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B-21の戦略的意義。核非核両用の最新鋭機は抑止力の実現でこれから長く活躍が期待され、ステルス機の新世代となる

 

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一世代ぶりで米空軍に登場する新型爆撃機は、航続距離、積載量、戦闘生存能力により、米優位性の鍵となる

国間競争の新時代において、ステルス爆撃機B-21レイダーを予定通り大量配備することは国家的な必須事項だ。B-21は、即応性と殺傷力を備えたグローバルパワーの提供に不可欠だ。B-21が実戦配備されれば、高度な防空システムを突破し敵の最高目標を危険にさらすことが可能となる、二重能力で長距離、生存可能な唯一の兵器大系になる。B-21が、米軍と連合軍の作戦行動の自由を制限する敵の接近阻止/領域拒否(A2/AD)能力を排除しなければ、スタンドオフ兵器などが主体の戦争で主導権を握り維持することは、はるかに難しく、はるかに時間がかかり、費用対効果もはるかに低くなる。

今日、米国の長距離爆撃機隊は、歴史上で最も古く、最も小さく、最も脆弱だ。B-2を除けば、米爆撃機は激しい戦闘空域を生き残れない。B-21部隊を配備することが、米国が過去の紛争で享受した航続距離と積載量の優位性を維持できる唯一の方法だ。質量は、過去の戦争と同様に、将来の戦争でも重要である。敵に複数のジレンマを同時に与える能力は、戦闘指揮官に複合的な機会を作り出すため不可欠だ。B-21の長距離攻撃は、センサーや指揮統制システムへのサイバー攻撃や電磁スペクトル作戦など非対称的能力と連携し、敵の感知、判断、行動能力を低下させ、戦争霧の中に彼らを閉じ込める。自衛に必要な情報を奪われた敵は、B-21をはじめとする第5、第6世代のプラットフォームで攻撃作戦を維持する能力を体系的に低下され、敗北に向かう。

戦争の長年の原則の中で、奇襲に最も価値がある。奇襲は、衝撃、混乱、優柔不断を引き起こす。奇襲は敵の作戦を低下させ、攻撃側にチャンスをもたらす。予期せぬ方法で敵に立ち向かえば、誤りを強いられ、脆弱性を露呈し、最終的に適時に効果的に反応する敵の能力を鈍らせる。 

米軍爆撃機部隊は、奇襲に投入されてきた伝統がある。ジミー・ドーリットル中佐(当時)が率いた東京空襲がも有名な例だろう。1942年4月18日の空襲は、日本軍にとって完全な奇襲となり、日本本土は作戦上の聖域でないと証明した。ドーリットル空襲は、空母ホーネットから双発B-25を16機飛ばし、日本に大きな心理的打撃を与え、アメリカ国民に必要な士気高揚をもたらした。空襲自体はほとんど損害を与えなかったが、日本政府に計画を変更させ、米空襲を防ぐため貴重な資源を他の場所に向けさせた。当時も今も、航空戦力は国家の不安感を高める。航空機の速度、航続距離、機動性は、敵にとって動きの遅い地上軍や海軍より対抗が難しいからだ。

80年後の今日、ステルス長距離機B-21は、敵対勢力にさらに困難なジレンマをもたらす。B-21レイダーは、これまでに製造された軍用機で生存率が最も高く、殺傷力が高く、最も費用対効果の最も高い機体となる。B-21は、国家安全保障で貴重な投資であり、米軍司令官に敵の作戦上の聖域を否定する能力を提供する。B-21は、敵制空権を奪う能力を米軍司令官に提供し、強力な抑止力となる。抑止が失敗した場合、B-21は地球上のあらゆる標的を数時間以内に攻撃でき、そのリスクは米国のその他軍事手段よりはるかに低い。B-21の保有数が多ければ多いほど、抑止力は大きくなる。

通常兵器と核兵器双方を運用する同機の能力には、経済的価値があり、おそらくそれ以上に重要であろう。「オフセット」戦略の目標は、相手の強みに対応するかわりに、相手に負担(金銭的・地政学的な「コスト」)を課し、相手の意思決定に影響を与えて戦略的行動を変化させることにある。簡単に言えば、攻撃能力を犠牲にしてでも防衛に資源を投入させる。コスト賦課戦略の目標は、技術的優勢と質量で戦争での勝利を確実にすることだけではなく、戦争遂行能力を犠牲にしてまでも防衛コストを押し上げさせて、戦争を抑止することにある。B-21は、敵が反応し適応するより早く、米国の優位性である次世代低観測性技術でこれを達成する。冷戦時代、米国は132機のB-2と100機のB-1の製造を計画し、ソ連の軍事経済を枯渇させ、米国の優れた戦略能力からの防御を強いさせようとした。この戦略は今日も変わらない。

B-2スピリットは、ステルス性、航続距離、攻撃力を新しいレベルに引き上げたが、21機しか生産されず、運用と保守のコストを押し上げている。空軍は少なくとも100機のB-21製造を想定している。 Tech. Sgt. Hailey Haux

あらゆる抑止戦略同様に、最終目標は敵の目から見て戦争を魅力的でなく、安価でなく、勝ち目のないものにすることにある。歴史的に、爆撃機は米国指導者が国家安全保障の危機時に行使できる柔軟かつ目に見える手段だ。爆撃機は、米国の決意を示すため、例えば国境付近を飛行させるなど「柔軟化」でき、地上軍や海軍より速く危機に投入できる。また、前方に拠点を置く地上軍や海軍と異なり、爆撃機は遠方基地から活動でき、敵の先制攻撃への阻害要因にもなる。 

敵のジレンマをさらに複雑にするのは、B-21が通常兵器と核兵器双方を運搬できる点だ。B-21部隊に対抗するコストは、革命的な兵器システムB-21を開発し、製造し、維持するコストをはるかに上回る。投資に対する見返りは計り知れないものがある。

戦力投射での課題

2011年にボブ・ゲイツ国防長官が当時「LRS-Bomber」と名付けたプログラムを承認し世界は変わったが、レイダーの必要性は高まる一方である。中国は、インド太平洋地域の経済的・軍事的リーダーとしての地位を強く主張し、その野心を支えるため、軍備の能力と容量を急速に拡大している。空母3隻、低視認性航空機、長距離空対空ミサイル、DF-21や部分軌道爆撃システム含む極超音速ミサイルを配備している。

米国同様に、中国も太平洋という地理的な「堀」を享受している。この固有の優位性に加え、中国は、敵対者が西太平洋第2列島線内で軍事力を運用し維持する自由を否定する積極策を展開してきた。デイブ・オクマネクDave Ochmanekがランド研究所RANDの論文「Determining the Military Capabilities Most Needed to Counter China and Russia」で指摘しているように、「中国とロシアの接近阻止領域拒否能力は、米軍と同盟軍の距離を置き、既成事実を押し付けるのに十分な期間、米軍と同盟軍の活動を抑制するため明確に設計されている」のである。紛争が激化する環境は、インド太平洋における米国の兵力投射能力に大きな課題を突きつけている。

紛争に勝つため、米軍司令官には、戦場で大規模な効果を可能な限り短時間で生み出す能力とキャパシティが必要だ。A2/AD戦略で中国は陸上および空母艦載攻撃システムの有効性を低下させ、米国の努力を鈍らせる。西太平洋の第一列島線沿いの前進基地への脅威と、海軍空母に増大し続ける移動弾道ミサイルの脅威は、米軍が中国の目標を攻撃するため膨大な距離を克服しなければならないことを意味する。

インド太平洋における中国との戦争は、イラクやアフガニスタンでの戦いと異なり、以下の特徴を有する。 

  • 弾道ミサイルや巡航ミサイル、空軍基地や港湾への激しい攻撃

  • 米国および同盟国の空軍基地や港湾への爆撃機による攻撃

  • 強力化するPLAN水上艦隊、潜水艦隊、海軍航空隊による海軍水上艦および空母への対艦弾道ミサイルおよび巡航ミサイル攻撃

  • 長距離空対空ミサイル(PL-15搭載のJ-20など)を搭載し、米軍のAWACSやタンカー、低生存性の非ステルスミサイル発射機を射程内で威嚇する戦闘機

  • 非ステルス機のアクセスを拒否する長距離防空システム

  • 硬化し地下にある、移動可能な、またはスタンドオフ兵器の届かないターゲット

  • 紛争のすべての段階を通じて、米軍と連合軍を狙う容赦ないサイバー攻撃と情報戦

砂漠の嵐作戦で、誘導爆弾を投下するステルスF-117は、爆撃機が1回の出撃で複数の標的を攻撃し、ゲームチェンジャーを証明した。 Master Sgt. Edward Snyder

数時間以内に戦域に到達し、侵入し、持続できる米国の能力は他にない。中国のミサイル攻撃の密度が薄くなるオーストラリア北部やその他遠隔地にある基地から活動できる米国の能力は、他にない。インド太平洋の「距離の暴力」と中国の地理的な深さを克服し、人民解放軍に聖域を許さない米国または同盟国の能力は他に存在しない。

数は重要だ。奇襲の要素を生み出し、利用するためには、規模に応じた作戦が必要だ。米軍はジレンマを作り出し、敵の優柔不断な態度を利用し、紛争初日から敵の最も価値のある重要目標を迅速に破壊する能力を持たなければならない。ドイツ空軍は、第二次世界大戦中、ジェット戦闘機を導入して連合国空軍に質的な優位を得ようとして、このことを痛感した。ドイツ空軍のMe-262は連合軍戦闘機より100mph以上速かったが、アメリカのP-51とP-47が3万機生産されたのに対し、Me-262は1,430機しか生産されなかった。ドイツが自国の制空権を取り戻すには、Me-262が4対1の割合で優勢でも不十分だった。連合国は、技術的には優れていたものの、はるかに小規模なドイツ軍を、圧倒的な数の差で打ち負かした。つまり 量と質はともに重要である。 質量は、戦争のテンポを支配し、決定する上で重要要素であることに変わりはない。

最低100機のB-21が現在の必要能力である。 空軍関係者は、145機以上が必要になる可能性を認めている。国家防衛戦略が中国を脅威の中心に据えていることを考えれば、米国は2030年代以降に必要となるB-21部隊を調達するため今決断することが重要である。

重要な属性とは

ステルス爆撃機は、航続距離、ペイロード、生存性の3大属性で定義される。各属性は、1回の出撃で複数任務を遂行し、複数標的を攻撃する能力を裏打ちする。長距離、耐久性、大きなペイロードと生存性の組み合わせにより、B-21爆撃機は、海上攻撃、敵の防空網の抑制/破壊(SEAD/DEAD)、戦略攻撃、近接航空支援(CAS)などのA2/AD環境下での複数任務で理想的プラットフォームとなる。これは、B-52がベトナムのジャングルで絨毯爆撃したベトナム戦争時の爆撃機の役割からの抜本的な転換だ。1991年の砂漠の嵐作戦や1999年の対セルビア作戦でも、B-1とB-52は大量の無誘導弾で目標を確実に破壊する戦術を取り続けた。しかし、B-2で初めて採用したGBU-31統合直接攻撃弾(JDAM)は、爆撃機の効率を一変させた。

ステルス戦闘機F-117がレーザー誘導爆弾で砂漠の嵐作戦のゲームチェンジャーになったように、B-2は出撃ごとに最大16発のJDAMを投下し、1999年の航空戦に革命を起こした。第二次世界大戦では数千フィートだった爆弾の精度は、10フィート以下になった。 爆撃機の攻撃は「1機に1つの目標」から「1機に多数の目標」へ変化した。B-2は、1回の出撃で80の目標を攻撃できる。その後、B-1、B-2、B-52はGPS弾を使用し、9・11以降のアフガニスタンやイラクでの作戦で中心的な役割を果たした。JDAMの採用で、戦闘機の任務だった近接航空支援も爆撃機で可能になった。元第8空軍司令官ボブ・エルダー中将は、戦略爆撃機の変身を簡潔に表現している。「その永続的な成功は、固有の柔軟性と適応性の結果である」。"

今日、見通し外のデータリンクを装備し、多種多様な、飛行中に再プログラム可能な兵装を搭載する米国の爆撃機は、文字通り空飛ぶ自動販売機に化している。爆撃機は、1回の出撃でほとんどのニーズを満たすことができる。今日、爆撃機はゼロ照準データで米国本土から離陸し、途中でデータ更新し、数十時間飛行し、敵防空システムの内側または外側から攻撃ができる。大陸間航続距離と空中給油を備えたB-1は、1回の出撃につき24個の2000ポンドJDAMを投下できる。戦闘機も長距離飛できるが、爆撃機1機と同じ効果を得るには戦闘機数機が必要で、さらに多くの空中給油が必要だ。

B-21は、目標に十分接近し低コスト弾薬を使用できるので、「手頃な質量」という全く新しい意味を提供する。空軍グローバル・ストライク司令部計画・プログラム・要件担当のジェイソン・アーマゴスト少将Maj. Gen. Jason Armagostは、将来の装備品は「適切さの一部はコストであり、十分な射撃量が必要だ」と述べ、手頃な質量が重要であることを強調している。

航続距離の価値

爆撃機は大きな機体にもかかわらず、非常に機敏で、短距離機よりも迅速かつ容易に、複雑さを伴わず大陸間で展開できる。例を挙げれば、ノースダコタ州の空軍基地を発進する爆撃機は、空中給油1回でインド太平洋の目標地域に到達できる。

距離は、インド太平洋地域で活動する米軍と連合軍にとって最大の障害だ。長距離で広範囲な効果を発揮できる軍事資産はほとんどない。空母は、対艦ミサイル攻撃の脅威を軽減するたに、中国の海岸線から1,000〜1,500nmの距離を保つ必要があるかもしれない。この場合、空母搭載機の実用性は大きく減少する。空母搭載の戦闘機は、攻撃やその他任務で戦闘半径が短すぎ、この距離を埋められない。さらに、戦闘機では、戦域に素早く侵入し、その後撤退する速度を達成できない。また、高価で、移動性の高い標的、硬化標的、あるいは深く埋まった標的には効果が低い。海上発射や地上発射の長距離極超音速兵器はさらに高価であり、素早く位置を変える移動目標に有効とするためには、飛行中に目標情報を更新する必要がある。B-21は、射程の問題を解決するだけでなく、紛争地域に侵入して持続し、時間に敏感な移動標的を発見して攻撃するためのオプションの拡大を米軍司令官に与える。

大型で柔軟なペイロードの価値

爆撃機は、正確で決定的な効果をもたらす非常に費用対効果の高いプラットフォームだ。敵空域に侵入し持続する能力を有するB-21は、大量兵装と組み合わせて、出撃ごとに複数目標を攻撃破壊するだけでなく、敵防空システムを圧倒して破壊する武器やおとりなどの発射で、その他機材の戦いに貢献できる。

爆撃機内部の兵装庫は、兵器革新者には夢のような場所だ。さらに、兵装庫の大きさで搭載する弾薬の大きさや効果が制限されるため、戦闘機よりも爆撃機用の長距離兵器の開発は容易である。生存性が低いプラットフォームほど、敵の防空に対抗するためスタンドオフ兵器に依存する。つまり、目標に到達するため、より大型の長距離兵器を使用しなければならず、1回あたり攻撃コストが高くなる。指令管制バンカーやイラン核施設など、硬化かつ深く埋まった重要目標を打ち破る能力は、侵入型ステルス爆撃機が投下する特殊弾によってのみ可能だ。

デジタル技術を駆使した最新機材B-21は、新しいソフトウェアやハードウェアを迅速に統合でき、供用期間全体にわたり殺傷力と生存性を確保できる。B-21は、新しい要求に応えるため、急速に進化し、成長できる。

生存能力の価値

敵に聖域を与えないことが、戦争における戦略的必須事項だ。いかなる敵に有害な能力を平然と使用できる贅沢を許してはならない。

非常に高性能な現代の防空システムの普及で、将来の戦闘機材に極めて高い生存能力を持たせる必要がある。高価値目標の多くは、高度な防空システムによって、またアクセスしやすい海岸線ではなく内陸奥深くに配置することで守られている。中国やロシアのような国は、その戦略的深さを利用し、地理的聖域を作り出し、短距離攻撃機や統合防空システムの射程外で発射されるスタンドオフ兵器で届かない地点に置くようになってきている。

このような理由から、現在も、そして今後も、低観測性が航空戦の入場料となる。ステルス性は、敵国境内を含むA2/AD環境下で目標を攻撃する軍用機で必要条件である。1970年代、材料とコンピュータ技術の進歩がステルスを現実にした。約40年がたち、ステルス技術の進歩は、米国軍用機に大きな優位性を与え続けている。ステルスは、センサーから航空機を完全に見えなくするのではない。ステルスは、敵のセンサーが受け取るデータを曖昧とし、敵が十分に速く捕捉できず、うまく交戦できないほど航空機を見えなくする。ステルスは、電子戦やサイバー攻撃など、敵の防空網を欺き、劣化させ、あるいは破壊する他の能力と組み合わせることで、その効果をさらに高める。ステルスは、目標攻撃に必要な支援機の数を減らし、消耗を減らす効果を生む。

スタンドオフ兵器とB-21による侵攻打撃の比較

スタンドオフ兵器は、中国のような敵対者を打ち負かすのに不可欠だ、移動目標には効果が低い。現実的には、データリンクや自律的な機能がない現在のスタンドオフ兵器の飛行時間は、長距離で移動可能なターゲットを攻撃するには長すぎるのだ。さらに、スタンドオフ兵器は、GBU-57大量破壊兵器やGBU-72高性能5K貫通弾含む、硬化かつ深く埋められた標的の攻撃に必要な超大型弾頭を搭載できない。 また、中国領空で生存不可能なレガシー機から発射しても、中国内陸部のターゲットを攻撃する航続距離にも欠ける。

米空母を戦場から遠ざける高機動ミサイルや、米国の宇宙資産を脅かす中国奥地にある対衛星兵器を発見、識別、攻撃するため、紛争地域で効果的に粘着できるのは侵攻型爆撃機だけだ。

B-21のような侵攻型航空機と、照準データの更新を他の情報源に依存するその他長距離兵器との大きな違いは、精度にある。B-21含む侵攻型爆撃機は、紛争中や高度な紛争環境において、有機的に、つまり機外からの支援をほとんど受けずに、キルチェーンを完結できる。しかし、B-21は侵攻型であるため、搭載センサーで自己照準ができ、標的移動で生じる位置の誤差を排除できる。これは大きなな識別能力だ。また、搭載されていない情報を検証し、リアルタイムデータで目標を確実に特定できることも、侵攻型航空機の差別化要因となる。

最後に、侵攻型爆撃機は、長期作戦で、紛争地域内の目標に直接攻撃またはスタンドオフ、あるいはその両方を組み合わせ、大量の兵器を投入する費用対効果が非常に高い手段だ。 高価値目標を可能な限り迅速に排除することで、統合軍の作戦の回復力と生存率が高まる。例えば、対艦弾道ミサイルDF-21とDF-26に対する爆撃機の攻撃は、海軍の資産への脅威を軽減し、第2列島線内での作戦を可能にする。

核抑止力の基盤 

今日の核抑止力を取り巻く環境は、かつてないほど不確実だ。ウクライナに対するロシアの侵略は、核兵器を使用するとの脅しが特徴だ。イランはこれまで以上に核兵器の開発と配備に固執しており、最近、中国が独自の核三原則を展開するためICBMサイロ・フィールドを建設しているのが明らかになった。最も心配なのは、米国は核条約をロシアとしか結んでおらず、それでさえロシアの大量の戦域核兵器に適用されていないことだ。無条約のため、イランや中国の核兵器の増加は抑制されていない。こうした事実を考えれば、国防総省の最新の「核体制見直し」が、核弾頭搭載の爆撃機、ICBM、SLBM潜水艦からなる「核の三本柱」が今も必要なままであり、予測不可能な将来にわたり米国のソフトパワーとハードパワー双方の重要手段であり続けると判断したことは驚くに当たらない。マーク・ウェルシュ元空軍参謀総長がかつて言ったように、「核抑止力は、他のすべてをかける壁紙」なのだ。

爆撃機は、応答性、敏捷性/柔軟性、可視性から、米国の核抑止力の要だ。ICBMは地下にある静的兵器システムで、待機と発射の2つの動作モードがあり、その中間のモードはない。SSBNは、核兵器を発射する必要があるまで、決して姿を現さない。ICBMやSSBNは目に見えるものではないので、動的に抑止したり、エスカレーションを示す能力は非常に限られる。その抑止力は、いつでも発射できるように常に警戒態勢を維持する能力にある。一方、爆撃機は、通常兵器と核抑止の任務を交互にこなし、危機が拡大する中でダイナミックかつ目に見える形で使用できる。  

核非核両用運用の爆撃機は、三本柱の他の2つより費用対効果が高い。爆撃機の乗員と整備要員は、通常任務と核任務の両方の要件で高度な訓練を受け、熟練している。大統領の指示により、爆撃機部隊は、核ソフトと核兵器を搭載し、数時間で核戦力に迅速変身できる。国家司令部の指示により、全爆撃機群は数日で全世界に公開される警戒態勢に入れる。

爆撃機は、潜水艦やICBMと異なり、米国の決意を目に見える形で示し、また、そうさせたくないときは見えなくできる。さらに、爆撃機は同盟国協力国に拡大抑止を提供する最適な手段であり、核兵器拡散の抑制に役立つ。また、SLBM潜水艦やICBMに比べ、爆撃機は危機の際に安定性を発揮する。弾道ミサイルと異なり、発射後に呼び戻せる。また、発射地点に到着するまで数時間かかるため、意思決定者が状況を打開する時間と影響力を持ち、恐ろしい結果をもたらす致命的なミスのリスクを軽減できるのである。

結語

1991年の砂漠の嵐作戦は、ステルス革命を世界中に知らせた。史上初のステルス攻撃機F-117が高集中の防空網を突破し、サダム・フセインと取り巻きが大切にしていたものの多くを破壊し、バグダッド周辺の聖域は瞬時に姿を消した。F-117は、わずか2パーセントの攻撃任務で、全戦略目標の40パーセントを無損害で除去した。この瞬間から、ステルスは米国の非対称的な優位性の主流となった。

それからわずか9年後、バルカン半島でのアライドフォース作戦では、B-2ステルス機が登場した。B-2はGPS利用のJDAMで標的と交戦した。B-2は出撃回数の1%未満で11%の砲弾を投下し、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地からすべて出撃した。30時間以上の飛行は、ステルス性、航続距離、精度の価値を浮き彫りにした。

中国、ロシア、その他の国も注目した。F-117やB-2による精密攻撃の映像が延々と流れ、米国の優位性を奪う方法を模索し、A2/ADコンプレックスが生み出された。

米国にとって幸運だったのは、空軍と防衛産業各社が、ステルス素材、コーティング、維持の面で進歩し続けたことだ。また、より高度なコンピューティングパワーと精密兵器を開発し、すべてがステルス能力における世界的リーダーとしての地位を米空軍が維持できた。

F-22とF-35は、米国に圧倒的な戦闘能力を生み出した技術革命の代表例だ。B-21は、この進化の次のステップで、さらに優れている。インド太平洋地域では、2022年国家防衛戦略で要求しているように、侵攻型長距離攻撃システムが中国の侵略を抑止し、打ち負かす最善の手段となるため、B-21の必要性はさらに高まる。

B-21を予定通り、大規模配備することは国家的な要請である。長距離爆撃機は、指揮官が最も困難な標的に対して幅広い効果を達成し、兵器とセンサーの密度を射程距離で提供するために存在する。これらの効果は、空軍だけでなく、すべての統合軍の作戦を成功させるため不可欠である。世界レベルでは、米国は現在、唯一、数時間で遠距離で戦争に勝利する効果を達成できる国である。B-21は、戦争を抑止し、抑止が失敗した場合には敵に勝利するための柔軟かつ費用対効果の高い核非核運用手段を、国家指導者に提供する。■

B-21 Raider: The Indispensable Bomber | Air & Space Forces Magazine

By Col. Chris Brunner, USAF (Ret.)

Nov. 3, 2022

Col. Chris Brunner, USAF (Ret.), is a Senior Resident Fellow for Air Power at AFA’s Mitchell Institute for Aerospace Studies.


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