スキップしてメイン コンテンツに移動

性能範囲を広げつつあるXQ-58ヴァルキリーは各国が注目する低価格UAVとして受注を獲得できるか注目。

 

USAF


クレイトスは、ステルス低価格のXQ-58Aの飛行性能を拡大し続け、顧客が並び始めていると述べている

 

ローンメーカーのクレイトスは、同社のステルスドローンXQ-58Aヴァルキリー Valkyrieが、さらに長時間、高高度で、重い総重量で飛行できる性能を最近のテスト飛行で示したと発表。新規顧客からヴァルキリー発注の見込みがあり、また、別の顧客とも交渉中であるとしているとしている。

クレイトスは、昨日のプレスリリースと四半期決算説明会で、XQ-58Aの開発について発表した。現在までのところ、同機を購入したのは米空軍のみだが、研究開発および試験・進化の取り組みを支援するため、各種機材を使用している。このうち最もよく知られているのはスカイボーグSkyborgで、空軍研究本部(AFRL)と空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)が主導するプロジェクトとして、人工知能(AI)駆動の「コンピュータブレイン」とその他関連技術の開発を中心に、高度自律性を備えた各種ドローンに統合される。

クレイトスがテストフライト発表で同時公開した、XQ-58A発進時の写真。 Kratos

クレイトスのプレスリリースでは、最近の飛行性能拡張テストフライトがいつ行われたかは具体的には書かれていないが、アリゾナ州にある米軍の広大なユマ実験場(YPG)で行われたとある。テストに使用されたのは、同社が自社開発した12機の新規生産機体のブロック2仕様のXQ-58Aだった。ヴァルキリーは、来年に最後の1機が完成する。

リリースによると、最近の飛行は、「(以前の政府の範囲制限に基づき)プラットフォームで以前に承認され実証されたよりも長く、高く、重いミッション重量で、より長い距離で飛行し、XQ-58Aの拡張性能を証明した」とある。クレイトスは、飛行時間、飛行高度、総距離、重量などの詳細を明らかにしていない。

同社ウェブサイトによると、XQ-58Aは最大打ち上げ重量6,000ポンド、海抜45,000フィートまでの高度で飛行でき、最大航続距離は約3,000マイルとある。ヴァルキリーは、発射台からロケットで離陸し、飛行終了後はパラシュートで回収する。

滑走路に依存しないことは、目標地域に近い場所での前方作戦に有利だが、滑走路が全くない場所からは利用できない可能性がある。昨日のクレイトスのプレスリリース写真のキャプションには、滑走路を使わない打ち上げ・回収方法は、「有人作戦に利用できる滑走路」を維持するのにも役立つとある。同社によれば、XQ-58Aは迅速に配備され、比較的小さい設置面積で厳しい場所からも運用されることを意図している。前方展開に対応しようとコンテナ型発進システムのコンセプトもあった。

ミッション終了後、パラシュートで降下するXQ-58A。また、下には地上に降りたときのクッションとなるインフレータブルエアバッグが見える Kratos

XQ-58Aは、アトリタビリティと呼ばれるものを視野に入れて設計されている。つまり、高価で複雑な「絶妙な」資産を使えない、高リスクのシナリオで使用できるコストと能力のバランスだ。The War Zoneは過去にクレイトスと、無人航空機の設計におけるアトリタビリティとアフォーダビリティを深く話し合ったことがあります。

XQ-58Aのアトリタビリティは、空軍が実証ずみで、空軍は最初のヴァルキリーをオハイオ州のライトパターソン空軍基地の博物館に送った。同軍は、このドローンが「大規模アップグレードや修理」の予定はなかったため、使用後にこの決断を下したと述べている。

さらに、「この飛行は、政府の射場から離れた射場や作戦任務のための冗長無線/通信(「コムス」)パッケージによる暗号化通信で実施され、実証された。最後のテストポイントでは、通信途絶を想定した着陸地点までの航行が行われた」と説明がある。「機体は目標地点に着地し、飛行と機体回収の任務終了段階において、RF(無線周波数)通信を使用しない自律能力を実証した。この能力は、システムが『基地』に戻る際に、敵に探知されRF通信の放射を追跡される可能性を軽減するのに役立つ」。

XQ-58Aが「無線封印」モードで自律的に動作する能力は、脅威を突破したり回避する際に潜在的な利点となる。もちろん、電子戦妨害の脅威が高い環境でも任務を継続し、基地に安全に帰還することが可能だ。米軍などは、将来のハイエンド紛争は事実上そうなると予想している。ドローンの大群は、分散型「メッシュ」データ共有ネットワークの運用で、電子戦攻撃に対する回復力を高め、チームとして協調行動できる利点もある。

クレイトスのプレスリリースでは、今回の特別なテストフライトがAutonomous Collaborative Enabling Technologies (ACET) と呼ばれるAFRLの取り組みの支援であり、「Collaborative Combat Aircraft (CCA) などのAutonomous Collaborative Platforms (ACP) の開発に焦点を当てている」とも述べている。CCAは、空軍の次世代航空支配(NGAD)空戦構想の一部で、多様なミッションを実行するため有人機と様々なレベルで協力することを意図した高度自律性を有する無人プラットフォーム各種を中心に展開する期待が出ている。NGADには、ステルスの有人第6世代戦闘機以外に、先進的なセンサー、武器、エンジン、ネットワーキング、戦闘管理システムなどの開発も含まれており、すべてが新しい空戦の「生態系」を形成する。

クレイトス・ディフェンス&セキュリティ・ソリューションズの社長兼CEOエリック・デマルコEric DeMarcoは、「デジタルシミュレーションやモデリングを評価しつつ、当社のターゲットシステム機が実際の飛行や射撃によって軍事訓練や兵器開発をサポートしているように、クレイトスの定期的で限界を超えた開発飛行や任務準備飛行こそが最終的に敵を阻止し我が軍の即応性を向上させると確信しています」と声明で述べている。

クレイトス無人システム部門社長のスティーブ・フェンドリーSteve Fendleyは、最近の試験飛行に関連する声明の中で、「クレイトス/AFRLチームは、今真に未知の領域で限界を押し広げ、能力を進化させ続け、任務能力と有効性が個別および分散CCA能力と航空機の質量の組み合わせで達成されるCCAクラスにおける手頃感を促進しています」と述べている。「ウォーゲームや分析では、今日の紛争分野で勝利する解決策は質量であり、より少ない数の精巧なシステムでは常に失敗すると一貫して報告されています。クレイトスは、破壊的で手頃な(シンプルでエレガントによって可能になる)ソリューションセットにレーザーフォーカスしています」と述べた。

The War Zoneは以前、米軍とその契約下で働くシンクタンクが行ったウォーゲームが、相当のレベルの自律性を持つ低価格ドローンでネットワーク化された群れが、台湾をめぐる中国との紛争でゲームチェンジャーとなり得ると繰り返し示していることを詳しく報告してきた。

ネットワーク化された自律的な群れの一部として動作可能なものを含む、多層無人機が、将来のハイエンド空中戦における重要資産になるとの見解にますます近づいているのは、米軍だけではない。このことは、昨日クレイトスが発表した新規顧客と潜在的顧客に関する情報にも反映されている。

デマーコは、決算説明会で「当社は現在、新規顧客2箇所からヴァルキリー関連の戦術的ドローンシステムの契約を獲得する見込みです」と述べた。「さらに、つい最近、4番目の新規顧客候補との協議を開始しました」。

デマーコは、将来的または潜在的な顧客が誰であるか言及を避けているが、空軍以外の米軍の他の要素である可能性がある。より高度な無人航空機を外国に販売するための米国政府承認を得るプロセスは、悪名高く困難なものだったが、米国当局は重要な軍事無人機装備輸出で障壁を減らすよう求めている。

クレイトスは2018年、同社のUTAP-22、またはMakoという、初期の忠実なウィングマンが、アメリカ当局の輸出許可を得たと発表し注目されていた。同社は、イギリス、スウェーデン、韓国、台湾を含む海外顧客に対して、訓練などの各種目的で使用される空中標的無人機の販売実績を有している。

同時に、米国の主要同盟国の多くは、より厳しい輸出規制要件を容易にクリアでき、XQ-58Aなど無人機の能力に関心を抱いていると公言している。例えば、10月31日、英国防省は、「LANCA(Lightweight Affordable Novel Combat Aircraft)」プログラムに続く新しい取り組みとして、「Low-Cost Uncrewed Air Systems」を発表した。6月、英空軍(RAF)は、LANCA計画の一部で、忠実なウイングマン型ドローンの開発に焦点を当てた「Mosquito」計画を中止した。RAFは、このプロジェクトに続く新プロジェクトを想定していると述べていた。

いずれにせよ、ヴァルキリーの性能範囲と能力は拡大しているようで、新顧客も注目しているようだ。■

 

XQ-58A Valkyrie Flies Longer, Higher, Heavier In Recent Test

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED NOV 4, 2022 4:53 PM

THE WAR ZONE


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...