこれを端的に示している。

歴史をさかのぼれば、1967年の六日間戦争におけるイスラエルの先制攻撃も、予防論理と行動の自由を守る主張が根底にあったのかもしれない。例えば、2010年代初頭から行われているイスラエルの「戦間キャンペーン」は、当初はレバノンのヒズボラへの最新兵器の移送を阻止するのが目的だったが、イランの影響力を制限するキャンペーンに発展している。

ホロコーストへの言及は、イスラエルの戦略的文化のもう一つの側面であり、イランへのアプローチにも現れている。ラピド首相は国連演説で、次のよう述べた。「今回、われわれは、われわれを滅ぼそうとする者たちに対して、手ぶらで立ち向かうのではない。ユダヤ人は今日、国家を持っている。軍隊もある。必要なことは何でもする。イランが核兵器を持つことはない」。「二度とさせない」という論理がはっきり浮かび上がっている。さらに、イスラエル国防軍参謀総長は最近、イランに核兵器を持たせてはならないとほのめかした。発言は、アウシュビッツ強制収容所を訪問時のもので、このような訪問はここ数十年、日常化している。

イスラエルの戦略文化の最後の特徴は、イスラエルが例外的手段で対処せざるをえないユニークかつ特異な脅威に直面しているとする例外主義、国際的支援に対する懐疑心に支えられた自己信頼、すなわち孤独の認識である。イスラエルは常に国際的な支持と正当性を求める一方で、外交政策はしばしば世界を軽視し、イスラエルが信頼できるのは自分自身だけであると想定してきた。後者のアプローチは、ユダヤ教聖書の伝統に根ざしており、イスラエル国民は「一人で住む」者として描かれている。現在のイランに対するアプローチと、それに呼応するイランへの圧力の国際社会への要請において、イスラエルは例外主義と孤独の認識の双方を示している。

F-16I Sufa

F-16I Sufa. Image Credit: Creative Commons.

イラン問題は、イスラエル指導部が述べるように、国連加盟国(イラン)が他の加盟国(イスラエル)を破壊すると公然と脅し、イランがホロコーストに公然と疑問を呈しているという珍しいケースであるからだ。それゆえ、イスラエルは独自行動すべき時が来ると理解している。

政治的・軍事的アプローチは異なっても、戦略文化は似ている

イスラエルでは、イランに対するアプローチとそれに関連する米国との相互作用について、内部で議論が行われている。例えば、イスラエル現政権を批判するネタニヤフ元首相は、より攻撃的なアプローチを米国や国際社会へ提唱している。ネタニヤフ自身、首相時代の2015年、オバマ政権の不満をよそに、目前に迫ったイランとの協定に反対する演説を米議会で行っていた。また、2018年にはモサド作戦を公に利用し、トランプ政権に圧力をかけ協定を撤回させた。これらの動きはいずれも、当時のイスラエルで内部論争を巻き起こした。

イスラエルの国家安全保障機構の内部でも、意見が異なる。モサド長官が協定に最も極端に反対する人物として目立ち、(公には発言していないが)米国の政策を批判する発言さえしている。一方、イスラエル国防情報局長は、交渉の不在よりもイランとの「悪い合意」を好み、イスラエルに軍事的オプションを準備する時間を与えるとしている(公の発言ではない)。

イスラエルは過去にも同様の内部議論に直面したことがある。例えば、2010~2012年頃にイランの核開発計画に対する軍事攻撃を検討した際、イスラエルの政治指導部は攻撃に賛成していたが、国家安全保障部門は、深刻な結果を招く可能性やイランの核開発計画を十分に損ねる可能性は低いと考え攻撃に反対した。

このような視点の違いは、やはりイランへの基本認識、つまり戦略文化が似ていることを反映しているように思われる。さらに、2021年にイスラエルで行われた世論調査では、ユダヤ系住民の大半がイランを実存的脅威とみなし、イスラエルによるイラン攻撃を支持していた。このようなイスラエルの信念は、政治的なスタンスや軍事的なドクトリンとはほとんど無関係に見える。

イスラエルの戦略文化に変化が起きているのかを理解するには時間がかかるが、イスラエルで疑念が生まれつつあるのかもしれない。モサド元長官であるパルドとハレビは、イランが核兵器保有してもイスラエルの滅亡を意味するものではない、と示唆している。コメンテーターや国防専門家も同様の考えを示している。バラク元首相兼国防相は、イスラエルはイランの核武装という新たな局面に備える必要があると主張した。

イスラエルと米国間の戦略文化の衝突

米国はイスラエルと同様、イランの核兵器保有を阻止することにコミットしている。しかし、目標に到達する方法に関する政策や戦略がイスラエルと異なる。具体的には、ネタニヤフ首相がオバマ政権と衝突した2015年、米国がイランへの単独軍事攻撃を警告した2011年、そして2007年に発表された米国の国家情報評価(NIE)がイスラエルで厳しい批判を浴びた後、イランに関し、米=イスラエル戦略パートナーの対立は何度も起こっている。

こうした不一致は、国家安全保障の視点の違いだけでなく、戦略文化の衝突を反映したものだ。イランの核問題をめぐる米国の戦略文化は、軍事的解決は最終手段であり、外交に楽観的で、問題解決の姿勢を持ち、イランの悪質な活動には関与せず、一度に一つの問題の解決をめざしている。さらに、米国はイランを存亡の危機と考えていない。国家安全保障上、もっと差し迫った問題が他にあるからだ。

結論

イラン問題の文脈でイスラエルの戦略文化を認識することは、イスラエルの政策、戦略、作戦の理解を深めることになる。また、イスラエルがイランに関与する際に、どのようなリスクを負うことを望んでいるのかの背景を理解できる。このような理解は、たとえ安全保障上の利害が異なっていても、パートナー間の信頼醸成を可能にする。したがって、戦略文化の枠組みは、戦略の実践に役立つ。■

Israeli Strategic Culture And The Quest to Ensure Iran Never Gets Nuclear Weapons - 19FortyFive

ByItai Shapira

Itai Shapira is retired colonel from the Israeli Defense Intelligence (IDI), with more than 25 years of experience as an intelligence analyst and manager on the tactical, operational, and strategic levels. Itai has published articles about Israeli strategic and intelligence cultures and about broader issues of intelligence in Intelligence and National Security, War on the Rocks, Defense One, Small Wars Journal, and RUSI. He is currently a PhD candidate at the University of Leicester.

In this article:featured, Iran, Iran Nuclear Deal, Israel, Nuclear, Yair Lapid

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