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米中の覇権争いは月、月までの宇宙空間軌道にも。米政府、宇宙軍の月への関心が低すぎる。商用宇宙活用がそこまで来ているのだが。

 

An American flag superimposed on the moon. (Graphic by Breaking Defense; original moon photo by Alex Andrews via Pexels)

 

第二次月探査レースが始まり、アメリカは上空からの監視とあわせ地上調整を強化する必要があると、マイク・ロジャース・センター・オブ・インテリジェンス&グローバル・アフェアーズのジョシュア・フミンスキーJoshua Huminski所長が書いている。

 

かつてはSFの世界だった月面基地や火星有人探査が、身近なものになってきた。国家安全保障の専門家ジョシュア・フミンスキーは、以下の論説で、アメリカのライバルが月面ブーツを履く前に、アメリカは地球の兄弟である月に目を向ける必要を解いている。

 

在、NASAと民間宇宙機関は、月におけるアメリカの地位を確保し、さらに火星に到達を視野に入れて、先を急いでいる。

 NASAの商業月ペイロードサービス(CLPS)プログラムでは、今後数年以内で月定期便が就航する可能性がある。当初は無人飛行だが、将来の目標は有人飛行だ。月周回衛星と月面の活動がうまくいけば、火星やその先への足がかりとなる。

 これはSFのように聞こえるかもしれないが、この活動の道筋とプログラムは今、敷かれつつある。政策とプログラムを正しく実行すれば、最も近い天体への高速道路が構築できる。しかし、そのためには軍、特に宇宙軍が、月の周りで何が起きているのか、アメリカの敵が何を企んでいるのかより深く理解することが必要になってくる。また、ホワイトハウスは、軍と民間産業界の利害関係者間で月関連の活動を緊密に調整する必要がある。

 こうした開発は、「真空」の中で見る限り、興奮と畏敬の念を抱かせるものがある。「アルテミス」の最初のテストミッションや最終的な有人ミッションの期待に興奮しないわけがない。あるいは、ケープカナベラルから打ち上げられるスペースXの巨大なスターシップ、それに続くブルーオリジンのニューグレンも同様だ。

 しかし、月・惑星間空間へのアクセスを目指しているのは米国だけではない。中国も軌道領域の支配を目指しており、月へ独自に基盤を築いている。2021年秋、中国のミッション「嫦娥5号」は、2019年に月のペイロードを展開した後、月軌道上で重力的に安定した位置への再配置を開始した。これは、月の裏側に中継探査機を配置し地球へ信号中継した北京にとって素晴らしい成果となった。

 最近の「War on the Rocks」記事が述べているように、熱心なアマチュア天文学者集団がいなかったら、我々は北京が何をしているのかわからなかっただろう。私たちは、月で何が起こっているのかに注意を払っていないだけであり、今、この問題に取り組まなければ、月がますます混雑し、競争になる初期段階で、北京に主導権を奪われる危険性がある。

 中国が月空間での活動を追求することで、2つの並行しながら深く関連する懸念が駆り立てられる。宇宙軍の作戦主任にこのたび就任したB・チャンス・ソルツマン中将Lt. Gen. B. Chance Saltzmanの机上にあるべきものである。まず、政府の月に対する状況認識が明らかに欠けていることで分かるように、宇宙軍は月と衛星の宇宙状況認識のため情報、監視、偵察ネットワーク構築から開始する必要がある。

 北京が軌道上で何をしているのかが分からなければ、アメリカは月周辺での中国の動きに対応できない。静止軌道上の資産の大半は地球を見ているが、なぜ反対方向に目を向けないのか。しかし、そのような考え方では、もはや十分ではない。地球静止軌道以外の軌道から戦略的な奇襲を仕掛ける余裕はない。

 宇宙軍と研究開発エコシステムは、これを是正する取り組みを行っている。現在、スタートアップ企業である Rhea Space Activity が言うところの「月面情報」、つまり LUNINT(地球月間と月周辺における状況認識)に対する洞察を探るため、多数の予備契約が進行中だ。このようなコンセプトや実験を実際の機能へと移行させることは、容易なことではない。一般の企業買収の課題と同様、これは政府プログラムにおける死の谷を埋めるもので、月周辺はもとより、地球上の問題の克服も困難だ。

 月での情報、監視、偵察の能力を高めるには、相互に関連する2つ目の要素、つまり商業、民間、軍事宇宙を完全に統合し、地球月間の宇宙空間で一貫した活動も必要となる。

 宇宙空間で持続的かつ独立した商業的生態系が確立されるまでは(確かに遠い将来ではあるが)、3組織が月周辺での活動において互いに活用し、依存し合うことになる。努力を調整し、資源を活用し、それぞれの長所を最大限に生かすことで、月周辺での米国の優位につながる。そのためには、米国が月とその周辺で何をしたいのか、何を達成したいのかを考え抜くことが必要であり、競合する利害を調整することは、国家宇宙会議が取り組むべきことだ。

 近い将来、月環境の戦略的考察は、空軍と宇宙軍の専門家、ならびに関心を持つ専門家に限定されることになるだろう。しかし、戦略構想とドクトリンを今日開発することは、政府の政策テントの中でいつも長柱である取得とプログラム政策への情報提供に役立つ。明示的に言えば、米国は宇宙軍が月と衛星の戦略的領域をどのように活用するか、また、衛星の高地を確保しつつ、既存の宇宙軍資産に利益をもたらす軌道にどのような能力が提供できるかを決定しなければならないのである。

 その一部は機密扱いの戦略宇宙レビューに含まれている可能性があるが、機密扱いのままである限り、月宇宙とその周辺におけるあらゆる利害を調整することは困難なままだ。同時に、月が完全に宇宙の西部開拓時代というわけではないものの、行動規範がないことは、これらの領域で米国と同盟国の利益を促進する基準を作る機会を開くことになる。

 未来は忍び寄ってくるものであり、今まさにアメリカは、宇宙や月周辺における人類の急速な忍び寄りに直面しているのである。奇想天外に聞こえるかもしれないが、月への帰還を間近に控え、できれば頻繁に帰還するだけでなく、長期にわたり月に留まりたいと思う。しかし、我々の世界を超えた大胆な一歩には、24万マイルの彼方からでさえも、アメリカが見過すことができない戦略的な疑問がつきまとう。

 

From ‘lunar intelligence’ to orbital waystations, the US needs to keep the moon on the mind - Breaking Defense

By   JOSHUA HUMINSKI

on November 07, 2022 at 12:31 PM

 

Joshua C. Huminski is Director of the Mike Rogers Center for Intelligence & Global Affairs at the Center for the Study of the Presidency & Congress, and a George Mason University National Security Institute Fellow. He can be found on Twitter @joshuachuminski.


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