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中国のグレーゾーン対応のほうが台湾武力侵攻より可能性が高い。新常態を狙う中国に対し、台湾を日米は守れるのか。

 

 

グレーゾーン措置の法的曖昧さと組織的制約の低さのため、本格侵攻より戦争に至らない措置の方が可能性が高い

 

 

国共産党の憲章で初めて、台湾独立を目指す分離主義者に対抗し、抑止する意向が明記された。改正版は、2017年の第19回全国代表大会で採択されていた中国国内のあらゆる集団の結束を強化することを掲げた文言より積極的な姿勢で、「国家統一を促進する」ことを掲げている。しかし、第20回全国代表大会の文言には目新しさはない。2005年3月、第10回全国代表大会は「分離独立防止法」を制定し、第8条で、中華人民共和国が以下の場合に「非平和的手段およびその他の必要な措置を講じ...」と明記されている。

 「台湾独立」派がいかなる名目、いかなる手段で台湾の中国からの離脱の事実を引き起こし、台湾の中国からの離脱を伴う重大事件が発生し、または平和的統一の可能性が完全に失われた場合、中華人民共和国は「非平和的手段およびその他の必要な措置を講じなければならない」と規定している。

 中国共産党の憲法改正は、1982年以来、党大会のたび行われてきた。改正は、中国共産党が今後5年間に目指す政策の方向性を示しているが、今回の反独立条項の追加は、「分離独立法」の3条件のいずれかが近い将来該当する可能性があると中国共産党が考えているのか疑問視するものだ。

 中国の領有権主張にもかかわらず、台湾と澎湖、そして金門と馬祖の沖合諸島は中華民国の自治体として存在している。1971年以来、PRCが侵略しようとしたことは一度もない。しかし、今後5年間は、台湾の国際的地位の不確実性を利用し、国際法のレトリックと組み合わせ、グレーゾーン活動、すなわち戦争によらない手段を強化し、外国の干渉を抑止し、台湾に中国の平和的統一案を受け入れるよう圧力をかけていくだろう。

 

ニューノーマル(新常態)を求める中国

台湾住民の意識は、両岸の戦争は将来起こりうるかどうかわからない問題であり、また世界経済の相互依存のためありえないことだと軽視する傾向が多い。つまり、戦争がどのように勃発するかについては、中国がいずれ本格侵攻を開始するだろうが、それがいつになるのか、あるいは現状が維持されるのか、でコンセンサスが得られていないのが一般的な認識である。しかし、このような二元的な考え方は、全面侵略の選択肢が軍事的にも政治的にも実現不可能な場合、戦争以外の手段が中国にとって目的を達成するための手段であることを無視している。

 国内的には、習近平は本格的な侵攻の前に、時間、政治局常務委員会と中央軍事委員会の内部調整、人民解放軍の戦闘能力という3要素を考慮しなければならない。もし習近平に時間がなければ、全面侵攻で一挙に記録を塗り替えようとする衝動に駆られる。しかし、敗北した場合のリスクも指数関数的に高くなる。幸い、習近平は中国共産党総書記に3期目まで就任し、時間的制約は緩和された。

 第二に、台湾有事の決定権は国家安全委員会にあるが、計画・実行の最終責任者は中共である。台湾有事の際、習近平は、核心委員会-中共間の指揮系統を滞りなく合理化する必要がある。まさに、第20回全国代表大会後の習近平の新将軍は、李上福大将Gen. Li Shangfu(電子・サイバー・宇宙戦の専門家)や、台湾関連作戦を含む中国東部戦区司令官何偉東大将Gen. He Weidongの昇進を通じ、この前提条件の差が縮まった。しかし、中国の将官にはアメリカの将官と異なり、戦闘経験のある者は少ない。このことは、習近平が台湾侵攻の準備を万全に整えているかを判断する際に、考慮されることになる。

 第三に、台湾への攻撃を実行できるかも未解決の問題だ。大規模な揚陸侵攻で最も顕著で積極的な作戦構想は、航空・海上での優位性が前提の複雑な作戦だ。北京が台湾シナリオで信頼できる軍事オプションを採用する前に、中国共産党が軍隊を機械化し、情報化し、知能化することが必要となる。これは2027年以降に実現すると予想される。さらに、台湾有事の際に米国が介入する可能性や、ベトナムやインドとの国境紛争が続いていることも、中国共産党の資源と人員に大きな制約を与えている。

 習近平がもはや時間的猶予がないと認めれば、自らの地位を傷つける内外の反発を招く理由はない。さらに、軍事的な失敗が中国の大幅な弱体化や台湾の正式な独立宣言といった予期せぬ結果をもたらす可能性という他の2つの変数の未熟さに賭ける必要もない。したがって、習近平にとって現実的な解決策は、PCS-CMSの指揮系統の再編とPLA近代化を進め、現状を中国に有利に塗り替えることにある。現時点d根は習近平の台湾戦略では、戦争によらない措置が軍事的に最良の選択肢である。

 台湾は独立宣言をしておらず、現在は中華民国政府が代表を務めているため、台湾の国家としての存在が不透明であることは、中国による強制措置の合法性にも影響を及ぼす。中国共産党は、1979年(中華民国が米国と国交正常化した時)に中華民国領土を対象に軍事行動をすべて停止したが、両者間に公式な休戦協定は存在しない。正式な平和的解決なしに、中華民国と中国の武力紛争は1947年から今日まで続いていると、中国側は主張できる。また、休戦ラインが合意されていない以上、台湾の領空や領海を侵犯しても、国際法違反には当たらないという議論もある。台湾周辺空域の実効支配に挑戦するプロセスはすでに始まっている。最近、人民解放軍空軍の軍用機が、台湾と中国の事実上の境界線である台湾海峡の中央線を通過した。

中国による国際法違反の重大性に応じ、対策のピラミッドが描かれる可能性がある。国際社会の対応としては、中国がどのような行動を取るか、その合法性や受容性次第で変わる。以下では、中国共産党が採用しうる戦争によらないさまざまな手段を、深刻さの順に挙げてみた。中国共産党がピラミッドを下るにつれて、自らの内戦シナリオに有利なように現状を変化させることが理想的だ。

 

 

台湾の国際的地位の曖昧さと中国代表権の重複を、中国は台湾への支援の正当性を損なうため利用することができる。広く認知された国家ではなく、事実上の領土の台湾が国際法で保護されるかという不確実性は、台湾の国家性をめぐる議論と絡み合う。より厳格な措置を採用することに伴い、中国のレトリックは国内の法執行から、中国内戦を背景とした軍事作戦に移行するだろう。ピラミッドの頂点に位置するのは、台湾が国家として承認されれば戦争行為とみなし、実施される全面海上封鎖だ。中国が国連安全保障理事会(UNSC)の拒否権を持つ以上、このシナリオで国連安保理が機能するとは考えにくい。したがって、本稿で取り上げる国際的な対応は、第三国による対抗措置や介入に焦点を当てる。

 

戦争一歩手前のPRC措置の合法性

中国は台湾とその周辺海域を自国領土とみなしているため、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、中国の漁業や海洋環境の保護を口実に台湾の排他的経済水域(EEZ)内で海洋権力を行使し、圧力を高める可能性がある。最近、中国が「台湾海峡は国際水路ではない」と発言しているのは、この主張を使う意欲が再び高まっていることを示している。台湾には国家承認がないため、台北は国際海洋法裁判所(ITLOS)を利用し拘束された船員や船舶の解放を確保できない。1987年から1989年まで米国旗を掲げていたクウェートの石油タンカーにならい、台湾の船舶を外国籍に変更することも一つの方法だ。この場合、台湾船舶に対する管轄権と管理権の行使を含む「真のつながり」を確立する意思が他国にあることが前提となる。

 その後、中国が公海上で台湾や外国の船舶を停止、捜索、臨検し、密輸品を押収する可能性がある。禁制品の定義は、中華民国の支配地域向けの戦略物資であると中華人民共和国が広く解釈できる。台湾向けの外国船も、臨検のために中国港湾に迂回させられる可能性がある。このような作戦の合法性は、両岸の紛争は「内戦」であり、中国には外国が「中国の合法的政府」に対して「反逆者」(それが中華民国であれ台湾の分離主義者であれ)を武装させるのを阻止する権利があるとの前提に立つ。国際司法裁判所(ICJ)は、有名なニカラグア事案で、ニカラグア内戦中に米国がコントラに資金提供したことは、不法な内政干渉に当たると判断した。反政府武装勢力の武装と訓練は、不法な武力行使になる可能性もある。中国は、台湾に対するいかなる措置も、外国の不法な内政干渉に対抗するためのものであると主張するのは間違いないだろう。中国政府は、伝統的に第三国から好意的に受け入れられてきた不干渉原則を用いることで、地域的・国際的な言説を形成することができる。

 もし、中国が台湾海域の中立的な海運を妨害すれば、日本と韓国に深刻な影響が生じる。拘束された船舶と乗組員の旗国として、ITLOSに迅速な解放を申請できる。その他場合、台湾の国体や領海・排他的経済水域の保全能力が司法手続の中心的な問題になることは間違いない。このような論争的な問題に対して、どの国際裁判所や法廷も喜んで判決を下すか、はなはだ疑問だ。また、仮に台湾に有利な判決が出ても、中国が南シナ海仲裁結果のように判決をボイコットする可能性がある。南シナ海では、中国の過大な領有権主張に対して、米国は航行の自由(FON)作戦を実施した。FON作戦は、米国の地域同盟国の参加を得て、台湾周辺の主要水域を通過するすべての国の権利行使を確保する正当な方法となっている。

 その他主権国家への全面的な海上封鎖は、非合法だと広く認識されている。台湾は海上封鎖を侵略行為とみなし、国連憲章第51条に基づく固有の自衛権を行使するのは間違いないが、台湾の国際的地位が不確かであることから、PLAは海上封鎖が進行中の中国内戦の一環で行われた行動だと主張するだろう。内戦中の海上封鎖の合法性については、激しい論争がある。封鎖は国際武力紛争においてのみ合法であると主張されることが多いが、「内戦が国際的な武力紛争と同様の高い強度を持つ」場合に発生する交戦性の認定の例外があると主張する者もいる。台湾海峡を挟んだ紛争は、この閾値を満たす可能性が非常に高い。ただし、飢餓犯罪を構成する全面海上封鎖の可能性は排除できない。この点、台湾はローマ条約第12条3項に基づき、国際刑事裁判所に刑事司法権を委譲し、国際犯罪の遂行を調査・裁定することが可能である。

 台湾は基礎的な生活物資を大きく輸入に依存している。本格封鎖となった場合、台湾住民への救援物資の自由通行を確保するために、外国の支援が必要となる。国連安保理が第7章に基づく「強制措置」を承認しない場合(中国の拒否権により不可能だ)、NATOはコソボ介入を「人道的介入」として正当化したが、このドクトリンは国家や学者によって広く論議されている。仮に人道的介入が正当な武力行使として認められても、その適用には広範な人権侵害が必要となる。中国に対する直接的な武力行使に比べれば、人道的輸送船団の護衛や機雷除去は、台湾への人道的救済を行うため必要かつ適切な手段だと正当化しやすい。 最後に、過去に独立したばかりの共産主義国家が、自決権に外国の支援を求める権利と受ける権利を加えることを強く主張していたことを忘れてはならない。もし、中国がそのような権利を台湾の人々に否定するならば、それは第三世界の立場と矛盾するように写るだろう。もちろん、中国が台湾の「人民性」を認めることはないだろうが、国際的対応の合法性についての議論の焦点を「台湾人」の人道的側面や必要性に向けることができれば、台湾の国家性をめぐる困難は回避されるであろう。

 

結論

台湾の地位が不確定であることを利用し、中国が戦争以外の方法で台北に圧力をかけ、北京の「統一」案を受け入れさせる可能性がある。また、台湾の国家的地位の不在は、国際対応の正当性を損なう。「グレーゾーン措置」の法的曖昧さは、組織的制約の低さと相まり、全面的な揚陸侵攻よりも戦争に至らない措置の可能性を高めている。国際社会が中国のシナリオと正当化に対抗できる一つの方法として、焦点を「国家権」からずらし、将来を強制されることなく決定する自由を含む台湾「人」のニーズ、願い、権利を強調することである。■

 

Short of War: Is the World Ready to Defend Taiwan? | The National Interest

by Sze Hong Lam Wei Azim Hung

November 12, 2022  

Topic: China-Taiwan Relations  Region: Asia  Tags: China-Taiwan WarTaiwanInvasion Of TaiwanRepublic Of TaiwanUNCLOSTaiwan IndependenceNaval Blockade

 

Sze Hong Lam is an internal Ph.D. candidate at the Grotius Center of International Legal Studies of Leiden University. He had formerly interned at the Legal Office of the Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons (OPCW) and the Office of the Prosecutor of the United Nations International Residual Mechanism for Criminal Tribunals (IRMCT). He has written in the areas of international humanitarian law, international criminal law, the history of international law, and on the right to self-determination.

Wei Azim Hung is a part-time Research Assistant at the Institute of Sociology, Academia Sinica. He graduated International Studies, cum laude, from Leiden University and researches on uncovering the relationship between state discourse and nationalism.

Image: Reuters.


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